新たに行われた音楽を聴く習慣と睡眠に関する調査によって、「頭の中で延々リピートされる曲」が睡眠に悪影響を与えていると判明しました。研究の著者は就寝前に音楽を聴く習慣を改めるようにアドバイスしています。

Bedtime Music, Involuntary Musical Imagery, and Sleep - Michael K. Scullin, Chenlu Gao, Paul Fillmore, 2021

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797621989724

Music Listening Near Bedtime Disruptive to Sleep, Baylor Study Finds | Media and Public Relations | Baylor University

https://www.baylor.edu/mediacommunications/news.php?action=story&story=223743

Earworms Don't Just Haunt You When You're Awake, Sleep Study Reveals

https://www.sciencealert.com/here-s-how-listening-to-music-before-bed-can-seriously-disrupt-your-sleep

「頭の中で同じ曲が延々とリピートされる」という現象は、耳の中にこびりついた虫が音を鳴らし続けているという想像から英語では「Earwarm(イヤーワーム:耳虫)」と呼ばれます。そんなイヤーワームが睡眠に与える影響について研究を行ったのは、アメリカのベイラー大学心理学部で睡眠について研究するマイケル・スカリン准教授率いる研究チームです。スカリン准教授らは同大学の睡眠神経科学および認知研究所で被験者50人に実際に寝てもらい、イヤーワームが睡眠の質にどのような影響を与えるかを調査しました。



この調査では、キャッチーで人気がありイヤーワームを誘発しやすい曲として、テイラー・スウィフトの「Shake It Off」やカーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Maybe」、ジャーニーの「Don’t Stop Believin’」の3曲を採用。この3曲のオリジナルバージョンとインストルメンタルバージョンを被験者にそれぞれ割り当て、「イヤーワームが発生したかどうか」「発生した際の状況」について聞き取り調査を行いました。

Taylor Swift - Shake It Off - YouTube

この聞き取り調査の結果と睡眠状況を比較したところ、イヤーワーム状態になった被験者は寝付きが悪くなっただけでなく、中途覚醒の頻度や浅い眠りの割合が増加したとのこと。加えて、研究チームが睡眠時の脳波を定量的に分析した結果、「寝ていたのにイヤーワームのせいで起きた」と報告した被験者では、脳の一次聴覚野で記憶の再活性化の兆候を示す徐波振動が誘発されていたことが確認されました。

また、以上の実験に加えて、被験者199人を対象にした聞き取り調査も行われました。この調査では、週に1度以上夜間にイヤーワームを経験すると回答した被験者は、めったにイヤーワームを経験しない被験者に比べて睡眠の質が悪い可能性が6倍も高かったとのこと。

一連の結果の中でも注目すべきポイントとして、スカリン准教授はインストルメンタルバージョンが特に睡眠を悪化させる点を指摘。「インストルメンタルバージョンはオリジナルバージョンよりもイヤーワームの誘発率が2倍も高くなるとわかりました」と語りました。

スカリン准教授は「音楽を聴けば聴くほど、就寝時にイヤーワームが発生する確率が高まります。そうなると、睡眠が悪くなる可能性も高くなってしまいます」とコメントして、保健機関が推奨している「就寝前にリラックスする音楽を聴く」という習慣を改めるようにアドバイス。その代わりとして、自身のこれまでの研究によって、「翌日にやるべきことのリストを作成すると将来の不安が薄れ、より早く寝付けるようになる」という結果が得られていると語りました。