「反論したいのにできない」を克服する方法

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 最近、電車内で利用客同士によって起こるいざこざがニュースやSNSで取り上げられることが多くなった。携帯電話の使用や飲食などトラブルの原因は様々だろうが、ヒートアップするあまり暴力沙汰になり、駅員が仲裁に入ったり、なかには逮捕におよぶケースもある。
毎日のように電車に乗るビジネスパーソンにとって、この問題は他人事ではない。こうしたトラブルを起こす客というのは往々にして理不尽で、いつ難癖をつけられてもおかしくないからだ。
もし、あなたがそうしたトラブルに巻き込まれたら、苛立ちをグッと抑えてスルーするだろうか、それとも反撃するだろうか。

 『はじめての 男の反論・反撃マニュアル』(男の「一言言ってやりたい」研究会 /著、秀和システム/刊)は、まさにこの問題への処方箋を示してくれる一冊。
例えば電車の中で隣の客に腹が立つようなことを言われたとき、自分の感情を押しこめてしまったために後々まで引きずるのは精神衛生上よろしくない。かといって、その場で感情的に言い返しては、事を大きくするだけ。
だが、本書で紹介されているマニュアルを実践すれば、「ひと言、物申す」スタイルをとりながらも、平和的に事態を収拾できる。普段の言動からして「もし自分がそういう目に遭ったら、反論したくてもできないだろうな」と思う人は、ぜひ取り入れてみてほしい内容だ。

■「相手にバツの悪さを感じさせる」をゴールに
 喧嘩はしたくない。でも、何も言わずに完全スルーは納得できない。では、どこを目指すべきゴールにすべきなのだろうか。
 理想的には「相手に自分の非を認めて謝罪させる」というところまで持っていくことだろう。だが、それは「喧嘩になるリスク」と表裏一体。そこまでの危険は冒せない大人なあなたには、もう一段階低いゴール設定が必要だ。
 そこで本書が推奨するゴールは「相手にバツの悪さを感じさせる」というもの。では何をもって、ゴールに到達したと判断すればいいのか。
たとえば、「ここで怒ると逆にみっともない」と思わせるギリギリの線で「微妙に嫌なこと」を言う。要は、相手を気まずくさせることができればOK。こういったものは客観的に判断できるものではなく、要は自己満足できるかどうかが重要なのだ。

■あえて慇懃無礼な態度をとる
 あくまでスマートに、でも相手にへりくだることなく話を進めるために重要なのが、口調。本書によれば、その選択肢の一つが「慇懃無礼」なトークだという。「言葉や態度などが丁寧すぎてかえって無礼」という印象は、さりげなく相手をチクリと刺すのに適しているそうだ。
 では、逆に「慇懃無礼な上司」がいたら?
爽やかな笑顔で「ずっと気になっていたんですが、大西課長っていつも誰にでもそんな感じなんですか?」などと、友好的に語りかけるという手法を本書は推奨する。

■相手に精神的ダメージを与える表情の作り方
 相手に付け入るスキを与えないためにも、話し方と同じくらい注意を払いたいのが表情や立ち振る舞い。まず表情に関しては、「無表情」か「微笑」のどちらかを選ぶ。また、最も重要なのは、「この表情で行こう」と決めたら、それをキープすること。ここでの狙いは相手に「何を考えているのか読みづらい」「なんか冷静で余裕ありそう」と思わせることだ。
 またさらに追い打ちをかけたいなら、目線にも気を配る。通常のコミュニケーションであれば、相手の目を見る(7)、目線を外す(3)という「7対3の法則」をとるのが基本だが、反論・反撃するときは、ひたすら相手の目を見続ける。そうすることで、地味に相手にプレッシャーを与えることができるそうだ。

 本書の企画・プロデュースを手がけたのは、人気放送作家のおちまさとさん。上で紹介したもの以外にも「精神戦を制するには見た目の威圧感が重要。精悍さを演出するために、日焼けサロンへ行こう」「反論し慣れていない人ほど、口もとがヒクヒクしがち。そうならないように、表情筋を鍛えるためのエクササイズをしましょう」といったように、遊び心を感じさせるアドバイスが載っているのも本書の特徴のひとつだ。
また本書では通勤電車にかぎらず、「仕事中に腹が立った」「帰宅途中に腹が立った」などシーンごとの対応法も解説されている。自分の感情を押し殺し余計なストレスを抱えないためのヒントを得られるのはもちろん、クスッと笑える読み物として楽しむのもいいだろう。
(新刊JP編集部)