「watchOS 7」で強化された、Apple Watchの文字盤を使いこなす技を紹介する(筆者撮影)

スマートウォッチの分野で独り勝ちを続けるApple Watch。調査会社MM総研が発表した日本でのシェアは2019年度通期で48.6%と、全体の半数程度を占めるに至っている。コロナ禍で健康管理の意識が高まっていることや、iPhone、iPadやMacとの連携がさらに強化されていることから、今後の成長も期待できそうだ。


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「watchOS 7.3」では、日本で心電図を取る機能がついに利用可能になり、ニーズがさらに高まっている。2020年9月には、正統進化モデルのApple Watch Series 6と廉価版のApple Watch SEにバリエーションを拡大。単体で見守り端末のように使える、ファミリー共有設定も用意した。

時計の形を模してはいるものの、Apple Watchはスマートフォンなどのコンピューターに近い。文字盤もあくまでデジタルコンテンツとして作られているため、アナログの時計と違い、毎日の気分や服装に合わせて、気軽に変更することが可能だ。Apple Watchに搭載されるwatchOS 7(最新バージョンは7.3)では、この文字盤の機能が強化された。

例えば、文字盤に配置できるウィジェットのようなコンプリケーションは、これまで1アプリにつき1つまでと制限があったが、それが撤廃され、文字盤をカスタマイズしやすくなった。カスタマイズした文字盤を共有できる機能も、新たに加わっている。ベストな文字盤が作れれば、Apple Watchがさらに使いやすくなるはずだ。そこで今回は、Apple Watchの文字盤に関する基本から、裏技までを一挙に紹介していこう。

1.コンプリケーションをカスタマイズ

種類によって配置できる場所やサイズ、数などの違いはあるが、Apple Watchの使い勝手を高めるうえで、コンプリケーションのカスタマイズは必須と言っていいだろう。スマートフォンにおけるウィジェットのような存在で、文字盤上に天気予報やワークアウトの進捗状況を表示したり、特定のアプリをすぐに立ち上げたりといったことが可能になる。コンプリケーションはサードパーティも作成できるため、利用頻度の高いアプリが対応していれば、それを設定しておいてもいい。


Apple Watchには、さまざまなコンプリケーションが用意されている。サードパーティ製のものも設定可能(筆者撮影)

例えば、決済アプリのPayPayも、コンプリケーションを用意している。これを設定しておくと、文字盤をタップするだけですぐにApple Watch上でPayPayアプリが立ち上がり、右方向にフリックすると決済に必要なバーコードが表示される。Apple Payも利用できるApple Watchだが、店舗によってはPayPayにしか対応していないケースもある。このようなときに、iPhoneを取り出す必要なく、すぐにPayPayを立ち上げられるのは便利だ。

コンプリケーションのカスタマイズはApple Watch上でもできるが、ディスプレーが小さく、コンプリケーションはさらに細かいため、変更には手間がかかる。カスタマイズしたいときは、iPhone上のWatchアプリから変更することをお勧めしたい。アプリを入れれば入れるほど、組み合わせが多彩になるため、できるだけコンプリケーションを配置できる文字盤を使いたくなるはずだ。

2020年9月に配信されたwatchOS 7では、このコンプリケーションの機能が強化されている。それ以前は、1つのアプリにつき1つまでしか配置できなかったが、watchOS 7以降のバージョンでは、1つのアプリが複数のコンプリケーションを持つことが可能になった。同一のアプリのコンプリケーションで文字盤を埋めて、Apple Watchを用途限定のスマートウォッチにすることができる。

わかりやすい例は、「ヤマレコ」というアプリのコンプリケーション。このアプリをインストールすると、標高グラフや歩くペース、予想通過時刻などのコンプリケーションを配置できるようになる。コンプリケーションをまとめて設定すれば、Apple Watchが登山用に特化したスマートウォッチになるというわけだ。育児記録アプリの「ぴよログ」も、複数のコンプリケーションを配信している。

こうしたアプリのコンプリケーションを1つ1つ設定するのが面倒というときには、アプリ開発者側が用意したサンプルをそのままダウンロードすることもできる。上記のヤマレコはサイト上に、文字盤のサンプルを公開している。アプリをインストールしたあと、iPhoneでサイトを開いて使いたい文字盤のサンプルを選び、「Add Apple Watch」をタップするだけでコンプリケーションを含んだ文字盤をそのまま追加できる。

