まもなく侍ジャパンの強化合宿が始まり、WBC本番に向けいよいよ本格的に動き出す。先日、日本代表の30人が発表されたが、現時点ではどのような起用になるのかはわかっていない。そこで解説者の広澤克実氏に、侍ジャパンのオーダーについて語ってもらった。


昨シーズン、史上最年少で三冠王を達成したヤクルト村上宗隆

【打線の顔である4番は?】

 WBCは2006年、09年、13年、17年に続き第5回を迎えますが、関心度は一番高いです。私も知人に「チケット何とかならない?」と頼まれましたが、丁重にお断りしました(笑)。

 そんな今回のWBCですが、私はプロ野球OBであっても、あえて「こうなってほしい」というファン目線でスタメンを選ばせてもらいました。

 栗山英樹監督は私より1歳上。ヤクルトでは1985年から90年までの6年間、同じ釜の飯を食いました。野球に関して、実直に向き合っていたのを知っています。ただ「こういう性格だから、こういう選手起用をするだろう」という推測はやめます。

 まず日本全国の注目を集めるのは、3月9日の開幕カードの中国戦です。中国はほかの国と比べるとやや戦力的に落ちるという理由で、ダルビッシュ有投手(パドレス)や大谷翔平選手(エンゼルス)を翌日の韓国戦に向けて温存する可能性もありますが、開幕戦だからこそ彼らに投げてほしいですね。

 もし大谷選手が指名打者でスタメン出場するなら3番でいいと思いますが、個人的には"二刀流"で出場してほしいと願っています。

 では、侍ジャパンのスタメンを発表したいと思います。私が考える理想のオーダーは以下になります。

1.源田壮亮(遊)
2.山田哲人(二)
3.大谷翔平(指)
4.村上宗隆(三)
5.鈴木誠也(右)
6.吉田正尚(左)
7.山川穂高 or 岡本和真(一)
8.近藤健介(中)
9.甲斐拓也(捕)
先発.ダルビッシュ有

 日本のスタメンを選ぶ時に考えなくてはいけないのはプライドです。とくに4番はチームの顔であり、これだけの豪華メンバーが集まっていたら悩むと思いますが、三冠王の村上宗隆選手(ヤクルト)で決まりです。彼をおいてほかにいません。

 思えば2021年の東京五輪では8番でした。稲葉篤紀監督が「若いからプレシャーを感じないように」と下位に置き、決勝で値千金のホームランを放ったのです。それからわずかの間で、よくぞここまで著しい成長を遂げたものです。

【1番候補は3人】

 1番打者の候補は3人います。源田壮亮選手(西武)、中野拓夢選手(阪神)、山田哲人選手(ヤクルト)です。昨シーズンは3人とも2ケタ盗塁をマークしています。そのなかでも、守備の要である源田選手を切り込み隊長に指名したいと思います。

 2番は山田選手。1番でもいいのですが、初回、走者を置いて一発というのもいい。二塁は牧秀悟選手(DeNA)も守れますが、守備面を含めて山田選手を選びました。

 東京五輪は3番に吉田正尚選手(当時オリックス/現レッドソックス)、4番に鈴木誠也選手(当時広島/現カブス)でしたが、今回は3番に大谷選手、4番に村上選手が入ることで、5番に鈴木選手、6番に吉田選手を入れたいと思います。

 そして7番は本塁打を期待できる打者を一塁で起用したいので、山川穂高選手(西武)か岡本和真選手(巨人)のどちらかに任せたいですね。ここは調子のいいほうを起用すればいいのではないでしょうか。

 8番はセンターで近藤健介選手(ソフトバンク)にします。鈴木選手がセンターを守って両翼をカバーできればいいのですが......。そして9番には捕手で、甲斐拓也選手(ソフトバンク)か、中村悠平選手(ヤクルト)のどちらかですね。

 いずれにしても、5番以降にもメジャー組が入る超重量打線です。かなりの得点力が期待できそうです。

【ヌートバーの選出には疑問】

 今回の侍ジャパンについて、ひとつだけ疑問があるとすれば、なぜ一度も日本でプレーしたことのないラーズ・ヌートバー選手(カージナルス)が選ばれたのかということです。マスコミのなかには「1番・センター」という報道がありましたが、昨シーズンのメジャーでの成績を見てみると、108試合で打率.228、14本塁打、40打点、4盗塁、71三振、51四球です。打率は高くないし、三振も多いし、盗塁も少ない。しかも本職はライトです。

 そうであれば、セ・パの盗塁王である近本光司選手(阪神)や郄部瑛斗選手(ロッテ)、さらには塩見泰隆選手(ヤクルト)など、「1番・センター」の選手がいるのに、なぜヌートバー選手を選んだのだろうかと......。個人的には「やってみないとわからない」未知の選手でなくてもよかったのではと思ってしまいます。

 私は、公開競技ではありましたが、1984年のロサンゼルス五輪に日本代表として参加、金メダルを獲得することができました。松永怜一監督(当時)の「遊びじゃないんだ!」という厳しい言葉は、今も忘れられません。「昭和の時代」と言われるかもしれませんが、昔も今も大切なのは"愛国心"です。ただ、国を背負うというプレッシャーに押し潰されないように、どうやって自分のパフォーマンスを出すのか、そこが大事です。

 昨年のサッカーW杯カタール大会では、「三笘の1ミリ」など、日本人を感動させる多くの名場面がありました。そして野球の最大の魅力は「一発逆転」があることです。私が言わんとすることは、勝敗はもちろん、三笘選手のような劇的なシーンをたくさんつくって、ファンのみなさんを感動させてほしいということです。