「虚血性心疾患」ってどんな症状?予防法も詳しく解説!
虚血性心疾患は心臓が酸欠を起こした状態です。
無症状のまま進行する場合も多く、重大な発作が起こって慌てて病院に駆け込む…というケースは少なくありません。
症状を放置すると、命を落とす危険もあります。心臓になにか少しでも不調がある場合は早めに医療機関を受診してください。
虚血性心疾患の症状や検査方法について詳しくご説明します。緊急時の適切な対応につなげるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
虚血性心疾患の具体的な症状
虚血性心疾患とはどのような状態ですか?
虚血性疾患とは、なんらかの原因で心臓の筋肉(心筋)への血流が停滞し、心臓が血液不足になることです。
心臓に血液を送るのは、冠動脈という太い血管です。この冠動脈が狭くなったり、詰まったりすると、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなります。すると心臓が血液不足になり、虚血状態に陥ります。
「虚血」とは「血がない」という意味です。心臓へ血液が流れなくなる原因は多くの場合、動脈硬化です。
動脈硬化とは血管が硬化・収縮した状態を指します。結果、血管内部が狭まったり詰まったりして、その先の心臓へ血液が流れなくなるのです。血管内部が狭くなった状態は「狭心症」、血管内が詰まり心筋細胞が壊死した状態は「心筋梗塞」と呼ばれます
心臓に血がいきわたらないと、どのような影響が出るのですか?
血液がいきわたらなくなると心臓は酸欠状態になります。血液は全身に酸素を運んでいるためです。
心臓が酸欠を起こすと、胸痛があらわれやすくなります。胸の広い範囲が締め付けられるように痛むのが特徴です。
しかし痛みの程度は個人差が大きいのが実情です。重症化するまで痛みがまったくあらわれない方も珍しくありません。虚血状態を長く放置すると、心臓の機能が弱まります。
具体的には、血液を全身に送り出すポンプ機能が低下します。いわゆる心不全と呼ばれる状態です。
また、虚血状態が長く続くと心臓に負担がかかり、心室細動という不整脈が起こることも少なくありません。
心筋梗塞の症状について教えてください。
心筋梗塞は、心臓の血管が詰まり、その先に血液が流れなくなった状態です。心臓が酸欠になるため、痛みなどの症状があらわれます。
胸の強烈な痛み
息苦しさ
吐き気・嘔吐
冷や汗
一般的に、心筋梗塞の症状は15~30分以上続きます。そのため「このまま死ぬのではないか」というパニックに陥る方は少なくありません。
たしかに心筋梗塞は放置すると命に関わりますが、発症後に、速やかに適切な治療(カテーテルの治療、心不全や不整脈などへの薬物治療)が重要となってきます。
狭心症とはどのように違うのですか?
狭心症は虚血性心疾患の1種です。血管が狭くなるなどして、心臓への血液が一時的に少なくなった状態です。
狭心症は心筋梗塞と異なり、心臓への血流が完全にストップするわけではありません。しかし心臓が酸欠になりやすいため、心筋梗塞と同じく胸痛・息苦しさなどの症状があらわれやすくなります。
狭心症の発作は持続時間が短く、安静にして改善していく点が特徴です。
心筋梗塞の症状が数時間に及ぶのに対し、狭心症は15分以内におさまることが一般的です。
虚血性心疾患は遺伝するのでしょうか?
虚血性心疾患は遺伝することがあります。
血縁に虚血性心疾患の発症者がいる方は、発症リスクが高くなります。しかし、虚血性心疾患自体が遺伝することは稀です。
遺伝するのは多くの場合、虚血性心疾患になりやすい体質です。たとえば糖尿病・高血圧などが該当します。
また、遺伝的にリスクが高いといっても、必ずしも虚血性心疾患を発症するわけではありません。発症は生活習慣などにも起因します。
遺伝的にリスクの高い方でも、食事・運動習慣の見直しなどによって発症を防げます。
虚血性心疾患の検査方法と治療法
虚血性心疾患は早期発見できますか?
虚血性疾患早期発見が可能です。
発見・治療が早いほど、その後の重症化・後遺症のリスクを低減できます。しかし虚血性心疾患は重症化するまで症状が出ないことも少なくありません。
発見が遅れるほど治療開始も遅くなります。つまり、後遺症などのリスクが高まるのです。
できる限り早く異常に気づくには、定期的に検査を受けるのが1番の方法です。
早期発見のためにも、年に1回は健康診断・定期検診を受けてください。
検査方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
虚血性心疾患の診断では、まず問診によって狭心症・心筋梗塞などの症状の有無を確かめます。胸痛などの症状がある場合は、心臓の検査に進みます。
胸部レントゲン検査、CT検査
心臓超音波検査
心電図検査
心エコー
心筋シンチグラフィー
もっとも一般的な検査方法は冠動脈のCT検査です。
CT検査とは、X線を照射して臓器の様子を画像化する方法です。CT検査では、冠動脈の内部の様子を直接確認できます。
近年は技術の進化により、些細な血管の狭窄・閉塞の発見も難しくありません。つまり、将来的に虚血性心疾患を発症しやすい方のリスク低減を期待できます。
治療法はありますか?
