大阪偕星学園vs泉大津
橋本大輔（大阪偕星学園）
初回に1点を先制した大阪偕星学園は2回に相手守備の乱れもあり打者11人を送り込む長い攻撃で大量6点を追加。先発・鮫嶋 智紀（2年）が安定感あるピッチングで3回を四死球2無安打無得点に抑える好投を見せるとその裏には鮫嶋の代打・川越 翔太（1年）、山田 遼太郎（2年）の連打でチャンスを作り、宇佐美 真太（1年）の適時打などで畳み掛けさらに4点を挙げた。
フライの追い方がおぼつかないなど守備に不安を抱える泉大津だが、4回には妻鹿 俊介（1年）、吉田 率立（1年）の連打で走者をためると宮本 健（1年）が三塁線へバントヒット。一塁送球の間に妻鹿が三塁も蹴ってホームを狙うがこれはさすがにタッチアウト。それでも二死一、二塁から行竹颯太（2年）がレフト前に運び1点を返す。4連打で見せ場を作ったがその裏、大阪偕星学園の山田が足で魅せる。
無死一塁から鋭い打球がセンター右を越えると、快速を飛ばしダイヤモンドを1周。ランニングの2点本塁打となった。大阪偕星学園の体育祭で行われる部活対抗リレーでは毎年野球部がトップだが、個人戦でも山田が活躍した。体育の時間に計測したタイムを基に全校から俊足自慢が集う短距離走で予選、準決勝、決勝の全てで1位を取り優勝。上級生の3年生を含めても山田が最速スプリンターとなった。
この2点でダメを押した大阪偕星学園は13得点で5回コールド勝ち。大量リードを奪ってからは鮫嶋の後に2投手を登板させ、野手でも多くの2桁背番号をつけた選手が公式戦のグラウンドに立った。試合後すぐに大阪偕星学園が球場を出るのはいつものこと。帰ってから練習するためだ。しかし、この日は少し違った。午前9時からの公式戦を戦った後、午後からは練習試合を行う。しかもダブルヘッダーで控え選手ではなくAチームで挑むという。これは猛練習が代名詞の大阪偕星学園にとっても初のこと。そして実はこれ以外にも初の試みがあった。
この夏、1週間の日程で北海道に行き合宿を行った。冬開けに温暖な地域で合宿を行う学校はあるが、夏に寒冷地に飛ぶというのはおそらく異例。熱中症対策が大きな目的だった。8月とはいえ北海道の朝晩は少し寒さを感じるほどで、朝は連日25kmのランニングからスタートし夕方にも走り込み、食事もトレーニングの一環というみっちり野球漬けの日々を過ごした。食べて鍛えてのハードメニューをこなし、わずか1週間で体は一回りたくましくなった。華麗なグラブ捌きよりも体に当てて止める、多少形が不細工でも深夜までマシン相手に延々転がしたバントを試合で決めるといった昭和の香りのする野球が大阪偕星学園の野球。雑草軍団が甲子園で花開かせることは出来るか。
毎年が勝負の高校野球だが山本�心篤弔虜Ｇ�に懸ける意気込みは強い。「大阪桐蔭と4回戦で当たりますし、そこに照準絞ってやってるので、そこまでにこけないようにして、何とか一矢報いて勢いつけて甲子園行きたいですね」昨夏の大阪を制し聖地の土を踏んだ大阪偕星学園、この時が春夏通じて初の甲子園出場だった。昨夏に続く歓喜の瞬間を目指して、まずは初戦を突破した。
（文・写真＝小中 翔太）
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