暑い日にそそる絶品「なすのたたき」簡単に作る技
暑い夏を乗り切る料理「なすのたたき」の作り方を解説します
在宅勤務などによって、家で料理をする人が増えたのではないでしょうか。料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番の料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作る方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する連載『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は高知県の郷土料理「なすのたたき」です。
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なすは煮ても焼いても揚げてもおいしい夏野菜の代表格です。しかし、同じ夏野菜のトマトにはトマトの味が、ピーマンやパプリカやズッキーニにもそれぞれ個性がありますが、「なすの味は?」と聞かれるとなかなかイメージしづらいのでは。
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なすは単独で使うよりも組み合わせることで持ち味が出る野菜です。その理由はなすに含まれるうま味物質「グアニル酸」にあります。
グアニル酸は干し椎茸などに含まれるうま味物質で、グルタミン酸、イノシン酸など他のうま味物質と組み合わせることで、うま味の相乗効果が生じます。
生の状態のなすにはグアニル酸は含まれていませんが、加熱すると酵素によって核酸の分解が進み、うま味が出てきます。そのためにはゆっくりと加熱するのが大事。蒸しなすを作るとき、レンジを使えば簡単ですが、その方法ではなすのうま味は充分に味わえません。酵素は90℃で失活してしまうからです。
まるごとゆっくり加熱することで、うま味を増やす
なすは油との相性がいいので「揚げる」や「炒める」という調理法がよく用いられます。なすにはクロロゲン酸というエグみを呈する物質が含まれているのですが、油と一緒に調理すればそれが気にならなくなるからです。一方、油を料理に用いなかった日本では、昔から焼いたり、蒸したり、煮たり……といった調理法が発達しました。
今日は高知県の郷土料理である「なすのたたき」をつくります。なすをまるごとゆっくりと加熱することで、うま味を増やし、主役としての存在感を出します。現地ではアジの開きを焼いてほぐしたものを添えたりしますが、今回はうま味の補強として「ツナ缶」を加えました。あとは薬味の野菜と味付けの市販のポン酢があればできる料理です。
ツナ缶はシーチキンマイルドを使っています。マイルドと名前がついていれば原材料はカツオで、さっぱり味です。贅沢するのであれば名前にファンシー(原材料はビンナガマグロ)とあるツナ缶をほぐして使うとワンランク上の味が楽しめます。
今回はシーチキンマイルドを使います
なすのたたきの材料(2人前)
なす 3本
玉ねぎ 35g
大葉 5枚
刻みネギ 15g(パック詰め市販品)
みょうが 1個
ツナ缶 30g
ポン酢 大さじ2
水 大さじ1
一味唐辛子 好みで
なすのたたきはおなじみの「カツオのたたき」のカツオをなすに置き換えたもの。たっぷりの薬味が特徴です。薬味はさらしネギとみょうがなどがパックで売られているので、それを使ってもいいでしょう。
たっぷりの薬味が特徴です
なすはへたを切り落とします。
へたを切り落とします
フライパンになすと水100ml(分量外)を入れ、ふたをして強火にかけます。
水を入れたら、ふたをして強火に
お湯が沸き、蓋の内側が蒸気で満たされたら火を弱火に落とし15〜20分加熱します。
蒸気で満たされたら弱火で15〜20分
そのころにはフライパンの水がなくなっているはずです。なすをはしでつかんで柔らかさを感じたら蒸しあがり。切ってから蒸したり、レンジにかけたりすればもっと早く火を通すことができますが、ここで十分な時間をかけることでうま味につながります。
柔らかさを感じたら蒸し上がりです
なすは油で揚げることもできますが、蒸したほうが片付けは楽です。油で揚げる場合もまるごと使うのがポイントで、その場合は皮が破裂するのを防ぐために切り込みを入れておくといいでしょう。
ポン酢大さじ2、水大さじ1、ツナ缶30gを混ぜたタレになすを漬け、ラップを掛けて常温で冷ましておきます。この状態で、冷蔵庫で保存することもできます。
タレになすを漬け、常温で冷まします
そのあいだに薬味を準備しましょう。玉ねぎを薄切りにし、みょうがは半分に切って小口切りにし、あわせて水に5分ほどさらし、ザルにあけてからキッチンペーパーなどで水気を切ります。大葉は軸を取り除き、千切りにしましょう。
今回は刻みネギというあらかじめカットした状態で売られているものを使いましたが、青ネギを買ってきたら包丁で小口切りにし、水に5分さらした後、ザルで水気を切り、10分置いてから使います。ザルにあげた状態で放置すると辛味成分が揮発し、食べやすくなります。
玉ねぎは薄切りに
みょうがは小口切りに
大葉は軸を取り除いて
千切りに
なすが冷めたら4等分に切ります。
4等分に切ります
皿になすを盛り、薬味をたっぷりとのせ、漬け汁を回しかけます。好みで一味唐辛子を振りかけてもいいでしょう。
出来上がり
先ほども述べた通り、なすは油で揚げてもいいのですが、蒸したほうがさっぱりとした大人の味で、ビールによく合います。梅雨が明けたらいよいよやってくる暑い夏を乗り切る料理、覚えておくと得です。
(写真はすべて筆者撮影)
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(樋口 直哉 : 作家・料理家)