※この記事は2011年12月06日にBLOGOSで公開されたものです

都内でトークセッションをおこなったオリンパス元社長のウッドフォード氏。（11月24日、AP/アフロ） 写真一覧
12月6日、オリンパス株式会社は、同社の損失隠し問題について実態を調査していた第三者委員会がまとめた報告書を開示した。

第三者委によると連日に渡り報道・開示されている一連の「飛ばし」については、急速な円高が進行し、大幅な営業利益の減少を受けていた1985年以降、当時の社長であった下山敏郎氏が「財テク」ブームにのり、「金融資産の積極的運用」へと乗り出したのがきっかけ。

しかしながら、その後のバブル崩壊によりこうした資産の運用損が拡大し始め、その損失を取り戻すためにさらにハイリスク・ハイリターンな商品や金利先喰い型のリスク商品、高リスクで複雑な仕組債に手を出すなどを繰り返し、90年代後半には「1000億円をやや下回るほどの巨額なものとなった」としている。

第三者委員会による報告書は、この巨額損失をどのように処理していくかについて、オリンパス側は「裏の最優先経営課題と位置づけられていた」としている。

放置された「運用損」

93年には当時の社長であった岸本正壽師氏が「堅実経営路線への転換を図った」ものの、肝心のどんどん膨らんでいく運用損については抜本的な解決に着手しなかったとしている。

そしてこの先送りの最中にも膨らむ損失にも１つの転機が訪れる。

97年から98年にかけて、金融資産の会計処理についてそれまでの取得原価方式から時価評価主義への転換が進んだ時期に、こうした巨額の含み損が白日のもとにさらされる懸念が発生した。

この時期に金融資産を裏帳簿で管理していたのが、前副社長の森久志氏と前常勤監査役であった山田秀雄氏らを中心とする「経理部資金グループ」であった。

彼らは、それまでにも相談を持ちかけていたアクシーズ・ジャパン証券の中川昭夫氏やAxes America, LLCの佐川肇氏らと共同で報道されるような損失の「飛ばし」スキームを構築していく。また同時期に、株式会社グローバル・カンパニーの横尾宣政氏からLGT銀行(リヒテンシュタイン)の幹部を紹介され、同行からの融資を受けて損失を簿外に移すスキームにも傾倒していくこととなる。

これらを社内で主導した彼らが経営陣にまで上り詰めている事実は、本件がオリンパスの「裏の最優先経営課題」であったことをさらに裏付けているようにも思える。

共有されていた損失処理策

こうした事実は代々の社長だけでなく、日々の経理業務にも影響があることから経理部長などにも伝えられていた。

含み損を抱えた運用資産や本体から分離された金融資産についての情報共有は、2000年代にも菊川剛前社長らが参加する会議において年に2度ほどの割合で報告されていたという。

菊川前社長はこうした事実について第三者委員会の聞き取りに対し、「損失隠しをしていることは認識していたが、金額は最近まで知らなかった」と説明していた。

第三者委による報告書では損失分離のスキーム概要などについても調査報告をまとめているが、今回の処理と反社会的勢力との関係は認められなかったとしている。

また、同報告書は当時、同社の監査に関わっていたあずさ監査法人、新日本監査法人も「問題なしとしない」と指摘しており、会計士協会などの対応についても注目が集まっている。