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「日本語学校を卒業すれば就職できる」「2年間の日本語学校を卒業すると、年460万円まで稼げる仕事を斡旋する」。そんな現地ブローカー(仲介者)の説明を信じて、約120万円のローンを組んで来日したブータンの留学生たちが、苦境に追い込まれている。実際には、就職が決まらず、授業料を支払うための過重労働を余儀なくされているというのだ。

帰国した留学生や親でつくる「ブータン留学生親の会」と支援者が3月11日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いて、そうした窮状をうったえた。ブータンの弁護士で、同会顧問のナワン・トブガイさんによると、日本国内にいるブータン留学生約500人に聞き取りをおこなったところ、ほとんどが「騙された」と訴えており、「日本語学校からも不当な扱いを受けている」と証言したという。

●1人あたり120万円の借金を背負っている

ブータンの留学生を支援している一般社団法人「Nature & Humans Japan」代表理事の菅由美子さんも同席した。菅さんによると、2017年4月から2018年4月の約1年間で、734人の留学生が来日した。現地ブローカーがもとめた費用は1人あたり120万円(5年ローン・利子8%・公務員の年収は60万円)であることから、ブータンで働いても返すことがむずかしい借金を負っているかたちだ。

この留学プログラムは、ブータンの政府機関(労働人材省)が主導していることから、現地ブローカーの「日本語学校を卒業すれば就職できる」という言葉を信じてやってきた。実際には、日本語学校の授業料を支払うために、勉強もできないまま長時間のアルバイトをせざるを得ず、狭いのに家賃の高い部屋に複数人で押し込められていたりしているという。

過労やストレスにさらされる環境に嫌気がさして、約120人が借金を残したまま帰国した。さらに、確認できただけでも、全国で20人以上が結核を患っており、うち1人は意識不明の重体に陥っている。昨年12月には、福岡の日本語学校に通っていた男性1人が、みずから命を絶つという出来事もあったという。

●親の会は現地ブローカーを訴える準備中

ブータンの若者たちが留学してきた背景には、国内の失業率が高いことがある。そうした状況のもとで、留学プログラムに関わっている現地ブローカー、日本のブローカー、日本語学校の3者が「留学生たちを搾取している」というのだ。日本には、ブータンの大使館・領事館もないことから、事態を深刻化させているようだ。

ナワンさんによると、昨秋から、ブータン国内でも話題となり、現地ブローカーに対する世論も強くなっているという。ブータン留学生親の会は、「日本語学校を出たら仕事を斡旋する」という契約が履行されていないとして、現地ブローカーを訴える準備をはじめている。そのうえで、ブータン政府だけでなく、日本側にも、理解と協力をもとめている。

(弁護士ドットコムニュース)