中国共産党中央組織部の関係者は3日までに、同党内モンゴル委員会の王素毅統一戦線部長を、重大な紀律違反の疑いで解任したことを明らかにした。高級幹部としての全ての職位から解任したという。中国新聞社などが報じた。 王前部長は1961年6月生まれ。中国語名を用いているが、モンゴル族。出身は内モンゴル自治区のトムド左旗(トムド・ジョーン・ホショー)。1986年に中国共産党入党。自治区政府の所在地であるフフホト(呼和浩特市)の副市長やバヤンノール市市長、共産党同市委員会書記などを務めた。10年6月には共産党内モンゴル自治区委員会常務委員、統一戦線部長に就任した。

 中国では6月4日に安徽省の倪発科元副省長が、同月23日には四川省の文学芸術家協会の郭永祥主席が、紀律違反の疑いで取り調べを受けていることが明らかになった。郭主席は同省委員会常務委員や副省長を務めた経歴がある。

 王前部長の“失脚”については6月下旬から情報が流れていたが、中国共産党中央の関係者が、改めて認めたことになる。

 王前部長については、「2人いた愛人が当局に告発した」、「不正に得た金を親族にばらまいていた」、「幼女暴行をした」などの噂が出ているが、明らかにはなっていない。

 2012年秋の中国共産党大会以来、不正の疑いによる幹部摘発が続いているが、「これまでに明るみにでたのはハエ、次に虎(大物)の摘発があるのでは」との見方が出ている。

 また、腐敗の摘発が強化されている背景には、中国共産党上層部における権力争いの激化があるとの説も根強い。

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◆解説◆

 中国国内では、中国語名を名乗るモンゴル族も珍しくない。特に、漢族が比較的多い地域では、中国語名の方が便利との意識もみられる。また、少数民族の人々は、中国国内で普遍的に用いられる言語が中国語であるため、母語よりも中国語の方が“スタンダード”との感覚を持つ場合もある。そのため、人名など固有名詞を外国人に紹介する場合、特に意識せずに「中国語風の発音」をわざわざ用いることがある。

 中国では戸籍に「民族名」が登録されるが父母や祖父母などが複数の民族にまたがる場合は、本人の意思で民族を選択することができる。少数民族には出産制限や大学入学などで優遇策があるので、漢族と少数民族を父母などに持つ人の場合、少数民族戸籍を選ぶ例が増えている。

 ただし、少数民族籍を選んでも、中国語しか理解できず、少数民族の伝統的文化にもなじみのない「少数民族」が急増したことで、民族意識の強い“生粋”の少数民族の人は「民族人口の水増し。かえって民族の伝統が損なわれる」と危機感を持つ場合がある。(編集担当:如月隼人)