ロバート秋山竜次も経験した尿管結石と脂肪肝、恐るべき糖尿病リスクに迫る
誰もが一度は耳にしたことがある「糖尿病」。でも、知っているのは病名だけで、どのような症状の病気なのか詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。しかしその実態は、進行すると大変恐ろしい病気なのです。人気芸人「ロバート」秋山竜次さんがこれまでに経験した病気と糖尿病との意外な関連や、何気ない生活習慣に潜んでいる糖尿病リスクから糖尿病の予防方法について紐解いていきます。
インタビュー:
秋山竜次(お笑い芸人)
1978年生まれ。福岡県出身。吉本興業所属。1998年 山本博、馬場裕之と共にお笑いトリオ「ロバート」を結成し、2011年には「キングオブコント」(TBS系)で優勝を果たした。梅宮辰夫になりきる“体モノマネ”を得意とする。「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」でGQ MEN OF THE YEAR 2017ベストコメディアン賞を受賞。バラエティ番組、ドラマ、映画、CMなどに多数出演し、東京2020オリンピックでは聖火ランナーを務めるなど幅広く活躍する他、2021年にはNetflixオリジナルシリーズ「クリエイターズ・ファイル GOLD」が全世界190ヵ国以上に配信されるなど世界へと活躍の場を広げている。
監修医師:
竹村俊輔(糖尿病内科専門医)
東海大学医学部卒業。東京女子医科大学糖尿病・代謝内科に入局後、大学病院や市中病院にて糖尿病および生活習慣病を中心に診療に従事。糖尿病内科専門医を取得。2021年すべての患者様にとって「通いやすいクリニック」を目指し、生活習慣病を中心とした日暮里内科・糖尿病内科クリニック開院。日本糖尿病学会糖尿病内科専門医、日本内科学会内科認定医、日本禁煙学会認定指導者、日本医師会認定産業医、医学博士。
竹村先生
これまで体調を崩して、調子が悪くなったご経験はありますか?
秋山さん
定期的に尿管結石になります。最初は20代の時にやったんですよ。背中の奥の方がめちゃくちゃ痛いし、悶絶というか、汗かいてきてもう死ぬって思いましたね。救急病院に行くと、おしっこしてくださいと言われて、すると血尿が出てきたんですよ。その頃は尿管結石のこと知らないから、とにかく痛かったという印象が強く残っています。
竹村先生
実際どのあたりが痛かったのですか?
秋山さん
体の中心部ですね。
竹村先生
治療としては病院でどのようなことをことされたのですか?
秋山さん
レントゲンを撮って、痛み止めと炎症を抑える薬を飲んで、1週間程度ジャンプして、石を下へおろすみたいなことを続けてました。手術はしていないです。ある時、カランって結構な大きさの石が出てきました。1回で終わればいいんですけど、5~7年ごとに尿管結石になってます。3回目を経験しているので、また次くるだろうという感じがして怖いですし、痛み止めを持ってないと怖いです……。結局、何が尿管結石を引き起こすのですか?
竹村先生
尿管結石は体の中の尿路、具体的には腎臓、尿管、膀胱、尿道というところに結石ができて、痛みが出る病気です。結石は、カルシウムや尿酸などが尿路にたくさんあることによって結晶化してしまうことでできます。とくに、肥満の方にできやすいということが考えられます。また、90%以上の方が背中の痛みを訴えると言われています。治療については、大きい結石になると手術を行う場合もありますが、小さければ水分を摂ってジャンプしてもらって、石を下に出すような治療を行います。
秋山さん
痩せている人より太っている人の方がなりやすいのですか?
竹村先生
そうですね、リスクは大きいです。
秋山さん
次また尿管結石になると4回目なので、ビクビクしながら仕事をしています。痛い時は痛み止めの坐薬を1時間に1回ぐらい入れる時があります。もう、尿管結石にはなりたくないんですけど、今後どうしたらいいですか?
竹村先生
1番の予防としては、なるべく糖質の少ない水分を多く摂っていただくことです。人間の体は60%以上が水分ですから、水分は多く摂取していただいた方が石は流れやすくなる可能性があると思います。ある論文では、1日2リットル以上水を飲まれている方は、尿管結石になる確率が60%程度低いと言われています。秋山さんとしては「こうしたら石が出やすかった」というようなご体験はありますか?
秋山さん
たくさん水を飲んで、歩いたりして、めちゃくちゃ動いていましたね。「出ろ、出ろ、出ろ」という意識で動いていました。別府の温泉に行った時に温泉の後のトイレで出たのですが、温泉は関係ありますかね?
