シングルマザーは婚活市場で人気が高いそうです(写真:Kazpon/PIXTA)

結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ筆者が、日本の婚活事情について解説する本連載。今回は、最近相談が増えてきているというシングルマザーの婚活事情について。小さな子どもを持つ若い女性から、子どもが巣立った後の50代女性まで幅広い世代で再婚希望者がいるそうですが、実はシングルマザーは婚活市場で人気が高いそうです。

医師との再婚を熱望した女性

コロナ禍の寂しさから「家族がほしい」と結婚する人が増えていますが、その中でもシングルマザーの婚活が目立ってきています。小学校低学年の娘がいる女性、明子さん(仮名)もその1人。


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コロナ前は、「医師と結婚したい!」と熱望し続けていましたが、なかなかうまくいきません。娘さんが次の学年にあがる前には相手を決めたいという要望もあって、さらに難しい状況でした。担当していた弊社アドバイザーは、正直お手あげ状態。娘さんの学年があがるまでにはあと5か月しかありません。そこで、私がバトンタッチすることにしました。

当時、明子さんが交際を申し込んでいたある医師は、偉そうに頭ごなしに叱ってばかり。お見合い中に「今日はキミの都合に合わせて来てあげたけど、本当は昨日のほうがよかったんだよね」などと文句を言われたそうで、彼女は泣いて帰ってきました。そんな男性なのに「医師」の一点だけで彼女は執着していました。

私はまず「医師にこだわるのはやめよう」と提案しました。なぜ医師がいいのか聞き出してみると、「自分のお父さんが医師だったから」。父親に対して憧れがあったんですね。そこでハッキリ言いました。「再婚したいシングルマザーは、絶対に女の性(さが)は捨てるべき」と。

結局、明子さんは自分が女として医師と結婚したいだけ。再婚したら忙しい再婚相手のケアも大変で、お子さんとの生活リズムや状況が一変することや、再婚相手の職場によってお子さんはが転校することになってもいいのか、習い事など今の生活基盤がすべて崩れていいのか。そのあたりはあまり考えていませんでした。

そこで、「お子さんがお母さんと2人きりでいるよりももっと幸せになれる、やりたいことがやれる、将来なりたいものになれる、そんな相手を探さないとダメですよ」とアドバイス。シングルマザーは1人ではないのです。

そんな中、明子さんに「1度会ってみるといいのでは」と説得してお見合いを申し込んだのが、中学校教師の和夫さん(仮名)。普段から子どもと接することに慣れていて、子どもの気持ちをよくわかっている男性です。

明子さんが「子どもを転校させたくない。今住んでいるところの地域に住み続けたい」と申し出ると、彼は「希望を全部かなえます。僕が引っ越しするから、明子さんが今住んでいる地域でもう少し広いところを借りるなり、買うなりしましょう。お子さんと2人の生活は崩さなくていいです」と言ってくれました。

プロポーズ前に彼女の娘に相談

プロポーズのとき、彼が「お母さんと結婚したいと思うんだけどいいですか?」とお子さんに聞いたら、「はい、お母さんをよろしくお願いします」と答えたそうです。まだ10歳にもならない子ですよ。

それで次の日には友達に電話して、「私、お父さんできたんだよ」とうれしそうに報告していたとか。今の時代、子どもも親の再婚をオープンに報告するようになったんですね。

和夫さんはものすごく心の温かい人で子煩悩。お子さんのことをすごくかわいがってくれる。結婚が正式に決まって3人で弊社に報告に来てくれた際、「記念写真を撮りましょうね」と言うと、お子さんはお母さんではなく彼の膝の上にちょこんと座りました。

毎朝、学校に行くときに「今から学校でこんな授業があるの」「この科目はこうするといいよ」と20分くらいおしゃべりしているそうです。教師だから学習面でのサポートもバッチリですね。

お子さんを連れての再婚では、継父からの虐待や性的暴力がたびたび報道されています。だからこそ、なおさら子どもと相手の相性を重視する必要があります。

シングルマザーと結婚しようとする男性に対しては、私はいつも「お父さんになろうとは思わないでね」とアドバイスしています。本当のお父さんの記憶がある、ある程度の年齢の子どもであれば、継父に対しての反発は避けられません。再婚相手はあくまで「お母さんの恋人」であって「お父さん」ではないんです。

