急性胃腸炎とは?症状や感染した際の治療法を詳しく解説

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急性胃腸炎は、下痢や嘔吐・腹痛・発熱などを伴う病気です。

辛い状態が続くだけでなく、下痢や嘔吐によって脱水症状を引き起こす可能性があるため注意しなければいけません。

また急性胃腸炎は、子供だけでなく大人も感染するリスクがあるため、原因や症状・治療方法・予防方法などを知っておくことが大切です。

この記事では、急性胃腸炎がどんな病気なのか詳しく解説します。

監修医師:
工藤 孝文(医師)

みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

急性胃腸炎とは?

急性胃腸炎はどのような病気ですか?

急性胃腸炎は、ウイルス・細菌が胃や大腸・小腸に入り込んで感染し、粘膜の炎症を起こす病気です。代表的なウイルスは、冬場に流行するノロウイルス・冬から春先にかけて流行するロタウイルス・季節に関係なく流行するアデノウイルスなどがあげられます。

細菌感染では夏場の食中毒の原因でもある、サルモネラ菌・腸炎ビブリオ・大腸炎などが原因です。また、ウィルス感染や細菌感染以外に、暴飲暴食や食物アレルギーでも発症します。そのため、乳製品や蕎麦・きのこ・貝類などのアレルギーがある方は、注意が必要です。

吐き気や下痢・発熱などの症状が急に出るのが特徴で、感染した菌によって軽症から重症までさまざまです。

急性胃腸炎の具体的な症状は?

急性胃腸炎の症状は主に、吐き気や下痢・腹痛・発熱ですがとくに、下痢の症状が出る方が多いです。

原因となる病原体によって症状が異なり、細菌感染の場合、血便が出る頻度が高いです。また、サルモネラ菌やロタウイルス感染だと、高熱に加え水のような下痢が伴います。ロタウイルスは小さい子供の感染が多く、発熱や嘔吐とともに、白っぽい便が出るケースもあります。

ノロウイルス感染は、吐き気と下痢が多く発熱する方が少ないです。急性胃腸炎の症状は、ウィルス感染より細菌感染の方が症状が重い場合が多いです。

急性胃腸炎になる原因は何ですか?

急性胃腸炎になる原因はウイルスや細菌ですが、感染経路は主に経口感染で飛沫や人・食品があげられます。

病原菌を持っている人の糞便や嘔吐物が飛び散った場合、マスクをしていないと口からウイルスが入り込みます。また、糞便や嘔吐物の処理をした際に手で触れてしまうと、手や指を介してウイルスが入り込むので気をつけなければいけません。糞便や嘔吐物はしっかり処理を行わないと、ウイルスが空気中を漂い吸い込んでしまう恐れもあるため注意が必要です。

他には、ウイルスが付着している食品を、生で食べたり加熱せずに食べたりするのも原因です。感染している人が調理を行うと、手指を介して食品だけでなく作っている最中に触ったまな板や水なども汚染されてしまいます。その食品を口にすると、ウイルスが入り込んで感染し急性胃腸に感染してしまうのです。

どのように検査するのでしょうか?

急性胃腸炎の検査は、問診・触診・血液検査、必要に応じて便検査・大腸カメラなどです。

周囲の感染者の有無や食事の状況・出ている症状などを問診し、その後にお腹の状態などを触診し、炎症や感染がないか血液検査を行います。便検査や大腸カメラは、医師が必要と判断した場合に行います。

とくに大腸カメラは感染性胃腸炎の可能性が高く、血液検査での炎症反応や酷い下痢や血便があると行われる場合が多いです。

急性胃腸炎の治療方法は?

急性胃腸炎の治療方法を教えてください

急性胃腸炎の治療方法は、ウイルス感染・細菌感染によって異なります。ウイルス感染の場合は、症状に応じた薬(整腸剤や吐き気止め・解熱剤など)を使い、急性胃腸炎の症状を和らげる治療がほとんどです。

細菌感染の場合は、症状に応じた薬に加え抗生剤を投与します。細菌の種類によっては、抗菌薬を使用します。下痢止めはウイルスや細菌が体内から出る妨げになるため、使用は最低限にしています。

小さい子供や高齢の方は下痢によって脱水症状になると重症化するケースも少なくありません。そのため、経口からの水分補給や点滴で補います。

何日で治りますか?

急性胃腸炎は、処方された薬を飲みしっかり水分補給を行えば、3日~1週間程度で治ります。下痢や吐き気など症状のピークは2日~3日で、長くても1週間ほどです。

症状が出ている間は辛い状態ですが下痢や吐き気は体内の水分を消費するため、水分補給をしっかり行ってください。また、症状が酷い・長引いているという場合は、点滴を受けると楽になることもあるため医療機関の受診をおすすめします。

自宅療養を行う際のポイントを教えてください。

自宅療養を行う際は、処方された薬の服用と水分補給が大切です。

急性胃腸炎で心配なことは、下痢や嘔吐による脱水症状です。「水分を取りすぎると、余計下痢になるのでは?」と考えがちですが、下痢や嘔吐によって排出される水分が摂取する水分よりも多いと脱水症状を起こしてしまいます。また、発熱症状があると水分だけでなく体力も奪われてしまうため、水分補給はとても大切なのです。

