釜石vs小豆島
1時間32分のスピーディーゲーム。小豆島・長谷川 大矩(3年)と釜石・岩間 大(3年)による投げ合いに観衆は魅了された。振り返れば3年前の遠軽vsいわき海星も今回と同じ2日目第1試合で1時間16分の短い試合。まだ実現は2例しかないが、21世紀枠同士が対戦すると、スピーディーかつ得点が少ないロースコアの接戦になりやすいのではないだろうか。今後も21世紀枠同士の試合がどんどんあってほしい。
さて、この試合のポイントに3回裏の釜石が挙げた先制打の直前のある場面を挙げたい。この回先頭の8番・大尻 悠矢(2年)がヒットで出塁し、ボークで二塁へ。9番・石崎 仁鵬(3年)の送りバントで三塁まで進んだ。続く1番・佐々木 航太(2年)が初球でスクイズを仕掛けた。結果はファウルとなったが、小豆島の長谷川とキャッチャー・植松 裕貴(3年)のバッテリー、それに守備陣は意表を突かれたように見えた。しかし、試合後の植松に話を聞くとそうではなく、むしろ主導権はバッテリー側にあったことを明かしてくれた。
「長谷川は左ピッチャーで三塁ランナーは見えないが、足音などで走ってきたというのがわかるんです。初球で左バッター(佐々木航)がスクイズしてきて、僕はアウトコースに構えていたのですが、長谷川が走ってきたのをわかって、インコースにピュッと上に浮くボールを投げてきた。僕自身、あれはファウルになったのではなく、長谷川がファウルにさせたのだと思っています」。
意表を突かれたスクイズでないとするならば守備側は、もう一度スクイズをやってくるかもという不安よりも、やってきても大丈夫という心理状態になる。結果的に佐々木航にタイムリーを浴び、これが決勝点となってしまったが、それよりも3回という浅いイニングで最少失点に抑えたことの方が大きかった。
取材する側の読みを遥かに超えた選手の見解に驚かされた瞬間だった。
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