※この記事は2011年11月28日にBLOGOSで公開されたものです

渡辺恒雄・株式式会社読売新聞グループ本社代表取締役会長兼主筆、 株式会社読売巨人軍取締役会長。
　読売新聞グループ本社・会長で主筆の渡辺恒雄氏（85）が、ある新聞社のインタビューに応じた。なんと部数争いで長年の仇敵であるはずの朝日新聞だ。読売巨人軍の球団代表だった清武英利氏（61）は、「プロ野球を私物化している」と渡辺氏を会見で批判したことで解任。読売新聞と清武氏の間で訴訟合戦になる構えを見せている。「メディアの首領」「政界のフィクサー」との異名を持つ渡辺氏は、ライバル紙に何を語ったのか。一部を抜粋しよう。（BLOGOS編集部・安藤）

不当なことは一つもしていない

　　まず、清武氏に「俺は最後の独裁者だ」と言ったのかという点を聞かれた渡辺氏は次のように答えた。
「僕は民主的だよ。物事を決めるときには必ず人に相談することにしている。独裁者と書くメディアもあるが、面白いし、売れるからね」
　また、清武氏が「報告したのに“鶴の一声”で、後からひっくり返された」としているコーチ人事については「発表するとの報告は受けてない」として、次のように反論した。
「『これで発表します。確定人事です』と言われれば、『ちょっと待て』と言った。だから、『そうか』とは言ったが、実際はほとんど見ていなかった。しかもまだクライマックスシリーズを控え、シーズンは残っていた。それなのに清武は確定人事として発表までしたんだ。11月4日に報道陣に対してコーチ人事のことは聞いていないと言ったのは、発表することまでは聞いていないという意味だ」
　さらに、清武氏が渡辺氏の行為を「コンプライアンス違反」と主張していることは真っ向から否定。むしろ、清武氏が江川卓氏のコーチ入りを暴露したことで会社に損害を与えたと糾弾している。
「マスコミを操作するために、コンプライアンスという言葉を使ったに過ぎない。巨人軍の定款には、本部長以上の人事や高額の契約、重要な事項については、読売新聞グループ本社の代表取締役の事前の承認を得るものとする、となっている。江川君の人事案というのはそれに該当する。僕は不当なことは一つもしていない。逆に、清武が企業機密を漏らしたために江川助監督が実現できなくなり、会社に損害を与えた。会社法に定める取締役の忠実義務違反、民法上の不法行為にあたる」
　他紙だからなのか全く遠慮することなく、歯にきぬ着せぬナベツネ節が続いた。あえてライバル紙のインタビューを受けることで、自分の主張の正当性をアピールする作戦なのだろうか。

朝日の社論通りなら倒さねば

　とはいえ、渡辺氏は朝日新聞への皮肉も忘れなかった。巨人軍の問題と離れて、朝日の記者が渡辺氏に「政界との距離があまりにも近くないですか？」との質問を受けたときの回答がふるっている。
「読売新聞の社論を実行できる内閣になるなら悪いことではない。そういう内閣に知恵を授けて具現化するのは僕には正義だし、合理的なことだ。朝日新聞の社論通りに実行する内閣なら倒さなければならない。民主党の首相は2代続けてひどかったが、野田佳彦首相はいいんじゃないかな。うちの社論に80％近い感じがする。正直だし、やる気がある」
　朝日の社論を切り捨てた上で、自身の政界への影響力を誇示しているとも取れる発言だった 。中面の1ページをぶち抜く格好でのロングインタビューは、大きな波紋を呼びそうだ。

関連記事

・「君は破滅だぞ、と言われた」元読売巨人軍代表・清武英利氏記者会見 - 11月25日の会見詳報。
・「プロ野球の私物化許せない」　巨人の清武代表が渡辺会長を名指しで告発　江川氏のヘッドコーチ就任めぐり内紛 - 11月11日の会見詳報。

【関連議題】
・清武氏、会見で"逆襲"
・巨人の内紛、清武代表を支持する？