虚血性心疾患の主な治療法は下記の3種類です。
薬物療法
冠動脈バイパス術
冠動脈カテーテル術(経皮的冠動脈形成術)
薬物療法は、主に狭心症の治療に用いられます。代表的な治療薬は、血管拡張作用のある抗狭心症薬です。
重度の狭心症では、冠動脈バイパス術・カテーテル術が用いられることもあります。再灌流療法とも呼ばれる治療法です。
バイパス術では狭くなった血管に迂回路を作って血流を維持します。対してカテーテル術では、血管の狭くなった部位に風船などを通して拡張します。
心筋梗塞は迅速な治療を要するため、再灌流療法が用いられるケースがほとんどです。
心臓に関わる病気となると合併症が心配です…。
合併症を起こしやすいのは心筋梗塞です。
不整脈
心不全の悪化
心破裂
乳頭筋断裂
心破裂は心筋から出血する症状です。心室中隔穿孔では心臓の内部に穴が開くことで、心臓内での血液の逆流が起こります。
乳頭筋断裂は、心臓内部の弁が機能しなくなる状態です。同じく心臓内で血液の逆流が発生しやすくなります。
いずれも急激な心不全を起こしやすく、そのまま死に至ることも少なくない合併症です。
虚血性心疾患の予防法
虚血性心疾患が疑われるときは、まず救急車を呼ぶべきですか?
虚血性心疾患の症状があらわれた場合は、救急車を呼ぶのが最善の方法です。次のような症状が15分以上続く場合は、速やかに救急車を呼んでください。
胸・上半身の強烈な痛み
吐き気・嘔吐
冷や汗
呼吸困難
上記の症状が15分以上続く場合、心筋梗塞が疑われます。心筋梗塞は、発症から治療開始までの時間が長いほど、回復の可能性が低くなります。
治癒したとしても、その後に重い後遺症が残ることも少なくありません。つまり発症後は、迅速に医療機関に搬送する必要があります。
一方、症状が15分以内に治まる場合は狭心症が疑われます。狭心症は心筋梗塞ほどには火急の治療が必要ありません。
しかし、狭心症だったとしても決して放置はしないでください。狭心症は心筋梗塞に発展するおそれが高いためです。
なお、心臓発作などの症状があらわれた際、救急車を呼ぶまでに必ずしも15分以上待つ必要はありません。
症状が激しい場合や、すこしでも様子がおかしいと思う場合は、ためらわずに救急車をお呼びください。
虚血性心疾患の予防法はありますか?
虚血性心疾患は多くの場合、生活習慣に起因します。
たとえば高脂質・高カロリーな食事は虚血性心疾患のリスクを高めます。また、運動不足や肥満も虚血性心疾患の原因です。
これらの生活習慣を改善することで発症リスクを低減できます。あわせて、飲酒・喫煙習慣の見直しも行ってください。特に喫煙は虚血性心疾患のリスクを1.7~1.9倍高めると指摘されています。
心臓病予防の観点からは、たばこはやめることが望ましいです。飲酒についてもほどほどの量を心がけることが重要です。
規則正しい生活を送ることが大切なのですね。
規則的な生活習慣を心がけると虚血性心疾患のリスクは下がります。
栄養バランスのよい食事
適度な運動
肥満予防
禁酒・禁煙
食事は低脂質・低糖質・低カロリー、そして栄養バランスを整えることを意識してください。
運動はウォーキング・水泳などの、心拍数の上昇が軽度である有酸素運動を20分以上実施することが重要です。しかしすでに心臓を患っている方は、運動によって症状が悪化するおそれがあります。
運動方法については、主治医とよくご相談ください。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
虚血性心疾患は心筋梗塞などに進むおそれもある疾患です。しかし症状があらわれたとしても、適切な対応をとれば重症化は防げます。
胸痛などの症状が15分以上続く場合は、速やかに医療機関を受診してください。
様子がおかしいと感じるときは、ためらわずに救急車をお呼びください。また、生活習慣を見直すなどして、普段から予防を心がけることも大切です。
編集部まとめ
虚血性心疾患は狭心症・心筋梗塞を含めた心臓病のことです。放置すると重症化しやすいため、不調に気づいた時点で医師の診察をお受けください。
発症は生活習慣の乱れに起因することも少なくありません。予防するためにも、普段からバランスのよい食事や適度な運動を心がけてください。
参考文献
虚血性心疾患|飯塚病院循環器病センター
心不全について|心不全.com
虚血性心疾患とは|大和成和病院
心筋梗塞|ニューハート・ワタナベ国際病院
虚血性心疾患|神戸掖済会病院
札幌で不整脈の手術・治療・診療を行う有名な病院をお探しなら【北光記念病院】へ~心臓病は遺伝するのか~|北光記念病院
虚血性心疾患とは|Doctors File
虚血性心疾患|ツカザキ病院
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虚血性心疾患の一次予防|NPO法人ジャパンハートクラブ
虚血性心疾患|大阪がん循環器病予防センター
虚血性心疾患の一次予防・二次予防|健康長寿ネット