2.自分で作った文字盤を友達と共有

文字盤の配信が可能になったのは、watchOS 7が、文字盤の共有に対応したからだ。作った文字盤を他人に送るためのもので、アプリ開発者側はこの機能を使っている。もちろん、この機能は、アプリ開発者だけでなく一般のユーザーも利用でき、自分が作った文字盤を、友達や同僚に共有して、おそろいにするといったことが可能だ。友達の使っている文字盤が気に入ったら、それをもらってもいいだろう。1つ1つカスタマイズしてまねる手間が省ける。

文字盤の共有は、Apple WatchやiPhoneのWatchアプリから簡単に行える。まず、Apple Watchからの手順を紹介しよう。表示されている文字盤を長押しすると、文字盤の選択モードに切り替わる。ここで、共有ボタンをタップすると、新規メッセージの画面が表示される。後は、送りたい友達や同僚、家族を選択して、メッセージとして送信するだけだ。この方法だと、iMessageを使って文字盤を送ることが可能だ。

メッセージアプリ以外で文字盤を共有したいときには、iPhoneを使うといい。Watchアプリを開き、マイ文字盤の中から共有したい文字盤を選択。画面右上に共有ボタンが表示されるので、ここをタップしよう。すると、iPhoneの共有メニューが現れる。この方法だと、メールやAirDropなど、メッセージ以外の送信方法を選択することができる。


自分でコンプリケーションを配置した文字盤は、Apple WatchやWatchアプリから共有できる(筆者撮影)

相手に直接送らず、ファイルアプリに保存するといった共有の仕方も可能。オンラインストレージに保存しておけば、パソコンなど、別のデバイスから文字盤ファイルをダウンロードできる。ファイルは、「.watchface」という拡張子がついており、メールに添付して送ったり、Webサイトで公開したりといったことも可能だ。

3.場所や時間で自動的に文字盤を変更する

複数の文字盤を使い分けることができるのは、スマートウォッチならではの魅力。アナログの時計とは違い、あくまでデジタル的にディスプレーの上で文字盤を表現しているだけなので、場所や気分、その日の服装に合わせて、最適なものを選択することが可能だ。筆者も、Apple Watch Hermèsを普段から使っていて、通常はHermès標準の文字盤に設定しているが、スポーティーな服装にはあまり合わないため、別途インフォグラフモジュラーの文字盤を用意し、切り替えながら使っている。

文字盤の切り替えは、左右にフリックしていくだけと簡単だが、数が多くなってくると少々手間がかかる。そこで、試してみたいのが、文字盤の自動変更だ。標準では用意されていない機能だが、iPhoneの動作を自動化する「ショートカット」の「オートメーション」を使うことで、自動的に文字盤を変更できるようになる。オートメーションは時間や場所を発動条件にできるため、例えば、ジムに行っているときだけ、ワークアウトの計測に特化した文字盤に変更するといったことが可能。ビジネスマンなら、カジュアルな服装をする週末だけ、デジタルウォッチ的な文字盤に変更してもいいだろう。


オートメーションを使うと、自動的に文字盤を切り替えることが可能になる(筆者撮影)

設定方法は次のとおり。まず、「ショートカット」アプリを立ち上げ、「オートメーション」タブを開く。画面右上の「+」をタップして、「個人用オートメーションを作成」ボタンをタップしよう。次に、文字盤が変更される条件を設定する。ここでは、週末だけ文字盤を変えられるよう、「時刻」を選択した。土曜日の朝に文字盤を切り替えたいため、「繰り返し」を「毎週」にして、「土」だけを選択。時間は便宜的に、6時に設定した。時間を決めたら、「次へ」をタップしよう。

次に、文字盤を変更するアクションを追加する。ここでは、「アクションを追加」をタップ。アクションの中にある「App」を選び、「Watch」を選択しよう。すると、オートメーションに設定できる項目が現れる。ここでは、「文字盤を設定」を選択する。これで、アクションに文字盤を選択する項目が加わった。ここで「文字盤」をタップすると、自分が設定した文字盤一覧が表示されるため、土曜日に設定したい文字盤を選択。「次へ」をタップすれば、オートメーションは完成。自動で変更したいときには、「実行の前に尋ねる」をオフにしてから「完了」をタップしよう。

上記と同様の手順で、月曜日の早朝に文字盤がもとに戻るように設定しておけば、ウィークデイと週末で、異なる文字盤を使い分けることが可能だ。オートメーションのトリガーには、時間のほか、場所や通勤前などの条件も設定できる。上記で挙げたように、ジムに行くときとそうでないときや、家と会社などで文字盤を使い分けることができる。前掲の、登山用に設定した文字盤を、実際、山に行ったときだけ表示させるといったことも可能になる。手動で文字盤を切り替える手間を減らせる技として、ぜひ覚えておきたい裏技だ。