加藤和樹「誰もが“彼は最強だ”と認めるメレアガンを目指したい」ミュージカル『キングアーサー』インタビュー

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世界で語り継がれるアーサー王伝説。この伝説の物語をグルーヴ感溢れるフレンチロックで装い新たに描くミュージカル『キングアーサー』が、2023年1月~2月に上演される。

音楽・脚本・作詞を手掛けるのは、『1789-バスティーユの恋人たち-』『ロックオペラ モーツァルト』などヒット作を生み出してきたドーヴ・アチア。日本版演出は、韓国演劇界で注目を浴びる新進気鋭の演出家オ・ルピナが務める。

屈強な騎士の姿のビジュアルが公開され話題を呼んだ、メレアガン役の一人加藤和樹に単独インタビューを実施。作品への期待や最近の過ごし方など、終始リラックスした表情で穏やかに語ってくれた。ビジュアル撮影の模様とともにお届けする。

――まずは、先日行われたビジュアル撮影の感想を聞かせてください。

他のキャストの方のビジュアルも見たんですけど、世界観をとても表しているものになっているなと思います。僕はヨーロッパの騎士という役どころは初めてなので、その雰囲気がすごく新鮮でした。一気に作品の世界観に入り込むことができたので、撮影もノリノリでやらせていただきました。

――衣装そのものは、実際に身に着けてみていかがでしたか? 

ロングコートのような形で、生地に本革を使ってくださっていました。本革は重いイメージがあるかもしれませんが、実は軽いんですよ。使えば使うほど身体に馴染んでくるものなので、やりながら少しずつ馴染ませていきたいですね。

――騎士の姿と同時に、加藤さんのヘアスタイルにも注目が集まっていました。

ちょうど撮影のときに刈り上げちゃっていたんです(笑)。それを活かしたものにしたいということで、あの髪型になりました。変化を出すために、アシンメトリーにして長さに差をつけています。本番ではどうなるかわかりませんが、基本的には地毛でいきたいという話がありました。ウィッグと地毛だと髪の動きの生々しさが違うそうなんです。なので、そういったビジュアル面でのリアリティも出てくるのだろうなと。

――撮影中のポージングで意識したことはありますか?

メレアガンは最強の騎士と呼ばれている役なんですけど、僕はこれまで和モノしか経験がないんです。「はたしてこの構え方であっているのかな?」と試行錯誤しながら、自分の持つ知識を総動員して臨みました。洋モノの剣は和モノの刀と違ってみねがないので、エクスカリバーも含めて扱い方や剣捌きはこれから勉強していかなきゃですね。アクション指導の方も入られると思うので、相談しながら演技をつけていきたいです。

>(NEXT)フレンチロックミュージカル。その魅力とは

――『キングアーサー』はフレンチロックミュージカルですが、同じくフレンチロックミュージカルの『ロミオ&ジュリエット』『1789-バスティーユの恋人たち-』の出演経験がある加藤さんに音楽的な魅力をうかがいたいです。

音楽は『1789』と同じクリエイティブチームということで、感情がとても乗せやすいメロディラインだなと感じています。ダンスとマッチングするようなナンバーが多い印象もありますね。『1789』のときにも感じましたが、感情がどんどん前に進んでいくというか、お客様が一緒に乗っかっていくことができるような音楽という印象です。

――アンサンブルキャスト陣も踊りが素晴らしい方が勢揃いしていますし、ダンスシーンにも期待しています。

そうですね。フレンチロックミュージカルの最大の魅力は、ダンスの華やかさやダイナミックさにあると僕は思っているんです。その表現の仕方も含め、見応えのあるものになるんじゃないかなと楽しみにしています。

――エンターテインメント性が高いナンバーが多そうですね。

はい。ただメレアガンの楽曲については難しそうなものが多くて、気持ちが入り込んでいないと曲に没入するのが難しそうな印象があります。その突破口は、稽古を通して見つけていきたいなと思いますね。

――メレアガンはアーサーに王座と婚約者を奪われ復讐に燃えるという役どころですが、加藤さん自身はすごく穏やかな方ですよね。普段怒ることってあるのでしょうか?

まあ、ありますよ(笑)。人に対して怒ることはないですけどね。僕、スマホでゲームをやることがあるんですけど、ゲームに対して突発的に「なんだよー!」って怒っちゃうことは結構あります(笑)。

――かわいらしいエピソードをありがとうございます(笑)。2021年末~2022年にかけての『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』ではかなり鍛えていらっしゃいましたが、今回はむしろ動けるように絞っていく感じでしょうか?

衣装的に肌が出る面積が少ないので、絞って動きやすい身体にしていきたいなというのは正直あります。『北斗の拳』のときにすごく感じたんですけど、筋肉をつけるとどうしても身体が重くなってしまうんです。今僕がイメージしているメレアガンは、重厚さもありつつ、美しく強い人。誰もが“彼は最強だ”と認めるようなメレアガンを目指したいなと思っています。

――演出は韓国演劇界で活躍されているオ・ルピナさんが務めます。

韓国の第一線で活躍されている演出家さんの一人でもありますし、僕は韓国の役者さんが好きで尊敬している方も多いので、彼らと作品を作っているルピナさんとご一緒できるのは非常に楽しみです。

――稽古が始まったら、どんなことをルピナさんに聞いてみたいですか?