竹村先生
注意すべき点は、運動や温泉に入ることよって身体の中の水分が汗で失われちゃいますので、脱水ぎみになり尿管結石が悪化してしまう場合があることです。ですので、その場合は1日4リットルくらいの水を摂取しないといけません。しかし、水の飲み過ぎはむくみに繋がってしまうので、その人の身体にあった適切量を摂取する必要があります。
秋山さん
尿管結石を患ったことのある人は糖尿病になりやすいと聞いたことがあるのですが……
竹村先生
おっしゃる通りです。糖尿病とは血糖値が高い病気ですが、原因はインスリンという血糖値を下げるホルモンの効きが悪いことが挙げられます。インスリンの効きが悪くなることを「インスリン抵抗性」といいますが、そのような状態になると尿管結石が非常に起きやすいという報告があります。
秋山さん
なるほどなぁ。それはびっくりです。わかりました。
竹村先生
尿管結石のほかに、何か健康診断で指摘を受けたことはありますか?
秋山さん
前に、脂肪肝、肝臓に脂肪が多いと言われました。肝臓に脂肪がついているということですか?
竹村先生
そうです。皮下脂肪と内臓脂肪がありますが、あまり内臓に脂肪はついて欲しくないです。その理由としては、内臓脂肪が多い方は動脈硬化に関連する病気に罹りやすいと言われているからです。心臓であれば心筋梗塞や狭心症、脳であれば脳梗塞などを発症しやすくなると言われています。
秋山さん
食べているものが原因なのですか?
竹村先生
そうですね…肥満ということが直結すると思います。秋山さんの場合は、お仕事柄難しいところがあると思いますが……
秋山さん
ほかに脂肪肝になると困ることはありますか?
竹村先生
糖尿病になる可能性が上がると考えられます。
秋山さん
なぜ脂肪肝など内臓脂肪が多いと糖尿病につながるのですか?
竹村先生
「インスリンの効きが悪くなる」、「インスリンが出づらくなる」、という2つのメカニズムがあります。インスリンの効きが悪くなるというのは、車で言うと燃費が悪くなるイメージです。
秋山さん
インスリンとは何ですか?
竹村先生
身体の中で唯一、血糖値を下げるホルモンです。
秋山さん
痩せるとインスリンは増えるのですか?
竹村先生
インスリンの量は変わりないですが、効き(燃費)の部分が良くなることは間違いないと言われています。また、日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が少ない人種と言われています。秋山さんはお酒は飲みますか?
秋山さん
いえ、一滴も飲みません。
竹村先生
それではNASHやNAFLDは聞いたことはありますか?
秋山さん
NASH?NAFLD?なんですか?アイドルグループですか?
竹村先生
アイドルではなく肝臓の病気のグループです笑。昔は肝障害を起こす方の多くで飲酒が問題でしたが、最近はアルコールを飲まない人の肝機能障害が問題となってきており、非アルコール性脂肪肝炎をNASH、非アルコール性脂肪性肝疾患をNAFLDと言います。最初に肝炎、もう少し悪くなると肝硬変、さらに悪くなると肝細胞癌になってしまいますので侮れない病気と言えます。
秋山さん
めっちゃ怖いですね。脂肪があると良くないのですね。どうしたら脂肪肝ではなくなるのですか?
竹村先生
1番は体重管理です。カロリー制限を行なって、肥満を改善することです。
秋山さん
なるほど。脂肪のつきやすい食べ物を避けながら、必要なカロリーを摂取していくと言うことですね。内臓の周りの脂肪を吸い取ってもらうみたいなものはないのですか?
竹村先生
自由診療で脂肪吸引がありますが、まずは自分の生活習慣を見直すのが大事です。ところで、コレステロールが高いと言われたことはありますか?
秋山さん
あります。
竹村先生
コレステロールもすごく重要で、悪玉コレステロール、善玉コレステロールがありまして、中でも悪玉コレステロールの数値が高いと動脈硬化になりやすいというデータがありますので、なるべく低くしたいですね。
秋山さん
食べ物でそうなってしまうのですか?
竹村先生
食べ物の影響もありますが、体質、遺伝の影響が大きくあります。
秋山さん
遺伝は仕方ないとしたら、食事を気を付けるしかないということですね? 食べない方がいい、コレステロールが高い食べ物は何がありますか?
竹村先生
色々ありますが、卵や油分を含むものなどに気を付ける必要があります。健康診断などで、コレステロール値が高いと言われても、痛くも痒くもないですが、肝硬変や肝細胞癌のリスクは上がりますので気をつけていく必要があります。薬を使わないレベルでしたら、自己管理が大事ですので、運動習慣が重要と言えます。
秋山さん
歩くことは内臓脂肪にはいいのですか?
竹村先生
運動習慣は代謝を良くすると言われていますので、とてもいいことです。
秋山さん
糖尿病って種類があるのですか?
