自殺対策を国や自治体の責務と定めた「自殺防止対策基本法案」が今国会で成立する見通しとなった。日本の自殺者数は先進国では突出しており、法制化により官民が連携して総合的な対策の推進を目指す。

 1日発表された警察庁のまとめでは、日本の自殺者は8年連続で3万人を超えた。自民党は同日開いた内閣、厚生労働の合同部会で法案を了承。民主、共産、社民の各党はすでに党内で了承済みで、公明党も了承する方向で検討している。

 法案では自殺について、個人だけの問題ではなく社会に関わる課題だと指摘、社会的な問題だと位置付けた。自殺対策では、国と自治体に(1)調査研究(2)自殺防止知識の普及啓発(3)人材育成(4)未遂者や遺族、民間団体への支援─を要求。さらに、これまで個々に活動をしていた国、自治体、企業、民間団体、学校など各種団体の連携を図るよう求めている。

 政府は05年12月、10年間で7000人程度の自殺者の削減を目指すとする自殺予防の総合対策を発表したが、法的根拠がなかった。法案では対策の実効性をあげるため、政府内に関係閣僚会議の設置し、毎年、国会に自殺防止対策の実施業況に関する報告書の提出も義務付けた。

 自殺防止対策を巡っては、05年5月にNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京都)が開催したシンポジウムに尾辻秀久厚労相(当時)が出席。同年7月には参院厚生労働委員会が「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」を全会一致で採択した。その後、ライフリンクなどが中心となって法制化を求める署名活動を展開し、尾辻氏などが中心となり超党派で取り組んでいた。【了】

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