昨季のビジャレアルは、2部所属でその時点では1部昇格が危うい順位をさまよっていたが、アキーノ側は「2012-13シーズンで1部昇格とならなかった場合は、シーズンオフに1部クラブへの（期限付き）移籍を認める」という条件をビジャレアル側に飲ませている。裏を返せば、高いレベルでのプレーに対する欲求が強い選手で、だからこそ難しいシーズン半ばの欧州移籍に踏み切ったと言える。

エースのハビエル・エルナンデス（マンチェスター・ユナイテッド）を筆頭に、CBのエクトル・モレノ（エスパニョール）、MFグアルダード（バレンシア）など国内リーグのレギュレーションによって20歳以下でトップの試合に出場し、活躍することで欧州クラブから目をつけられ、数億円の移籍金を残して欧州移籍した選手も増えており、こうしたメキシコ人選手の移籍事例を見ると「若いタレントだからこそ高値がつく」という移籍市場における値段設定のルールを再認識させられる。

いずれにせよ、国内リーグが活況で代表強化のための育成や国際経験が考え抜かれているメキシコにおいては、国内リーグの空洞化やレベルダウンが叫ばれておらず、選手の海外（欧州）移籍を「流出」ではなく「輩出」に帰結させている。

■著者プロフィール
小澤　一郎
1977年、京都市生まれ。サッカージャーナリスト。スペイン在住歴5年を経て、2010年3月に帰国。スポナビ、footballista、サッカークリニック、サッカー批評、サッカー小僧、ジュニアサッカーを応援しよう！などで執筆中。
著書に『スペインサッカーの神髄』（サッカー小僧新書）がある。また、「まぐまぐ」より、メルマガ『小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」』を配信中。