無理に「お父さん」と呼ばせなくていい

前出の和夫さんも、お子さんからは「お父さん」ではなく「カズくん(仮名)」と呼ばれていました。それでいいんです。無理やり「お父さん」と呼ばせたり、自分も「お父さんだから」と気負って振る舞う必要はありません。年の離れたお兄さん、あるいは親戚のおじさんという距離感でいい。

しつけも男性がでしゃばって主導権を持つのではなく、彼女と子どもの仲をうまくキープできるようにする程度でいいと思います。例えば、母子げんかをしていたら、ちょっと入って「ママの話を聞いてあげたほうがいいんじゃない?」と言ってみる。お母さんの子育てが少しでも楽になるようにサポートする応援団であればいいんです。

逆にお母さんは、あらかじめ相手に「私が自分の子どもを育てます。あなたはお父さんにならなくても大丈夫」と伝えておく。そうしないと「いきなり子持ちはハードルが高い」と成婚に至らない可能性もあります。もし、彼が子どもにしつけをしようとしたら、「あなたは入らないで」と言うくらいでないとうまくいかないでしょう。

男性から見たときのシングルマザーと結婚する魅力は、自立して子育てしている母親ならではの強い母性本能ですね。子どもが、熱があれば、自分がおなかが空いていようが何していようが、まず子どものことを考える。自分以外の人を優先するということに慣れている。だから、そこに飛び込んだ男性は居心地がいいんです。

子どもに対して「よくできたね」とほめるように、男性のこともほめてもくれる。「これがおいしかった? おいしくない? じゃあ、おしょうゆかけたらいいんじゃない?」と言葉に出して世話してくれて、甘やかしてくれる。とても楽ちんなわけです。

女手1つで育て上げ、お子さんが巣立った後の50代のシングルマザーの再婚も増えました。それは、「子どもに迷惑をかけないようにしたい」ということが理由の1つのようです。

お子さんはもう20〜30代。そろそろ結婚を意識する世代です。そのときにお母さんが1人で残っていると、やはりお子さんは心配するでしょう。場合によっては、お子さんの交際相手に「お荷物」と思われてしまうかもしれません。だから、迷惑をかけないように、お子さんが結婚する前に、自分が先に再婚するわけです。

彼女たちはそれこそ自分の性(さが)を捨てて、まず子どものためにと死にものぐるいで働いて頑張ってきました。50代になってようやく自分の幸せを中心に考えられるようになったのです。

ご褒美みたいなものですよね。ご褒美再婚。1回目の結婚は修行だったかもしれませんが、2回目の結婚は人生を謳歌するために、伴侶と楽しい時間を過ごすためにする。 離婚がそうめずらしくない時代ですから、再婚のハードルも低い。「私、まだもう1回いけるわ」という感覚です。50代でも生き生きしていてバイタリティーあふれるきれいな女性が増えました。

実子、実孫ではないけれど

シングルマザーとの結婚は、男性側も再婚のケースが多い。日本ではほとんどの場合、子どもは母親が引き取るので、離婚後は会うことがあまりないんですね。そこで50代のシングルマザーと再婚すると、彼女の20代30代のお子さんが家族になる。さらに、そのお子さん、つまり孫を連れてくることもある。改めて“家族”のよさを感じるようです。

シングルマザーの理恵さん(仮名)は50歳のときに再婚し、お相手男性と新居を構えました。お母さんの幸せそうな様子を見た理恵さんの娘さんも、「私も結婚したい!」と半年後に結婚。その娘さんが妊娠して出産するときには、なんと理恵さんの嫁ぎ先の新居で過ごしたそうです。「居心地がいいから」と言ってなんと半年間も。継父が“孫”のおむつやミルクを買いに行っていたそうですよ。

依然として離婚や再婚にいいイメージを持っていない人もいますが、だんだんと実子ではない多様な家族の形であるステップファミリーが日本でも定着してきて、偏見が薄れてきました。寿命が伸びた分、1度や2度結婚に失敗しても時間はたっぷりあります。何度でも結婚して人生を楽しもうという意識が高まってきているのだと思います。