横浜隼人vs立花学園
サヨナラのホームを窺う横浜隼人・速水君
この日は、夜来の雨が残って、グラウンド整備に時間をかけて、サイドノックのみで20分遅れのプレーボールとなった。関東地区では進行の早い神奈川県大会は、早くもベスト16の激突となった。参加校も多い激戦区だけに、新チームとしては力のある各校のぶつかり合いとなる。そんな中での試合だが、ミスもあったが見ごたえのある好試合となった。
序盤はまず、お互いが点を取り合った。横浜隼人は先頭の永嶺君が右中間三塁打で出ると、これを三番秋元君が右前打で帰してあっさりと先制。しかし立花学園もすぐに、2回に5番日暮君が左越二塁打すると、続く小山君が右前打で帰してたちまち同点。さらに立花学園は3回に、二死走者なしから横浜隼人の鴨田君に対して宮代君、金井君、日暮君とクリーンアップの3連打で逆転。ここで横浜隼人ベンチは鴨田君を諦めて左腕の鈴木翔也君につないだ。早い切り替えだったが、横浜隼人の水谷哲也監督は、「今年はこれという投手がいるわけではありませんから何人もベンチに入っています。だから、2点取られたら交代ということをルールで決めているんです。だから、ここの交代はそのルールに従っただけのことです」ということで、左腕鈴木翔也君を投入した。
鈴木君は小山君にタイムリーされて立花学園はさらに1点を追加した。それでも、横浜隼人もその裏、二死走者なしから永嶺君の二塁打と下原君の三遊間を破るタイムリー打で1点差とした。
こうして序盤は細かく点を取り合う展開となった。ただ、試合の流れは、好機を作りかけながら潰していく横浜隼人利は立花学園に傾いているかなという印象だった。横浜隼人は、6回には二死二塁から白井君が左前打して同点かと思われたが、立花学園の小山君の好返球もあって本塁憤死。7回も盗塁失敗など、もう一つ攻めきれないという印象だった。
8回に1点を追加し生還した金井君を迎えて盛り上がった立花学園ベンチだったが…
これに対して立花学園は、8回二死一三塁から、7番上野君の右前打で内野安打で出塁していた二塁走者の金井君を帰して試合展開からすれば、ダメ押しともいえそうな1点を追加した。さらに、その裏も横浜隼人は二死満塁で4番白井君を迎えつつもあと一本が出なかった。
そんな劣勢な横浜隼人だったが、9回には途中出場で5番に入っていた戸井君が左前打すると続く横瀬君が死球で一二塁。村瀬君は倒れたが、速水君も四球で一死満塁。こうなると横浜隼人の応援席も盛り上がってくるが、ここでこの試合16人目の選手となる代打古舘君が左犠飛で1点差。二死一二塁から、当たっている永嶺君はしっかりとジャストミートして中前へはじき返して同点。なおも二三塁で押せ押せの横浜隼人は、続く下原君は遊撃手の頭上を越える打球でこれがサヨナラ打となった。
投手も4人をつぎ込んでいて、まさに総力戦となった横浜隼人だったが、水谷 哲也監督は、「こういう形でやっていくしかありませんから、総力戦はいつものことです」と、想定内の展開だったようだ。「9回は先頭がよく打ってくれました。普段通りにやれたかどうかということなんですが、ウチはリードされていても普段通りにやることができました。それが、向こうの近松君は、先頭に打たれたことで普通通りではなくなったんだと思います。それで相手にプレッシャーをかけていくことができました。それが、サヨナラになったんでしょう。負けたら、また練習して次のステージを目指せばいいんです。いつも、そういう気持ちでやっていますから…、その積み重ねがこういう結果になったのだと思います」と、話してくれた水谷監督だった。
これで、横浜隼人は9季連続のベスト8進出となった。激戦神奈川でこの実績は、それはそれで立派と言っていいだろう。水谷監督は、それも含めて普段通りの野球を強調していた。
（文＝手束 仁）
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