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「ぶっ殺すぞ!」「なめとんのかわれぇ!」「ざけんじゃねえよ!」。そんな暴言を吐くクレーマーに悩まされるコールセンターの女性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿が寄せられた。

「様々なクレーマーに対応してきた」という百戦錬磨の女性だが、電話越しに恫喝されたり、粘着質な人に手を焼いているようだ。冒頭のような暴言クレーマーのほか、ひたすら揚げ足を取って電話を切らない粘着質な人もおり、対応するのに最長で5時間に及んだこともある。そんな経験から、次のような質問をしたいそうだ。

「『威力業務妨害』という言葉をよくききますが、電話でも成立するのでしょうか? また、恫喝で自分の意見を通そうとするようなクレーマーに、どう対応すればいいのでしょうか?」

企業法務にも詳しい池田伸之弁護士に話を聞いた。

●「クレーマー」に正当な理由があるケースも

まず「クレーマー」という言葉について、池田弁護士は、次のように解説する。

「一口にクレーマーといっても、すべてが問題になるわけではありません。どんなケースが問題かといえば、大きくわけて、2つあげられます。

(1)クレームに理由があっても、その主張方法が違法・不当(たとえば、脅迫、大声を上げるなど)という場合

(2)クレームの内容そのものに、理由がない場合

一方、クレームの内容に理由があり、その主張方法も問題がない場合は、適切に対応しなくてはいけません。

『クレーム』と一括りにせず、まずは、先入観を持たずに相手の話をよく聞いて、正確に相手の主張を把握する必要があります。

初めから『クレーマー』と決めつけた対応をすると、クレーマーでない人も、クレーマー化してしまう危険があります」

●悪質な場合は「脅迫罪」「強要罪」「恐喝罪」

では、相談者のケースではどうだろうか?

「『ぶっ殺すぞ!』など、自分や家族の生命、身体等に危害を加えるような内容の場合は、『脅迫罪』が成立します。

さらに、不当なことを要求すれば『強要罪』や『恐喝罪』が成立します。なお、現実に不当な要求に従わなくても、それぞれの未遂罪が成立します。

後日の立証のため、いつでも録音できる体制にしてください。また、相手にも録音していることは告げておきましょう。この録音に相手の了解を得る必要はありません。『建設的な話し合いをするために、後日やり取りに記憶違いが生じないよう会社の方針として録音します』と言い切りましょう。これにより、鎮静化することもあります」

●一番厄介なケースとは?

では、そのような電話がかかってきた際、録音をしたうえで、どんなやりとりをするのが望ましいのだろうか。

「直接的に危害を加えるということがなく、『なめとんのか』『ふざけんな』など、激高した口調でわめき散らして、中身のない電話をしてくる場合は、『電話を切ります』と告げたうえで、電話をいったん切るしかないでしょう。

その後も何度もかかってくる場合は、録音したり、かかってきた時刻や所要時間等を記録に残して、警察に相談してください。その間、電話回線をふさぎ、職員を張り付けにするわけですので、回数や所要時間、電話の内容や声の大きさなどによっては、『威力業務妨害罪』が成立する余地があります。

一番厄介なのは、クレームの内容自体は正当で、語り口も冷静ですが、その要求内容が過大であったり、コールセンターで対応できない内容(たとえば、再発防止のための計画書を書面で送れ等)の場合です。

このような場合は、刑事事件として警察が介入するのは難しく、会社のより上位の部局の担当者にゆだねるなどの対応が必要になってきます」

このように、コールセンターに勤務する人たちが、防御できる方策もあるようだ。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
池田 伸之(いけだ・のぶゆき)弁護士
愛知県弁護士会所属。離婚や交通事故を含む、広く民事の案件を取り扱っています。中でも、企業法務、会社個人の事業再生・倒産事件、相続遺言問題、知的財産権侵害事件、医療過誤事件等を重点的に取り扱っています。クレーム対応では、調剤薬局、ドラッグストア、学校現場(父母対応)での相談を多数担当。

事務所名:池田総合特許法律事務所
事務所URL:http://www.ikeda-lawpatent.jp