竹村先生
はい。糖尿病には大きく分けて4つ種類ありますが、1番多いもので、90%以上が2型糖尿病、こちらは生活習慣などの環境が大きく関係するものです。次に1型糖尿病です。こちらはインスリンを作るための膵臓の中のβ細胞が何らかの原因で壊されてしまって、インスリンが出なくなるもので、自分で注射が必要になります。さらに、妊婦さんがなる妊娠糖尿病と言って、妊娠することでインスリンの効きが悪くなってしまうものです。最後に膵臓を手術でとってしまったり、ステロイドの影響だったり、その他の糖尿病があります。
秋山さん
結局はインスリンが大事なのですね。糖尿病になると何が大変なのですか? なっちゃうと大変なことはありますか?
竹村先生
急性な合併症と言うものがありまして、糖尿病は、最初は痛くも痒くもないですが、インスリンの分泌があまりにも少ないと意識が遠のいてしまう糖尿病性ケトアシドーシスという合併症があります。また、注射や飲み薬の影響で低血糖になってしまうこともあります。
秋山さん
合併症って怖いですね。ほかにはありますか?
竹村先生
神経障害、網膜症、腎症の3つが糖尿病の3大合併症と言われています。神経障害は、手先、足先の痺れや感覚が鈍くなり、男性ですと勃起障害になってしまいます。さらに糖尿病による動脈硬化が進行し、血流が悪くなることで、手足が腐っていき、切断しなくてはいけなくなります。
次に網膜症ですが、合併症の中で遅めに出てくる合併症です。症状が出た時にはすでに重症化し、失明してしまう場合も多くあります。
最後の1つは腎症です。徐々に尿が出なくなってしまい、最終的には1回3~4時間、週2~3回の頻度で血液を濾過する人工透析治療を行わなくてはいけないので、生活の質が下がってしまいます。
秋山さん
マジかよ……めちゃめちゃ恐ろしいですね。例えばまだ糖尿病でなくても、専門の先生に相談したり、近くに先生がいたりすると良いですか?
竹村先生
そうですね。通いやすいクリニックに通い続けることが大切になります。
秋山さん
糖尿病に近づいてきているというのは数値で明確にわかるものなのですか?
竹村先生
健康診断の結果でもわかりますので、何か指摘があれば、医療機関、中でも糖尿病内科を標榜していて、専門医のいるクリニックに相談するのが間違いないと思います。
秋山さん
今回は結構怖い話でしたね。
竹村先生
生活習慣病にならないために、秋山さんが普段気をつけていることはありますか?
秋山さん
普段めちゃくちゃ食べるんですよ。油っぽいもの、ラーメンも好きですし、カレー、チャーハン、肉、めちゃくちゃ食べるんですよね。でも運動もしていて、1日10000歩以上歩くようにしています。1年間の平均が10000歩を上回ったんですけど、体重は減らないんですよ。運動した後に食べちゃいます。運動だけではだめなのですね。
竹村先生
運動は続けていただいて、食事の量を調整して頂けると良いと思います。まずは今の半分を目指すと良いかと思います。ただ、最低限の量は食べないと、筋肉がなくなってしまうので、できるところからでお願いします。とくに炭水化物は糖尿病に影響しますので、食べる量に気をつけてください。
秋山さん
すごく痩せるわけにはいかないし、あのTシャツに合う身体を維持するというのは、私のプロフェッショナルの目標でもあるので、難しいところですよね……。まずチャーハンの量と運動の後の食事量に気をつけようと思います。糖尿病のなりやすさに個人差はありますか?
竹村先生
あります。遺伝と肥満歴が関係していると言われています。肥満歴がない方や肥満でなくても、父母や祖父母が患っていたなどの遺伝の影響でなってしまう人もいます。体重が増えると肥満の度合いが高くなりますので、やはり体重には気をつけて生活して頂きたいです。個人差の部分に関しても糖尿病専門医を受診して頂き、その人に合った治療を行うことが重要です。
秋山さん
なるほど。体重を気にして生活しようと思います。
竹村先生
秋山さん、今回糖尿病について一緒にお話していかがでしたか?
秋山さん
尿管結石、脂肪肝など糖尿病に繋がるものを意識していなかったですね。今思うと、すごく怖い話がたくさんで、気づいた時には進行してしまっているということですね。体づくりについて考え直そうと、痩せないといけないな、と思いました。ありがとうございました。
編集部より
糖尿病とは本当に恐ろしい病気ですね。気が付かないうちに少しずつ症状が進行している、なんて事も少なくないようです。秋山さんも好きな食べ物に糖尿病のリスクがあると知って悔しがっておられたように、食生活の乱れや運動不足にこそ生活習慣病のリスクが潜んでいるのかもしれません。健康診断の結果を侮らずに早めに専門医に相談し、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。