都立農業・都立立川国際vs聖学院
勝ち越しタイムリーにこの表情(松野下・都立立川国際)
日大二高立川グラウンドで行われた第11ブロック1回戦、第2試合は都立農業・都立立川国際の合同チームと聖学院の対戦。第1試合同様、こちらも逆転劇が起こった。
その主役はこの日「持ってる男」として会場を沸かせた都立立川国際中等教育学校の松野下 純太。「普段そこまで打たない選手なんですが、それだけに盛り上がりましたね」と平野監督が振り返るように、彼の一打からチームが変わっていった。都立農業・都立立川国際としては初回2点の先制を許し、自分たちはその裏、四死球を3つもらいバントも成功させたのに無得点と嫌な雰囲気の立ち上がりを迎えていた。2回表、先発の矢部がゼロで抑えたその裏、ランナーを出すも牽制でアウトになるなどし、さらにチームは暗くなりかける。この二死走者なしの状況で、打席に立った松野下は思い切りよくバットを振りぬき、左中間を破る三塁打を放つ。この後、聖学院のバッテリーエラーで本塁にヘッドスライディングで還り、チームに気合を注入。さらに2点を奪われ3点のビハインドとなった4回には一死二、三塁のチャンスで打席に立つとライト前へぽとりと落とすタイムリー。聖学院に食らいつく姿勢を見せる。このラッキーといってもいいタイムリーに客席は、彼に勝利の女神が微笑みかけているのを確信。ベンチも明るさと勢いを増していく。
5回裏、都立農業・都立立川国際はヒットと四球で一死満塁のチャンスを作り出す。7番に入っている都立農業の小俣が四球を選び1点差。さらに8番・松元も四球を選び同点に追いつく。そしてここで、満を持して松野下。待ってましたの大歓声が沸き起こる。ここまで踏ん張り続けてきた聖学院先発・田澤にもさすがにプレッシャーがかかるが、それは松野下も同じ。だが松野下はそのプレッシャーを跳ね返し、センターへとはじき返す2点タイムリーで期待に応えた。
1番・荻原(聖学院)
聖学院1番・荻原も三塁打、二塁打、そして単打と活躍を見せ得点にも絡んだ。しかし初回の二塁打以来、ヒットを放つタイミングに「得点圏に走者がいるという場」を作れなかった。時の運、といえばそれまでだが、そうさせなかった都立農業・都立立川国際先発の矢部の頑張りは松野下の陰に隠れてしまう形となったかもしれないが、大きいものだった。
この日はバッティングで大活躍を見せた松野下だったが、普段は違う形でチームに貢献をしているという。常に明るく笑顔、声の絶えない都立立川国際中等教育学校にあって「誰よりも声を出していると自負しています!」と胸を張る。都立農業との合同チームだが、両校ともすでに息はぴったり。ベンチからの声は合同チームのものとは思えない一体感を感じさせた。その声が最後9回を締めた都立農業・佐藤の好投も生み出したと言っていいだろう。監督も認める「矢部の頑張りと松野下」。そして、チームの一体感。この合わせ技で3月20日にブロック代表決定戦に挑む。相手は好投手・小宗擁する武蔵だ。
(取材・写真=青木 有実子)
注目記事・2016年度 春季高校野球大会特集