準々決勝の鳳凰戦で1得点を挙げた福田。選手権出場まであと2つだ。写真:安藤隆人

写真拡大 (全3枚)

 神村学園が全国に誇る1年生コンビがいる。MF大迫塁とFW福田師王。ともに神村学園中出身で、U-17日本代表でもある。

【選手権PHOTO】堀北・ガッキー・広瀬姉妹! 初代から最新・本田望結まで「歴代応援マネージャー」を一挙公開!

 高校選手権鹿児島県予選準々決勝。鳳凰を相手に大きく躍動したのは福田の方だった。

「ちょっと緊張からか全体が硬い」と試合前に有村圭一郎監督がこぼしたように、立ち上がりの神村学園は連係ミスなどらしくないプレーが続き、鳳凰の鋭いカウンターを受けるなど、リズムを作り出せなかった。

 だが、この悪い流れを断ち切ったのが4-1-4-1の1トップに君臨した福田だった。35分、右サイドを突破したMF佐藤璃樹のクロスをゴール前で収めると、飛び込んできたシャドーの外原颯へパス。外原が冷静に右足で蹴り込んで、神村学園に先制点をもたらした。

 これで緊張がほぐれた神村学園は後半に入ると、サイドと中央をバランスよく使ったリズミカルなサッカーで鳳凰を押し込む。

 48分、右サイドを破った佐藤のクロスを中央で福田が滞空時間の長いヘッドで合わせるが、これは鳳凰GK川原大輝のファインセーブに阻まれた。悔しさを露わにした福田だったが、その2分後にきっちりと結果で示した。

 50分、左サイドからDF下川床勇斗のクロスに、またも滞空時間の長いヘッド。GK川原が伸ばした両手の上を行くヘッドを沈めて、貴重な追加点をマーク。その後も前線で身体と技術を駆使してボールを集約し、大迫らの攻撃力を引き出すと、57分にはDF2人に囲まれながらもクサビを受け、身体でブロックするとそのまま鋭いターンで2人の間を割って入ってGKと1対1に。シュートは飛び出してきたGK川原のブロックに遭うが、周りを生かしつつ、自分でもゴールに迫るプレーで鳳凰に対して脅威となり続けた。

「福田がいなかったら危なかった」と有村監督が試合後に絶賛したように、立ち上がりに苦しんだ神村学園だが、1年生ストライカーの大車輪の活躍により流れをガッチリと掴み、終盤にさらに2ゴールを追加して4-1のスコアで準決勝進出を決めた。

「自分が何点でも決めてチームを勝たせたいと常に思っています。僕が出ることで、出られない3年生もいるので、責任を持ってプレーしています」

 試合後、殊勲の福田はこう語った。さらにプレー面に話を向けると、彼は高校に入ってから手にした武器が自分をより成長させたと口にした。
 
「中学の途中まではヘッドが苦手でした。でも中3の冬に一度だけ練習でCBを経験したのですが、そこでヘッドをやってみたら意外と飛ぶし、できることに気づいたんです。そこで『ヘッドを武器にできるかも』と思って、そこから毎日ヘッドの練習をするようになりました。ボールキープも中学までは落ちてボールを受けてゲームを作るスタイルだったのですが、高校では監督から『より高い位置で受けてほしい』と言われているので、フィジカルを鍛えて、よりボールを収めるプレーを磨くようになりました」

 この日のプレーはまさに、彼が高校で身につけた強みが結果に現われたものだった。だが、まだ準々決勝。自身初となる選手権出場へはあと2つ勝たなければならない。

「これからはもっと厳しい戦いになるので、もっともっと自分を磨いていかないといけません。それに(大迫)塁にマークが集中するので、僕がより動いてパスコースを作って、タメを作って周りの動きを引き出していきたい。より前線でボールを奪われない選手になっていきたいです」

 最後に同級生の大迫について聞いてみた。
「負けたくないライバルです。塁がいるからこそ、自分が成長できるんです」

 Jクラブのスカウトたちも注目の1年生コンビが選手権の舞台に立つことはあるのか。それは福田のさらなる成長に懸かっていると言ってもいいだろう。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)