フェデラー、ナダル、ジョコビッチの誰が一番!? スタッツに見るビッグ3比較

写真拡大

今の時期、本来ならばクレーシーズンが始まっているはずだった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界の他のあらゆるものと同じくテニスも歩みを止めたが、この中断期間はテニスファンにとっては、過去の名勝負を振り返り、膨大なデータ類を紐解くための機会になったとも言える。そんなわけで、英国のスポーツデータ専門WEBサイト、the stats zoneは、現テニス界における究極のクエスチョンに挑むことにした。


主題はずばり「ビッグ3」。つまり、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の誰が最強なのか!?という疑問だ。


同メディアが提示した様々なデータの中から、今回は「勝率」にとことんこだわって分析してみたい。

■生涯勝率


ナダル83.2% > ジョコビッチ83.0% > フェデラー82.1%


このデータに関して、フェデラーがほかの2人より5歳以上年長であること、また試合数が300以上多いことを考慮すべきだと、the stats zoneは指摘する。


ただし年齢の高さは、必ずしも勝率の低下にはつながらない。ATP公式ページでフェデラーの数字をさらに掘り下げると、膝の故障明けとなった翌年2017年からの3年間で、なんと平均勝率86.3%を叩き出しているのだ。好データの秘密はスケジュール調整。参加大会数を若き日より減らすことで体調を管理し、確実に勝利を収めている。


むしろフェデラーの勝率を下げているのは、絶不調だった2013年の72.6%だろう。一方でナダルとジョコビッチは王座に上り詰めて以来、これほど低い数字を出したことはない。両者とも高めで安定している。


■シーズン最高勝率


フェデラー95.3% > ジョコビッチ93.2% > ナダル91.8%


the stats zoneは取り上げていなかったが、独自に「シーズン最高勝率」も比較してみよう。ビッグ3がそれぞれの全盛期にどれだけ強かったのかを知るための、指針になるかもしれない。


ご存知の通り、ジョコビッチは2020年シーズンに100%というパーフェクトな勝率を誇っている。出場した3大会全てを制し、18戦18勝といまだ無傷。ただしフルシーズン通しての勝率としては、4大大会すべてで決勝に進出し、うち3大会で優勝した2015年の93.2%が最高となる。


一方ナダルの最高値(91.8%)は2018年のもの。つまり「全豪オープン」と「全米オープン」を途中棄権するなど、怪我がちで試合数が少なかったシーズンだ。次に勝率が高いのは2013年の91.5%。「全豪オープン」欠場・「全仏オープン」優勝・「ウィンブルドン」1回戦敗退・「全米オープン」優勝と波のある年だった。「全仏オープン」からのグランドスラム3大会連続優勝などによりキャリア最高のシーズンと言われる2010年は、実は勝率としては87.7%にとどまる。


つまりはフェデラーが2005年にマークした95.3%が、ビッグ3の中で最上の数字と言える。たしかに当時、ナダルは台頭1年目で、ジョコビッチはようやく100位圏内に食い込んだばかりではあった。しかしフェデラーが2004年からの3年間、勝率94.3%という驚異的な数字で男子テニス界を圧倒し続けた事実は、揺るがしようがない。


■生涯直接対決勝率


ナダル60% > フェデラー40%


ジョコビッチ53% > ナダル47%


ジョコビッチ54% > フェデラー46%


⇒ジョコビッチ > ナダル > フェデラー


上のデータを単純にまとめれば「ジョコビッチ > ナダル > フェデラー」という式が成り立つ。ただし、the stats zoneはサーフェスやコンテクストの違いに注意するよう呼びかける。ならばサーフェス別でも比べてみよう。


■クレー直接対決勝率


ナダル89% > フェデラー11%


ナダル71% > ジョコビッチ29%


フェデラー50% = ジョコビッチ50%


⇒ナダル > フェデラー、ジョコビッチ


クレーに関しては単純だ。ナダル最強説に反論する者など、地球上には存在しない。史上最多優勝12回を誇る「全仏オープン」では、対フェデラー戦6戦全勝。このクレーでの圧倒的力の差が、生涯直接対決勝率にもろに反映されている。ナダル個人のサーフェス別生涯勝率は、ハードとグラスがそれぞれ78%に対して、クレー92%。徹底的なスペシャリストぶりである。


■グラス直接対決勝率


フェデラー75% > ナダル25%


ジョコビッチ50% = ナダル50%


ジョコビッチ75% > フェデラー25%


「芝の王者」と言えば、やはり「ウィンブルドン」史上最多優勝8回のフェデラー。同サーフェスでの生涯勝率は87%に達する(ハード83%。クレーは76%と極めて低い)。ところがビッグ3における関係は単純ではない。フェデラーはナダルを圧倒しつつ、そのフェデラーをジョコビッチが凌駕する。でもナダルとジョコビッチは同列。実はフェデラーが「ウィンブルドン」決勝を落としたのが4度。うち3度はジョコビッチの前に屈した。この3度の負けがなければ、2人の生涯直接対決(フェデラーの23勝27敗)はほぼイーブンだった。


■ハード直接対決勝率


フェデラー55% > ナダル45%


ジョコビッチ74% > ナダル26%


ジョコビッチ53% > フェデラー47%


⇒ジョコビッチ > フェデラー > ナダル


フェデラー対ナダル、ジョコビッチ対フェデラーはほぼ対等。ジョコビッチ対ナダルだけに明らかな不等号がつく。ちなみにジョコビッチはサーフェス別生涯勝率がハード84%・クレー80%・グラス84%と高い平均を保つ。スペシャリストではなく、あらゆるサーフェスで満遍なく強いジェネラリストである。


生涯勝率はナダル、シーズン最高勝率はフェデラー、そして直接対決での勝率はジョコビッチ。今回はどうやら仲良く引き分けと言えそうだ。the stats zoneでも最終結論は結局うやむやとなっている。


いずれにせよ、これは単なる一つの側面から見た結果に過ぎない。そもそもフェデラー、ナダル、ジョコビッチという「史上最強のビッグ3」を、数字だけで比較することなど不可能に近い。「誰が最強なのか」の議論はますます加熱するはずだ。


(テニスデイリー編集部)


※写真は左からジョコビッチ、ナダル、フェデラー
(Getty Images)