Editor’s Eye

2016.02.14


©2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

映画『オデッセイ』
〜火星に一人、科学を武器に立ち向かうサヴァイバル・ドラマ〜

SF映画の金字塔『ブレードランナー』(1982年)をご存知だろうか? “惑星移住が可能となった未来”を舞台に、地球に潜入したレプリカント(人造人間)を、ハリソン・フォードが演じる捜査官・ブレードランナーが追う……という、サスペンス要素が盛り込まれた内容と卓越した近未来の描写に多くのファンを持つ作品だ。
今回ご紹介するのは、『ブレードランナー』の監督を務めたリドリー・スコットの最新作『オデッセイ』。第73回ゴールデン・グローブ賞でミュージカル・コメディ部門の作品賞と主演男優賞(マット・デイモン)を受賞し、2月28日に授賞式を控えている第88回アカデミー賞にもノミネートされている話題作のひとつ。
『エイリアン』『ブラック・レイン』『テルマ&ルイーズ』『ハンニバル』『アメリカン・ギャングスター』など、ジャンルを問わず数多くの作品を手掛けてきた奇才、リドリー・スコットの新作とはいかなるものか。

宇宙飛行士の運命を描いたサヴァイバル・ドラマ

コンピュータ・プログラマーから作家へと転身したアンディ・ウィアーの小説『火星の人』を原作に、海外TVシリーズの『エイリアス』『LOST』などを手掛けたドリュー・ゴダードが脚本を執筆した今作。5人の宇宙飛行士による火星でのミッション中、嵐に巻き込まれ、主人公・ワトニーだけが一人取り残され、ほとんど酸素無し、水、通信手段も無く、限られた食料しかない過酷な環境で生き延びようとする様を描いている。



地球までの距離=225,300,000km、次の探査船が火星に来るまで1,400日。普通の人間なら、この数字を見ただけで絶望的に感じるのが当たり前。しかし、主人公は、科学と得意分野の化学を駆使し、生きるためにあらゆることに挑戦する。食料のじゃがいもだって、食べきらずに栽培することを考え、水がなければ作るし、知恵と経験をフル活用! そのシーンを見ていて、「近い将来、火星への移住計画が本当になっても不思議ではないのかも」と思ったのは言うまでもない。宇宙探査を進めているNASAが全面協力したという点においても、テクノロジーや技術、セットはもちろん、内容にもリアリティが生まれ、“惑星移住が可能となる未来”を観ているような気持ちにさせてくれる。



ところで、サヴァイバル・ドラマであり、ヒューマン・ドラマの内容だというのに、第73回ゴールデン・グローブ賞でミュージカル・コメディ部門を受賞したのはなぜか? 一説では、競争の激しいドラマ部門を避けてミュージカル・コメディ部門へ押し込もうとするスタジオがあると言われている。実際、『オデッセイ』を観てコメディ要素が無いかというとNOだ。マット・デイモン演じるワトニーが、孤独の中、ビデオメッセージに記録を残すために発する言葉や行動、劇中に流れる音楽にユーモアを感じることができる。音楽においては、ディスコ・ミュージックの女王ドナ・サマーの「Hot Stuff」、先月この世を去ったデヴィッド・ボウイの「Starman」、グロリア・ゲイナーの「I Will Survive」といったナンバーが絶妙なシーンに使われているところにもセンスを感じた。

空想科学の映画には、夢があるから面白い!


リドリー・スコット監督のSF(サイエンス・フィクション=空想科学)の中には、男性ファンの多い『エイリアン』がある。広く未知なる宇宙に別の生物が存在してもおかしくないと想像する反面、エイリアンのヴィジュアルがおぞましく、本当に存在したら怖いし、対峙したら戦うどころか即失神するだろうと思う。その点、『オデッセイ』は人間に焦点をあて、空想のみならず、現代のテクノロジーや知識といった現実的な要素が盛り込まれた内容なので、女性も安心して鑑賞できる。SF映画の面白さは、映像を通して空想の世界やキャラクターを観ることができ、実際に体験できないことや未来への期待を味わわせてくれるところだ。ちなみに、今作は3Dの上映もしているが、『ゼログラビティ』(2013年)ほど、宇宙空間の映像は無いので2Dで充分に楽しめそうな気もする。イケメン俳優、マット・デイモンが大好き!という人は、3Dでより近くに感じて観るのもありかもしれません。

(Text:Sayaka Miyano

『オデッセイ』
大ヒット公開中
20世紀フォックス映画 配給
http://www.foxmovies-jp.com/odyssey/

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