「ゲームをやりすぎると頭が悪くなる」と子どもの頃に言われた経験がある人は多いかもしれませんが、5000人以上の子どもを対象にした新たな研究では、「平均より長い時間ゲームをプレイする子どもは、他の子どもよりも知能が高くなる」という結果が明らかになりました。

The impact of digital media on children’s intelligence while controlling for genetic differences in cognition and socioeconomic background | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-022-11341-2

Video games can help boost children's intelligence -- ScienceDaily

https://www.sciencedaily.com/releases/2022/05/220512121853.htm

Video games: our study suggests they boost intelligence in children

https://theconversation.com/video-games-our-study-suggests-they-boost-intelligence-in-children-182950

現代の子どもたちは非常に長い時間をゲームやスマートフォン、テレビなどに費やしており、多くの大人はスクリーンを眺める時間(スクリーンタイム)が子どもに及ぼす影響を懸念しています。そこで、スウェーデンのカロリンスカ研究所やオランダのアムステルダム自由大学の研究チームは、「スクリーンタイムが子どもの知能に与える影響」を調べる研究を行いました。

研究チームは今回の研究において、アメリカの子どもたちを対象にする縦断調査であるAdolescent Brain and Cognitive Development Project(ABCDプロジェクト/思春期の脳と認知発達プロジェクト)のデータを使用しました。調査では、5000人以上の子どもを対象に9歳または10歳時点でのスクリーンタイムを尋ね、知能を測定するテストを実施しました。知能の測定には読解力と語彙(ごい)を測定する2つのタスク、注意力と実行機能を測定するタスク、視覚的な空間処理能力を測定するタスク、学習能力を測定するタスクが用いられたそうです。そして2年後に再び子どもたちの知能を測定して、どれだけ知能が変動したのかを調べたとのこと。

さらに、今回の研究における特徴として挙げられているのが、「遺伝子や社会経済的なバックグラウンドを考慮した」という点です。これまでにもスクリーンタイムと知能についての研究はありましたが、社会経済的なバックグラウンドを考慮したものは少数であり、遺伝的な影響を考慮した研究はなかったとのこと。研究チームは、「遺伝子が重要なのは、知能は非常に遺伝性が高いからです。もしこれらの要因が考慮されなければ、スクリーンタイムが子どもに与える真の影響を見えなくしてしまうかもしれません」と指摘しています。



調査の結果、2017年の時点で9歳または10歳の子どもたちは平均して1日4時間、上位25%は1日6時間以上をスクリーンタイムに充てていることが判明。その内訳は、オンラインまたはテレビの動画を見る時間が平均で2時間30分、ソーシャルメディアに平均30分、ビデオゲームなどに平均1時間となっていました。

9歳または10歳の時点でこれらのスクリーンタイムと知能の関連を調べたところ、動画視聴とソーシャルメディアは平均より低い知能と関連しており、ゲームは知能との関連が見られませんでした。ところが、2年後の知能とこれらの関連を比較した結果、9歳または10歳の時点でより多くのゲームをプレイした子どもは、男女ともに2年後の知能が平均より向上したことが判明。たとえば、ゲームをプレイする時間が上位17%に入っていた子どもは、2年後のIQが平均より2.5パーセントポイント高かったと研究チームは述べています。

一方、ソーシャルメディアは知能向上と関連しておらず、ビデオの視聴は「親の教育」を考慮に入れると知能との関連はなかったとのこと。研究チームは、「これはビデオゲームが知能に有益な因果関係を持つことを示す証拠です」と述べていますが、精神的健康・睡眠の質・身体的な運動など今回の研究が考慮しなかった側面も多いため、「すべての親は子どもがゲームで遊ぶことを無制限に許可するべき」というわけではないと指摘しました。