「尿路結石」を予防する食べ物・飲み物をご存知ですか?
生活習慣病の1つともいわれているのが、尿路結石症です。
尿路結石ができると、ひどい激痛を伴ったり、入院治療が必要になったりします。
事前に予防できれば痛みを我慢することも、治療費を心配することもありません。
今回は尿路結石の特徴と、予防のポイントについてご紹介していきます。
監修医師:
坂本 信一 医師
尿路結石の特徴は?
尿路結石はどのような病気ですか?
尿路結石とは、その名のとおり、尿路といわれる尿の通り道にできる石のことです。尿路は、腎臓から尿管、膀胱までの尿道すべてを指します。
結石は腎臓か尿管で見つかることが多く、作られる原因は食生活・ストレス・遺伝・尿路の奇形などさまざまです。
また、結石はできる部位によって分類され、腎臓結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石と呼ばれます。さらにそこから結石の主な成分により以下のように分けられます。
シュウ酸カルシウム結石
リン酸カルシウム結石
尿酸結石
とても痛いと聞きますが、他に症状はありますか?
結石が腎臓にある場合は、痛みはほとんどなく、自覚症状もないことが多いです。結石が腎臓から出てしまうと、背中から脇腹にかけての痛みや下腹部痛などがでます。
また、痛みは夜間や早朝におきることが多く、一度痛み出すと3~4時間は痛みが持続します。痛みの強さは鈍痛から激痛までさまざまで、痛み以外にも、血尿がでたり吐き気があったりといった症状があることも多いです。
これらの症状は、結石が尿管を塞いでしまったり、結石によって尿の流れが悪くなったりしたときに現れます。
また、膀胱結石や尿管結石では膀胱の刺激症状を伴うことがあり、頻尿や残尿感といった膀胱炎のような症状がでることもあります。
ほかにも、細菌感染をおこしてしまうと結石性の腎盂腎炎になり、38~40度近くの発熱がでることもあるため放置するのは危険です。
尿路結石は男性に多いイメージです。
女性より男性の方が、患者数としては多いです。女性は15人に1人程度の割合ですが、男性は7人に1人の割合で罹患しています。
また、男性は40代から50代、女性は閉経後に発症することが多いです。
尿路結石の治療法
尿路結石はどの診療科で、どのような検査を受けるのですか?
尿路結石は、泌尿器科で治療され、症状からおおよその診断ができます。大きさが3㎜以上あればレントゲン撮影でうつる場合もありますが、腸内にガスがたまっていたり、結石が骨盤の骨と重なってしまっていたりするとレントゲンでの確認は難しいです。
また、腹部の超音波検査で尿路がつまっているか確認したり、結石が2㎜以下と小さい場合はCT撮影で確認したりもできます。
尿路結石の治療法は?
ESWL(体外衝撃波結石破砕術)
TUL(経尿道的結石破砕術)
PNL(経皮的結石破砕術)
ESWLは、専用の医療機器を使い、体の外から結石に向けて衝撃波を照射することで結石を砕く治療法です。治療時間は1時間程度と短く、日帰りでの治療が可能な病院もあります。1㎝以下の結石に対してよく使われる治療法です。
TULは、内視鏡を尿道から入れてレーザーなどで砕く治療法で、内視鏡の直径は細いもので3mm程度となっています。結石のサイズや位置によってはESWLやPNLと併用することもありますが、基本的には腎臓から尿道までのどの位置にある結石に対してもアプローチができます。
TULは基本的に麻酔下で行われ、1泊から2泊は入院が必要ですが、結石を確実に砕くことができること・結石の硬さや大きさにかかわらず治療できることなどがメリットとしてあげられます。
PNLは腰背部から腎臓や尿路までの通り道をつくり、内視鏡をいれて結石を破砕・除去する治療法です。ESWLのみでの治療が難しく、破砕したあとの尿管からの排出が難しい場合に用いられます。結石の大きさにより2回以上の手術が必要で、ほか2つの治療と併用されることもあります。
PNLには腎血管を傷つけてしまったことによる腎出血や、腎盂や尿管の損傷などのリスクがあり、出血が著しいときには輸血をする場合もあります。
また、結石の大きさが7~8㎜以下である場合は、内服薬を使った自然排出を狙うことが多いです。結石の自然排出時には基本的に痛みを伴いますが、まれに痛みもなく排出されることもあります。1ヶ月以上経っても結石が排出されなかったり、1㎝以上の大きな結石は上記のような治療が必要です。
手術するならなるべく負担の少ない方法を希望します…
ESWLはほかの2つの治療法に比べ、麻酔や入院を必要としないため比較的負担が少ないように思いますが、結石の大きさや位置によっては治療が難しいのも事実です。
結石がそれほど大きくない場合は自然排出も可能なことが多いため、治療法は担当の医師の説明を聞き、相談してから決めましょう。
再発する可能性はありますか?
