NASAがアメリカ国防総省高等研究計画局(DARPA)と共同で「核熱ロケットエンジン」を開発するプロジェクト「Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations(DRACO)」を発表しました。核熱ロケットエンジンには「航行時間の短縮」「宇宙飛行士のリスク低減」といったメリットが存在し、有人火星ミッションの実現に役立つとのこと。NASAは核熱ロケットエンジンのテストを2027年までに実施予定としています。

NASA, DARPA Will Test Nuclear Engine for Future Mars Missions | NASA

https://www.nasa.gov/press-release/nasa-darpa-will-test-nuclear-engine-for-future-mars-missions



DARPA, NASA Collaborate on Nuclear Thermal Rocket Engine

https://www.darpa.mil/news-events/2023-01-24

darpa-nasa_draco_nonreimbursable_interagency_agreement_final_2023-01-11_.pdf

(PDFファイル)https://www.nasa.gov/sites/default/files/atoms/files/darpa-nasa_draco_nonreimbursable_interagency_agreement_final_2023-01-11_.pdf

NASAは、有人火星ミッションの実現のために研究開発を進めていますが、現行のロケットエンジンを使用した場合、地球と火星の往復に3年を要すると見積もられており、宇宙飛行士への負荷の大きさが懸念されています。NASAは宇宙飛行士のリスク低減のために往復時間を約2年に短縮することを目指しており、航行時間の短縮を見込める核熱ロケットエンジンの開発を進めていました。



新たに、NASAはDARPAと払い戻し不可の契約を締結し、DARPAと共同で核熱ロケットエンジンの開発を進めることを発表しました。発表によると、DARPAはロケットシステム関連の調達や日程調整、セキュリティの確保などを担当するとのこと。また、NASAは核熱ロケットエンジンの実証試験を2027年までに実施すると宣言しています。

今回の発表によると、核熱ロケットエンジンでは核分裂反応を用いて大量の電力を生産可能で、高度な計算や通信が可能とのこと。さらに、核分裂反応によって生じた熱を液体推進剤に伝達することで、従来の化学ロケットと比べて3倍以上の効率で宇宙を航行できるとされています。

DARPAのステファニー・トンプキンズ長官は「DARPAとNASAは、人類を初めて月に到達させたサターンV型ロケットから衛星への燃料補給に至るまで、技術の進歩において実りある協力関係を築いてきました」「宇宙空間は、現代の商業、科学的発見、国家安全保障にとって極めて重要です。DRACOプロジェクトによる宇宙技術の飛躍的な進歩は、月への物資輸送を効率的にし、最終的に人類が火星に到達するために不可欠です」と述べています。

なお、NASAはアメリカ合衆国エネルギー省(DOE)と共同で核分裂燃料や原子炉をロケットエンジンに応用するための研究を進めていますが、NASAとDOEが開発を進めている技術はDRACOプロジェクトとは異なる目的に使用される予定とのことです。