日本時間の６月８日深夜に行なわれたスイス戦で、日本は０対２で敗れた。5月30日のガーナ戦に続いてＰＫで先行され、同点に追いつく気配も漂わないまま追加点を許す。終盤も反発力を見せることはできず、ほとんどいいところなく終了のホイッスルを聞いた。

　南アフリカＷ杯の直前も、テストマッチでまったく振るわなかった。状況は８年前に似ており、それがいまの拠りどころになっているが、触れられてない当時との違いがある。

　グループリーグの初戦で日本が下したカメルーンは、２大会ぶりの出場だった。ほとんどの選手は初めてのＷ杯で、ベテランのリゴベル・ソングらが日本戦のスタメンから外されたことに不満を抱いていた。Ｗ杯での経験が乏しいうえに、フランス人のポール・ルグェエン監督と選手の間には、試合前から溝があったのである。

　６月19日に対戦するコロンビアは違う。

　８年前のカメルーン戦では、サミュエル・エトーを抑えることに集中すればよかった。しかし、ロシアＷ杯のコロンビアは４年前にベスト８入りしており、当時を知るメンバーが数多く残っている。チームとしての経験値は、カメルーンを上回る。警戒すべき選手もひとりではなく、交代のカードもバリエーション豊富だ。

　アルゼンチン人指揮官ホセ・ペケルマンは、12年から采配をふるっている。選手とは双方向のコミュニケーションが成立する関係で、Ｗ杯で采配をふるうのは今回が３度目だ。振り返ればスキの多かった10年のカメルーンとは、比較にならないほど完成度が高いのである。スイス戦のようなパフォーマンスでは、対抗できないだろう。
　
　修正すべき点は多い。とりわけ、崩しの形が見えていない攻撃は深刻だ。

　しかも、12日のパラグアイ戦はバックアップメンバーの起用が予想されており、レギュラーメンバーで戦うのはスイス戦が最後になる。そもそも、誰がレギュラーなのかも、いまひとつはっきりしていないが……。

　スイス戦の試合後のテレビインタビューで、西野監督は「形は作れている。（アタッキング）サードまでは侵入できているが、スイスもセンターは非常に強いので、何か変化がないと崩れない気がした」と話した。指揮官の言う変化を「意外性」や「大胆さ」に置き換えると、日本がなぜスイスに敗れたのかが浮き彫りになる。

　スイスが前半に獲得したＰＫは、２列目左サイドのエムボロの仕掛けによるものだった。ひるがえって、日本の２列目はどうたったか。先発した原口元気も、宇佐美貴史も、後半途中から出場した乾貴士も、マッチアップするＤＦに圧力をかけられなかった。仕掛けの回数が、絶対的に少なかったのだ。

　２点目はアシストがポイントだ。日本のＣＫからカウンターを仕掛けたスイスは、左サイドバックのムバンジェがゴール前へ飛び出していった。吉田麻也、槙野智章の帰陣よりも早くポジションを取り、左サイドからのクロスをフリーヘッドで中央へ折り返した。

　スイスが見せたような変化は、選手の意識によるところが大きい。失点の気配と得点の香りをかぎ分けて、勝負どころを見極めていくのだ。

　同時に、ゲームの途中から変化をつけるカードがほしい。スーパーサブとかジョーカーと呼ばれる選手である。それが誰になるのか。12日のパラグアイ戦で、チームに活気をもたらす選手の登場が望まれるが……。

　試合中の変化については、西野監督の采配も見逃せない。ガーナ戦とスイス戦は、選手のコンディション確認に主眼を置いた交代だった。試合の流れを変えるためのカードは、まだ切っていない。

　課題山積のまま、コロンビア戦が近づいている。