そもそも稽古のやり方も違うと思うので、どのように芝居を作り込んでいくのかということや、韓国の役者さんが大事にしていること、ルピナさん自身が大切にしていることを聞きたいですね。一方的にではなく、お互いに歩み寄りながら作っていきたいなとも思います。海外の演出家の方の場合、どうしても言葉の壁があるんです。もちろん通訳さんはいらっしゃるんですけど、彼女の負担がなるべく少なくなるよう、我々から歩み寄ってやりやすい環境を作っていきたいですね。

>(NEXT)浦井健治や伊礼彼方、共演者の印象は

――共演者の方についても聞かせてください。主演の浦井健治さんとは『ボンベイドリームス』(2015年)と『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3(2020年/全公演中止)でご一緒されていらっしゃいます。

もう楽しみでしかないですね。『ウエスト・サイド・ストーリー』が開幕直前に上演できなかったのはとても残念なことではあるんですけれども、稽古期間に久しぶりに浦井さんとお芝居することができました。僕、浦井さんのお芝居が本当に好きなんです。今回も刺激的な毎日になるのではないかなと期待しています。

――“浦井さん”と呼んでいらっしゃるんですか?

はい、浦井さんは“浦井さん”ですね。さすがに“けんちゃん”とはまだ言えないです(笑)。

――Wキャストでメレアガンを演じる伊礼彼方さんには、どんな印象を持っていますか?

(伊礼)彼方は役作りなど本当に自由な発想を持っていて、自分にはない着眼点があります。そういうことも含め、一緒にメレアガンを作っていけるんじゃないかなと。すごく頼りになるお兄ちゃんでもあります。ミュージカル『テニスの王子様』を一緒にやってきているので、年上ではあるんですけど共に戦ってきた仲間という感覚もあります。

――他にも特に共演が楽しみな方はいらっしゃいますか?

僕としてすごく楽しみなのは、久々に(石川)禅さんと共演できるということ。禅さんは本当に歌声も芝居の考え方も素敵なんです。僕が初めて帝国劇場で『レディ・ベス』に出演したとき、本当にいろいろなことを教えてくださったんです。その後の『タイタニック』でも僕を導いてくれる存在でした。先日のビジュアル撮影のときに、久しぶりにお会いしたんですよ。

――石川さんとはどんなお話をされましたか?

コロナ禍になってから会うのが初めてくらいだったので、お互いに元気かということや、年齢のことを話しました(笑)。禅さんと初めて会ってからもう10年以上経っていますから、そういう意味で自分の成長も見せたいですし、禅さんが今回どういう芝居をしてくるのかというのも非常に楽しみにしています。

>(NEXT)多忙な中の切り替え&気分転換は

――加藤さんは舞台のみならずアーティスト活動やTVのお仕事など幅広く活躍されていらっしゃいますが、オフの時間は取れていますか?

オフはないですね(笑)。でも最近、仕事で伊豆へ行くことがあったので「僕の夏休み」とTwitterに投稿しました。実は仕事なんですけど(笑)。そういう気分転換になるようなお仕事もありますし、現場が変わることで刺激を受け、そのことが気分転換にもなるんです。

――なるほど。ご自宅でゆっくり趣味の料理をされる時間はなかなか取れなそうですね。

今はちょっと難しいですねえ。でもちょっとしたものは作りますよ。ほぼ素麺になっちゃいますけど(笑)。夏はいかに素麺のつゆを変えて食べるか、ということに特化しています。楽ですし、おいしいですし。あとはなるべく野菜とフルーツを毎日食べるように意識していますね。

――ちなみに、最近おすすめの素麺のつゆは?

冷やし明太卵あんかけ素麺です!

――多忙な加藤さんですが、それぞれの仕事の切り替えはどうやってされているのでしょうか?

一つひとつにちゃんと向き合ってやっていくしかないですね。もちろん「あれもやらなきゃこれもやらなきゃ」って頭がパンクしそうになるときもたまにはあります。でもどれも手が抜けないものですし、その中で求められている以上のものを出せるよう、それぞれちゃんと準備していくことを大事にしています。

――今年も既に半分が過ぎました。来年の『キングアーサー』に向けて、残りの2022年はどう過ごしていきたいですか?

実は僕、今年はミュージカルが少なくて。今はニール・サイモンの舞台『裸足で散歩』の稽古をしています。ストレートプレイでは歌わないので、その間に歌の喉が劣化してしまわないようにトレーニングを続けながら、来年の『キングアーサー』に向けて着々と準備をしていきたいです。本当に年々、1年があっという間になるなあという感覚です。でも「気が付いたら一日が終わっちゃった」ではなく「今日はこれがやれた!」という実感を持ちながら、日々を大事に過ごしていきたいなと思います。

取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=荒川潤