食生活や生活習慣によっては再発の可能性が高く、それらが改善されなければ再発率は80~90%になります。
尿路結石を予防するポイント
尿管結石の原因は何でしょうか?
最初にお話ししましたが、尿路結石ができる原因は、食生活・年齢・ストレス・遺伝・尿路の奇形などさまざまです。
とくに食生活との関係性が深く、食生活が欧米化することによって、動物性脂肪・動物性タンパク質・塩分・糖分などの摂取量が増えたことが主な原因です。
また、「食べてすぐ寝てしまう」「カップ麺を中心とした食生活」など、生活習慣が原因のことも多いため注意しましょう。
肥満の人は尿路結石になりやすいですか?
肥満の方には病気でそうなってしまった方もいますが、多くは食生活や生活習慣が肥満の原因です。
尿路結石は生活習慣病の1つといわれているため、食生活や生活習慣が乱れてしまっていると尿路結石になるリスクは非常に高いです。
日頃の生活習慣も大切なのですね。
普段からカップ麺やコンビニの弁当などを食べている方は、これを機会に食生活の改善を試みてはいかがでしょうか。
また、適度な運動などでストレスを発散するのも効果的です。
おすすめの食べ物や飲み物はどのようなものがありますか?
まずは水をたくさん飲んで体内の水分量を上げ、尿量を増やすのがよいです。1日の目安量は1.5ℓ~2ℓが推奨されており、実際に水分を多く摂取するように指導しただけで、再発率が60%まで低下したというデータもあります。
尿路結石は体内のシュウ酸・リン酸・カルシウムなどが結晶化することによりできますが、最も多いのがシュウ酸カルシウム結石です。カルシウムが不足しているとシュウ酸が消化・吸収され、尿として排出されますが、カルシウムとシュウ酸が結合すると便となって排出されるようになります。
シュウ酸はほとんどの食品に入っているため摂取しないことは難しく、カルシウムを多く摂取することでシュウ酸の結晶化を防ぎます。1日あたりのカルシウム摂取量は、600㎎~800㎎が推奨です。カルシウムが多く入っている食品は次の通りです。
牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品
納豆・豆腐などの大豆製品
野菜
麦茶やほうじ茶
野菜のなかでもほうれん草にはシュウ酸が多く含まれているため注意しましょう。
飲み物については、コーヒーや紅茶・緑茶などより、麦茶やほうじ茶のほうがシュウ酸の量が少ないです。水を飲むことが苦痛に感じる方は、代わりに麦茶やほうじ茶を飲むのもよいです。
結石の成分や血液検査の結果次第では気を付けるべき食品が異なり、今回はシュウ酸カルシウムの場合の食品の話をしましたが、尿酸結石の場合などはプリン体を多く含む食品を制限されることもあります。ビールにもプリン体が多く含まれます。
栄養バランスのとれた食事をするのが基本ですが、再発防止のための食事制限は、担当医師と管理栄養士の指導を受けながら行いましょう。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
尿路結石は食生活や生活習慣の改善で十分に予防できます。一度結石ができてしまうと再発のリスクもあるため、事前に予防できるのであればそちらの方がよいです。
また、再発防止には医師や管理栄養士の指導の下、食生活や生活習慣を改善するのが一番です。
一度にすべてを改善するのは難しいですが、少しずつ改善していきましょう。
編集部まとめ
尿路結石にも治療法がいくつかあり、結石の大きさやできる位置によって治療法が変わります。
普段口にする食べ物や生活に気を付けるだけで予防することができるため、これを機会に一度食生活や生活習慣を見直してみましょう。
また、結石を放置すると、腎機能の低下や尿管の閉塞などのリスクがあります。
症状が現れた際には放置せず、早めに泌尿器科を受診することをおすすめします。
参考文献
尿路結石とは|東京女子医科大学病院 泌尿器科
尿路結石症診療ガイドライン2013年版|Mindsガイドラインライブラリ
尿路結石の再発を防ぐ食事について|原泌尿器科病院