龍谷大平安vs明徳義塾
1対7の結果に明徳義塾・馬淵史郎監督は「一言でいえば完敗」と肩を落とした。逆に快勝したはずの龍谷大平安・原田英彦監督も試合後はほとんど笑顔がない。試合中にほほ笑んだのも、岡田 悠希(2年)が放ったセンターへの衝撃的な一発の時くらいだった。
両指揮官の表情の原因ははっきりしている。双方ともに攻守にミスが多かったからだ。まだまだチームが熟成しきっていない春ならではの試合展開で、シビれるような采配合戦とはならなかった。
勝負のポイントにはならなかったが、7回表に龍谷大平安が6点目を挙げた場面に、野球で時折忘れがちになるインプレー中の意識という重要性が目についたので、取り上げてみたい。
一死二塁から龍谷大平安は6番・市岡 奏馬(3年)がレフトへ抜けるヒットを放った。二塁走者の橋本 和樹(3年)が本塁を狙うが、明徳義塾のレフト・西村 舜(3年)はアウトにできるタイミングの返球をした。しかし、やや逸れて間一髪セーフになり龍谷大平安に6点目が入った。問題はこの直後である。捕球したキャッチャー・古賀 優大(3年)は悔しさのあまりインプレー中にも関わらず、ホームベースに背を向けてバックネットの方を見てしまった。しかし送球間に二塁まで到達した市岡は、古賀が自分とは反対方向を見ているのに気が付かず、フットガードなどを外すためのいつもとるタイムを塁審につげてしまった。守備側が犯したミスを、攻撃側が助けてしまった瞬間だ。
試合後に原田監督に質問をするとそのことに気づいていたようで、「付け入る隙はありました。そういう部分はまだこのチームにない。それをこの(甲子園)球場で覚えていかないといけないと思います」と話した。
この場面、市岡が仮に三塁へ走ったとしても、セーフになる確率は限りなく低い。しかしインプレー中であることが頭に入っていれば、次の塁を狙う姿勢を見せるだけでも後々に相手への大きなプレッシャーに繋がるかもしれない。逆に古賀も悔しい気持ちはわかるが、打たれた打者がアウトになっていない、つまりインプレーである以上は走者として次の塁を狙ってくることを忘れてはいけない。
原田監督は、「準備」という言葉も使った。常に複数のパターンがある次をイメージして準備する。タイムはプレーが完全に終わってから取っても遅くはない。
全国の球児には、この場面を一度頭の中で想像しながら、自分には何ができるのかを考えてみてほしい。
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