吐き気があるときは無理に水分を取らず、少しづつこまめに補給してください。熱があるときなどは冷たく冷やした飲み物の方が飲みやすいかと思いますが、胃に負担をかけてしまうため常温で飲みましょう。

食欲が出てきたら消化の良いゼリーやおかゆ・果物から食事をはじめましょう。コーヒーやアルコール・脂っこい食事・香辛料など刺激の強い食べ物や飲み物・牛乳やヨーグルトなどの乳製品、食物繊維は胃腸への負担となるため避けてください。

脱水症状はひどくなると命に関わるケースもあるため、水やスポーツドリンクを準備してこまめに水分補給を行いましょう。

自分や家族が急性胃腸炎にかかった場合はどうする?

家族が急性胃腸炎になった場合、気をつけるべきことは?

家族が急性胃腸炎になった場合に注意することは、感染者の嘔吐物や糞便です。原因となるウイルスは嘔吐物や糞便に含まれており、手や指・口から感染します。

感染を防ぐために、たとえ家の中にいてもマスクの着用や手洗い・うがいは必ず行いましょう。嘔吐物や糞便の処理や感染者が触った場所の消毒は、熱処理やアルコールが有効的です。布団やカーペットなどで嘔吐してしまったときは、スチームアイロンなどで熱処理を行ってから手洗いしましょう。

嘔吐物や糞便を拭き取る際は、ウイルスを死滅させるためアルコール消毒が必要です。ですが、手指消毒などで使用しているアルコールでは死滅しないウイルスもいるため、薄めた台所用漂白剤を使用しましょう。また、嘔吐物や糞便の処理を行う際は飛沫感染しないよう、使い捨てガウン・手袋・マスクを着用し感染防止を徹底してください。

急性胃腸炎の際の食事はどうすればいいでしょうか?

急性胃腸炎になった際の食事は、第1に「無理して食べないこと」です。

腹痛や下痢の症状があるときは「食べなきゃ元気にならない」と思いがちですが、急に食事をすると胃腸に負担をかけてしまうため、まずは胃腸を休ませてあげましょう。また、食欲不振が続いているときは無理して食べず、水分や塩分が取れるスポーツドリンクや経口補水液をこまめに飲んでください。

食事は、下痢や腹痛・吐き気が治まり食欲が湧いてきてからでも大丈夫です。消化の良いゼリーや果物からはじめ、徐々にお粥・うどん・野菜スープなどに変え薄味にすると胃腸に負担がかかりません。

食欲が出てくるとお菓子や揚げ物が食べたくなると思いますが、脂っこい食べ物は消化に時間がかかるため完治するまで我慢しましょう。小さな子供の場合は、吐き気が落ち着いたら食事を開始してください。重湯やすりおろした果物・野菜のおひたしなどがおすすめです。

自分でできる予防対策はありますか?

急性胃腸炎は主に経口感染のため、手指からの感染を防ぎましょう。ウイルスは目で確認ができないため、手洗いや消毒は食事や料理の前・トイレの後・帰宅後などあらゆる場面で行うことが大切です。

手洗い・うがい・消毒を習慣にして、ウイルスを体内に入れないようしっかり予防しましょう。料理を行う際の注意点は、食品を十分加熱する・包丁やまな板の殺菌を行うの2点です。

食品はしっかり火を通さないとウイルスが残ってしまう場合があるため、中心部までしっかり加熱しましょう。また、生肉や魚を切った包丁やまな板は80度以上の熱湯につけるか、アルコール除菌をしてウイルスを死滅させましょう。

急性胃腸炎の予防は手洗いや消毒が基本のため、習慣づけることで予防に繋がります。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

急性胃腸炎は、下痢や嘔吐・発熱を伴う辛い病気です。主に経口感染のため、感染しないためには普段から手洗いや消毒で予防することが大切です。

また、家庭内で感染するケースが多く、とくに小さなお子様がいる家庭は、嘔吐や下痢の処理のときに感染してしまいます。

家族が急性胃腸炎になった場合は、感染対策を徹底し感染者を増やさないよう対策を行いましょう。

編集部まとめ


急性胃腸炎は急激な下痢や腹痛・嘔吐・発熱に襲われ、水分や体力を消耗してしまう病気です。

下痢や嘔吐が続き脱水症状になると命に関わることもあるため、急性胃腸炎になったらこまめな水分補給が大切です。

手指に付着したウイルスや細菌・飛沫したウイルスが原因で感染するため、日頃から手洗い・うがい・消毒を徹底し感染対策を行いましょう。

参考文献

急性胃腸炎とは?症状・原因・治療・病院の診療科目|病気スコープ

急性胃腸炎とは(症状・病気・治療など)|ドクターズ・ファイル

感染性胃腸炎(ノロウイルス)|ワクチン.net

胃腸炎の自宅療養|お茶の水医科大学

杉並区公式ホームページ・よくある質問と回答

胃腸炎やノロウイルスの献立・食事のポイント・再開時期|All about

急性腸炎、感冒性腸炎(お腹にくる風邪)|大阪江坂胃腸内科・内視鏡クリニック