中島のキープ力は光っていたが、周囲と良い形で連動していたかと言えば……。(C)SOCCER DIGEST

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「力負け」という印象が残りました。コロンビアは端から後半勝負と決めて試合をしてきたように見えました。そのゲームプランにまんまと乗せられ、0−1で勝たれてしまう。力の差はまだあるなというのが正直なところです。
 
 決して悪い試合をしたわけではありません。積極的な姿勢は全ての選手から感じられ、誰が出ても一定のレベルを確保できることは示しました。しかし、”コロンビアに勝ち切る”ところまでは、ちょっと今の時点では難しいと言わざるを得ません。
 
 特に、勝ち切るためには両ゴール前の質の差を埋めなければならないでしょう。確かに惜しいチャンスは演出しました。あと一歩。それはそうなのですが、日本のほうがコロンビアよりもゴール前に近づくにつれて単発に見えてしまったのは必然です。瞬間的なイメージの擦り合わせの点で明らかにコロンビアが上回っていたからです。
 
「高い」とか「強い」とか「速い」とか、身体的な特徴を挙げているわけではありません。日本代表は、ひとつのパスに対して、ひとつのドリブルに対して、ひとつのプレーに対して、ほとんどが”出し手”と”受け手”のふたりの関係で完結してしまっているように見えたのです。
 

 少なくとも3人目。少なくとも5回に1回。3人以上の選手が同じ絵を描いて動きをシンクロさせるような攻撃の回数を増やしていかなくては、日本は世界のトップレベルに勝ち切ってはいけないと思います。
 
 攻撃のスタートも同じです。コロンビアがプレスをかけてきた時の解決策がよく分かりませんでした。危険を回避するためにロングボールを使うのは、悪いことでは決してありません。ただ、その前にできることはもっとあると思いました。
 
 そのためには、やはりもっと具体性を高めていくことだと思います。「いかにして相手のプレスを回避するのか」、「いかにして瞬間的なイメージを擦り合せるのか」。日本代表にそれが自然発生的に構築されていく時間を待つ余裕はありません。選手の組み合わせや立ち位置の定め方でそれを具体的に提示して作り上げていくべきだと思います。
 
 アジアカップからの修正という意味では、中盤の守備の連動性は高まったと思います。一人ひとりがこまめにステップを踏みながらポジションを修正する意識を持ったことで、自然に横の選手との距離が縮まりました。それにより、たとえ中盤の選手の間にパスを通されても、すぐにプレスバックができ、コロンビアにうまくボールを繋がれたシーンは多くありませんでした。これは4−4−2でやる以上は必要不可欠な意識ですから、修正が見られたのは良かったと思います。
 
 ただ、細かいことをいえば、前線の一人ひとりの選手の寄せる判断、待つ判断といったところは改善の余地があり、前半からコロンビアが飛ばしてこなかったことに助けられた面もあったと思います。
 
 日本の現在地は決して高いわけではないことは再確認できました。ただ、それ自体は悪いことでもありません。課題は明確になってきていて、特に南米のトップの国々には6月に公式戦の場で挑むことができます。それまでは、まずは選手間の競争が第一。ボリビア戦でもたくさんの選手が使われるはずで、選手が変わることで起こる変化に注視していきます。
 
 そのなかで、「ビルドアップのスタート」や「攻撃のフィニッシュにつながるイメージの擦り合わせ」に解決策を提示できる人材の出現を期待します。
【著者プロフィール】
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。鹿島で不動のCBとし2007年から前人未踏のJ1リーグ3連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者として活躍中。