実践学園・佐々木雄也が15奪三振!10人の都立大泉も最後に粘りを見せる

先発・佐々木雄也(実践学園)

 東東京の有力校・実践学園が終始リードしていたが、安田学園からの派遣選手を入れて10人で臨んだ都立大泉が健闘を見せ接戦となった試合を振り返る。

 実践学園は3回表、一死満塁から併殺崩れで1点を先制。だが3回裏、二死から9番の三塁打、1番の内野安打で同点に追いつくが、4回表、一死満塁から押し出し四球、3番の坂本の2点適時打で4対1と点差を広げる。 6回表、無死満塁から2番神が右中間を破る適時三塁打で二者生還し、6対1となる。

 実践学園は先発の佐々木 雄也(2年)が好投。佐々木はまだこれからの投手だが、手足が長い投手体型で、180センチ76キロと上背があり、将来的には右の本格派に化ける可能性を秘めている。

 ノーワインドアップから始動し、ゆったりと左足を上げた後、右足の膝を適度に曲げてバランス良く立ち、ステップ幅が狭いフォームから一気に振り下ろす独特なフォーム。まだ130キロ半ばぐらいだが、さらに速くなる可能性を秘めており、そしてカーブ、スライダー、フォークのキレが良い。特に曲りの大きいカーブを武器にしているのか、要所、要所で決まっていた。本人が自信にしているのはスライダーで、確かに意図通りに投げるコントロールの良さがあった。その精度の高さは都大会に進む投手と比較しても高いものがあり、立ち上がりから2三振を奪うなど、順調に三振を積み上げていった。

 もともと佐々木は変化球を器用に投げるタイプで、ストレートに課題を抱えていた投手であった。この冬は変化球をさらに生かせる投球ができるようにストレートで押せる投手になることを心掛け、磨き上げてきた。ストレートの調子は良く、立ち上がりから奪三振ラッシュ。特に良かったのは、7回裏の攻めだ。まず6番小林には、最初、変化球を見せながら、外角ストレートで空振り三振、また7番木下は追い込んでからインコースをズバッと三振。8回裏にはストレート、変化球をうまく投げ分け、2奪三振とメリハリがついた投球ができていた。投球を重ねる中で、自分の攻めを確立することができていた。その点は率いる沢里優監督も評価。また佐々木自体も、「ストレートが狙われていましたが、うまく変化球を混ぜて打ち取ることができました」と手応えを感じていた。

4番岡部選手(都立大泉)

しかし9回裏、内野ゴロやバッテリーミスなどで、2点を奪われ、さらに9番高橋の適時二塁打で計3点を失ったが、後続を締めて、6対4で勝利した。「最後、慌ててしまいましたね」と沢里監督が振り返るように佐々木も、「変化球が甘く入ってしまい、しっかりと捉えられてしまいました。まだストレートも、変化球も本調子ではないですが、次の代表決定戦では粘り強く投げていきたいと思います」とこの試合の反省をしながらも、次の試合へ向けて切り替えていた。それでも15奪三振完投勝利。1つ1つのボールの質は高いものがあり、まだ2年生ということを考えるとさらに上積みが期待できるだろう。

 敗れた都立大泉は練習試合するなど親交がある安田学園から部員を借りて出場をしている。合同で練習するようになったのは2月から。選手たちはほぼ毎日、都立大泉のグラウンドへ訪れて練習をしていたようだ。日体大出身で、辻孟彦投手(元中日、現日体大野球部コーチ)の1学年上の斎藤恭兵監督は「いつも来ていただいて感謝しております。今日は課題である中盤の試合運びというところで点数を取られてしまいましたが終盤で粘り強さを出してくれました」と後半の戦いぶりを評価。

 そして試合後、都立大泉の選手と安田学園の選手たちが抱き合ってお互いの健闘を称えていた。都立大泉の選手は目を潤ませる姿を見て、少ない期間の中でも彼らは深い絆を築いていたのを感じた。

(取材・写真=河嶋 宗一)

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