世界的にレアメタルの争奪戦が激化し、枯渇するとあおられている。携帯電話や液晶テレビに加え、エコカー向けで爆発的な需要が予測されているからだ。ではレアメタルは本当に枯渇してしまうのか?答えはNOである。確かにレアメタルの価格は急激な需要増に伴って跳ね上がった。しかし、価格が上がれば開発が刺激され、可採埋蔵量はいくらでも増やすことができる。資源ナショナリズムによる供給不安は否定できないが、危機が叫ばれるリチウムやレアアースについては騒ぎ過ぎという見方も多い。2009年には景気の悪化もあって価格は軒並み急落。足元でもレアメタルの多くは需給が緩んでいる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

エコカーの本格普及で需要急増が見込まれるリチウムは、激化するレアメタル争奪戦の象徴として語られる。常に供給不安がついて回るその資源から、レアメタル危機の深層を読み解く。


世界のリチウム埋蔵量の半分近くが眠るとされるボリビアのウユニ塩湖を巡っては、その権益をめぐって各国がしのぎを削る
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 「リチウム開発はまるでバブル。業界トップとしては価格を下げてブレーキをかける狙いがあったのではないか」。双日の片野裕・エレクトロマテリアル課長はある事件の裏側をそう読み解いた。

 リチウム生産で世界最大手のSQM(チリ)が突如、リチウム価格の2割値下げを宣言し、関係者に衝撃を与えたのは昨年10月のことだ。

 リチウムはハイブリッドカー(HEV)や電気自動車(EV)のモーターに不可欠とされ、需要の急増が見込まれる。世界全体の需要は約12万トン(炭酸リチウム換算)で、10年以内に供給不足に陥るとの見方もあり、レアメタルの中でも特に争奪戦が激しいといわれている。

 しかし、現実はリーマンショック後の需要減で、「足元の需給は緩んでいる」(住友商事の伊藤令・無機・ファインケミカル部長)。大手各社はリチウムの生産キャパシティが余っており、稼働率を落としているという。

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