都立総合工科vs芝vs都立片倉

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来シーズンへ向けて、今できる最後の確認をする芝、総合工科、片倉の変則ダブル期待に応えた芝・田中総悟君

 東京都心の閑静な住宅街と言ってもいい、都立総合工科に芝と都立片倉が終結しての変則ダブルが組まれた。当初は、芝と都立総合工科という予定だったのが、都立片倉が予定していた今日の相手流通経済大柏が全国高校サッカーの千葉大会決勝となり全校応援ということで、野球部もサッカー部の応援に動員されて試合が出来なくなったということで、都立片倉は急遽、組み込んでもらったということだった。

 芝は、先週の試合での状態がよくなかったということで、田中央監督は一旦突き放して、「この日の試合のために、自分たちで考えてどのように向っていったらいいのか、それを見せてほしい」という宿題を与えていた。選手たちにとっては、その答え合わせというか、発表の場となった試合でもある。

 グラウンドの狭い芝の場合は、都立総合工科のようなグラウンドのしっかりとした学校との試合の場合は、特に試合前のシートノックも大事にしているという。ところが、この日のシートノックは、もう一つ内容的にはよくなかった。そんなこともあり、試合前から田中監督は、選手たちに再度徹底してキャッチボールを課すなどで意識をしっかりと引き締めていた。

 それがよかったのか、都立総合工科との試合はロースコアの守り合いで、テンポもよく、いいリズムの試合となった。先発マウンドを任された田中総悟君は、丁寧な投球で都立総合工科打線をしっかりと押さえていた。また、都立片倉戦では平田倫太郎君も最後は疲れもあって掴まってしまったものの、8回までは粘りの投球で、踏ん張っていた。

 選手個々の力ということで言えば、都立総合工科や都立片倉の方が優っていると言えそうだが、芝の選手たちは、今の自分たちの中での精一杯のプレーを示していこうという姿勢だった。ことに、この日はバッテリーがよく踏ん張っていた。2試合ともマスクをかぶった大野君は、1年生ながら動きも素早く走者のリードが大きいと積極的にけん制球も投げていくなど、攻めて行く姿勢を示した。それが、リードにも表れていて、投手経験がまだ少ないという平田君に対しても積極的なリードだった。

 中高一貫教育の芝は全員が芝中からの持ち上がりである。だから、選手たちはお互いによく知っている。 「正直、ここまであまり叱られたことなんかはなく育ってきた子たちがほとんどです。みんな良い子で、それはそれでいいのですけれども、せっかく部活として野球をやっている以上、厳しいところを自分で乗り越えていくということを実感してほしい。中学〜高校として6年間野球をやってきた、その集大成としての3年の夏を迎えるのだという、そういう思いをもっと持ってほしい。そして、そのためにも乗り越えていかなくてはいけないものがあるということを教えて行ってあげたいと思っています」

田中監督の要求は、日々の優等生たちに、敢えて野球に対して高い意識を求めるというところにあった。

総合工科・中村小次郎君

 会場校ながら、この秋は自校グラウンドでのブロック予選初戦で敗退して悔しい思いをした都立総合工科。 「試合内容としては、初回に2点先制しながら、その裏に4点。ほとんど自滅ですよ。普段やっているのと同じグラウンドなのに、なぜか固くなってしまって、投手も急にストライクが入らなくなってしまいましたからね」と、弘松恒夫監督は、秋の初戦を振り返る。技術やパワーもさることながら、メンタル面の強化も必要なことだと感じている。

 爆発力ということで言えば、都立片倉との試合では見事に力を発揮した。

 初回には4番石原君の犠飛と5番秋山君の一塁手の横を破っていく二塁打で2点を奪う。2回に同点とされたが、3回にも秋山君の右前打で突き放す。しかし、都立片倉も5番上田君が前日の杜若(愛知)の試合に続いて、2日連続の本塁打を放って再度同点。

 点の取り合いとなった試合は、その裏に都立片倉の2人目左腕山下君が制球に苦しんで四球を連発したり暴投もあって、3点が入った。都立総合工科は6、7、8回にも1点ずつを加えて弘松監督としても、「いい展開の試合になった」と思えるほどのいい流れの試合で、都立片倉を振り切った。投手としても、ほぼ予定通りの継投で杉原君から伊藤 優希君〜中村小次郎君とつないでいった。また、投手交代をにらんで送り出した代打もきっちりと安打をするなど役を果たしていたのも、弘松監督としては思惑通りだったようだ。

 秋季東京都大会では修徳に快勝した都立片倉は、夏の西東京大会では國學院久我山や日野と言った強豪を下してベスと8入りしたが、そのメンバーにも入っていた投手の室津泰介君とシュアな打撃でチーム一のセンスの持ち主と言われている柳本 康希君が故障で試合に出られないという状態でもあるが、そんな中でチャンスを貰った選手たちがそれぞれの役を果たしている。このところ打撃好調の上田君や根津君、結城君と言ったところも進境著しい。

 宮本秀樹監督も、「層は厚くなっていると思うね。打つということだけで言えば、上位と下位に差がなく、前のチームよりも、もっと打てるかもしれない」と、近年すっかり都立の上位校となった都立片倉だが、そんな中でも、今年のチームには手ごたえを感じている。室津君がいない間に投手としても、スライダーのいい高津君や右サイドハンド気味の牧君、左腕でカーブの大きい山下君や大西君と言ったところも台頭してきた。「これで、高津と柳本が戻ってきたら、楽しみではあるんだけれどもね」と、宮本監督としては早くも来シーズンへ向けての構想も広がっていっているようだ。

 

(取材・写真=手束 仁)