【全文掲載】選手の海外移籍を「流出」ではなく「輩出」に帰結させるメキシコ【小澤一郎】
■年代別代表の国際経験が豊かなメキシコ
前半いい流れで攻め込みながらも得点することができず、後半に入るとペースを握られハビエル・エルナンデスの2得点で勝負を決められたコンフェデ杯のメキシコ戦。
大会前のメキシコ代表は、W杯予選北中米・カリブ海最終予選を6試合戦い1勝5分けと勝ち切れないチームで、メキシコ戦前に強豪クルス・アスルの下部組織でコーチを務める日本人指導者の西村亮太氏によれば「メディアも厳しい論調で、監督を解任しろ、エースの“チチャリート”(=ハビエル・エルナンデス)を切れ」といった厳しい批判にさらされていたという。
日本では、グループリーグ敗退決定後の“消化試合”ということもあってメキシコ戦の注目度自体が低く、試合後の総括も少なかった印象を受ける。しかし、個人的には日本よりも早い段階で「世界(W杯ベスト8)の壁」にぶち当たり、欧州にも南米にも属さないある種の“地の不利”を認識した上で国際経験を積ませる代表強化策、育成重視のサッカー環境・システムを構築したメキシコサッカーには強いシンパシーを感じる。
JFAアカデミー福島の一期生で現在モナルカス・モレリアU-20に所属するMF佐藤令治も、「まずはリーグ戦でU-17、U-20のワールドカップに合わせてU-17とU-20のリーグを作っていること。年代別代表の国際試合の数の多さ」とメキシコが育成に長ける理由を2つ挙げる。
西村氏によると昨季は採用されなかったようだが、メキシコリーグには「20歳11カ月以下の選手を前期、後期それぞれで累計1000分以上起用させなければいけない」というレギュレーションが存在する。また、トップチームに直結するピラミッドにおいてはU-17のチームから選手とプロ契約を結び、U-17、U-20の各チームはトップと同じ18クラブによる国内リーグ(前期17試合、後期17試合)を戦う。
トップチームがアウエーゲームを戦う時には同じくU-17やU-20のチームも同じ対戦相手のU-17、U-20と対戦するため、トップと共に遠征をし、U-20のリーグになるとトップが試合をするスタジアムで前座ゲームを行うことも多いのだという。
■U-17の選手はほとんどクラブでプレーしていない
国際経験の多さについて西村氏は、「国内リーグの選手年俸が高く、加えてメキシコの保守的かつ内弁慶な国民性が関係している」と説明する。代表クラスの選手になると年俸が2〜3億円にもなるというメキシコリーグにおいて、スター選手は海外への強い憧れを抱かない傾向にあった。
強豪クラブになればクラブハウスは充実し、国内におけるサッカー選手のステイタスも非常に高いため、メキシコ人選手は総体的に無理をしてまで海外挑戦しようとしてこなかった。
だからこそ、メキシコサッカー協会は早い段階から年代別代表を積極的に海外に送り出し、国際経験を積ませるような方針を採用した。年代別代表の選手はリーグ戦よりも代表重視の年間スケジュールで、昨季佐藤と同じチームでプレーしていたU-17メキシコ代表の選手は「ほとんどクラブでプレーしていない」と明かす。
そうしたアクションが実を結ぶ形で、サッカー選手においては内弁慶なメンタリティが変わりつつある。実際、コンフェデ杯初戦のイタリア戦のメキシコ代表の先発11名のうち5名が海外組で、「もう一つ上のレベルに行くためにも欧州に行かなくてはいけない」という意識が今のメキシコ人選手の主流となっている。
モナルカス・モレリアU-20で佐藤と一緒にプレーする若手メキシコ人選手たちも口々に「欧州でプレーしたい」と発言しており、若手選手における海外志向の高まりは顕著だ。
■国内リーグの活況が欧州への「輩出」に結びつく
メキシコ人選手の海外移籍ということで見れば、こんな面白い事例もある。金メダルを獲得したロンドン五輪世代の出世頭の一人であるMFハビエル・アキーノは、今年の1月にスペインのビジャレアルに移籍。
前半いい流れで攻め込みながらも得点することができず、後半に入るとペースを握られハビエル・エルナンデスの2得点で勝負を決められたコンフェデ杯のメキシコ戦。
大会前のメキシコ代表は、W杯予選北中米・カリブ海最終予選を6試合戦い1勝5分けと勝ち切れないチームで、メキシコ戦前に強豪クルス・アスルの下部組織でコーチを務める日本人指導者の西村亮太氏によれば「メディアも厳しい論調で、監督を解任しろ、エースの“チチャリート”(=ハビエル・エルナンデス)を切れ」といった厳しい批判にさらされていたという。
JFAアカデミー福島の一期生で現在モナルカス・モレリアU-20に所属するMF佐藤令治も、「まずはリーグ戦でU-17、U-20のワールドカップに合わせてU-17とU-20のリーグを作っていること。年代別代表の国際試合の数の多さ」とメキシコが育成に長ける理由を2つ挙げる。
西村氏によると昨季は採用されなかったようだが、メキシコリーグには「20歳11カ月以下の選手を前期、後期それぞれで累計1000分以上起用させなければいけない」というレギュレーションが存在する。また、トップチームに直結するピラミッドにおいてはU-17のチームから選手とプロ契約を結び、U-17、U-20の各チームはトップと同じ18クラブによる国内リーグ(前期17試合、後期17試合)を戦う。
トップチームがアウエーゲームを戦う時には同じくU-17やU-20のチームも同じ対戦相手のU-17、U-20と対戦するため、トップと共に遠征をし、U-20のリーグになるとトップが試合をするスタジアムで前座ゲームを行うことも多いのだという。
■U-17の選手はほとんどクラブでプレーしていない
国際経験の多さについて西村氏は、「国内リーグの選手年俸が高く、加えてメキシコの保守的かつ内弁慶な国民性が関係している」と説明する。代表クラスの選手になると年俸が2〜3億円にもなるというメキシコリーグにおいて、スター選手は海外への強い憧れを抱かない傾向にあった。
強豪クラブになればクラブハウスは充実し、国内におけるサッカー選手のステイタスも非常に高いため、メキシコ人選手は総体的に無理をしてまで海外挑戦しようとしてこなかった。
だからこそ、メキシコサッカー協会は早い段階から年代別代表を積極的に海外に送り出し、国際経験を積ませるような方針を採用した。年代別代表の選手はリーグ戦よりも代表重視の年間スケジュールで、昨季佐藤と同じチームでプレーしていたU-17メキシコ代表の選手は「ほとんどクラブでプレーしていない」と明かす。
そうしたアクションが実を結ぶ形で、サッカー選手においては内弁慶なメンタリティが変わりつつある。実際、コンフェデ杯初戦のイタリア戦のメキシコ代表の先発11名のうち5名が海外組で、「もう一つ上のレベルに行くためにも欧州に行かなくてはいけない」という意識が今のメキシコ人選手の主流となっている。
モナルカス・モレリアU-20で佐藤と一緒にプレーする若手メキシコ人選手たちも口々に「欧州でプレーしたい」と発言しており、若手選手における海外志向の高まりは顕著だ。
■国内リーグの活況が欧州への「輩出」に結びつく
メキシコ人選手の海外移籍ということで見れば、こんな面白い事例もある。金メダルを獲得したロンドン五輪世代の出世頭の一人であるMFハビエル・アキーノは、今年の1月にスペインのビジャレアルに移籍。