眞鍋かをりオフィシャルブログより

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 タレントの眞鍋かをりさん(34)の公式ブログのコメント欄に、「殺す」など眞鍋さんへの殺害を匂わす書き込みをしたとして、強要未遂罪に問われた青森県八戸市の無職、川本裕貴被告(仮名・40)の公判が17日、東京地裁で開かれた。

 起訴状によると、川本被告は2014年10月15日に、眞鍋さんのブログコメント欄に投稿した自分のコメントが公開されないことに立腹し、自宅から携帯電話を用いてコメント欄に「早く眞鍋に、オレに謝罪させろ。直接殴り込みをかけたっていい。警察が動いたと分かった時点でぶっ殺してやる」などと書き込み、翌日午前、眞鍋さん本人にそれを閲読させ怖がらせた、とされている。

「起訴状になにか違うところはありますか?」と裁判官に問われ、「いえ……」と答えた川本被告。長身に伸びた黒髪、赤と黒のチェックのシャツにダボッとしたジーンズで法廷の証言台の前に立っていた。

 今回起訴されているのは、昨年10月の書き込みについてのみであるが、冒頭陳述や証拠調べでは、もっと以前からこうした書き込みを行っていたことが明らかになった。

殺害予告は3000回以上。コメント非公開に恨みを募らせ

「専門学校を卒業後、職を転々とし、犯行当時は無職だった」という川本被告、祖母と2人でアパートに暮らしており、祖母の年金で生活していた。眞鍋さんのブログとの出会いは、7年前。ブログを読み、好意を抱く。日常的にコメントを投稿してきたが、平成23年頃から、他のファンが書いたコメントは公開状態になるにもかかわらず、自身のコメントが非公開のまま、という状態が続き、一方的に恨みを募らせていったという。

 そしてコメント欄や眞鍋さんのツイッターアカウントあてに、誹謗中傷や脅迫的な文言を投稿するようになり、同時に、非公開という処置に対する謝罪を求めるようになる。さらに犯行の直前には、眞鍋さんの所属事務所にまで電話をかけ、謝罪を要求していた。起訴状記載の犯行に至るまでの2日間で、松橋被告は眞鍋さんのブログに32件のコメントを投稿していたという。

 こうした川本被告の行為を受け、所属事務所は、眞鍋さんに対する警備を強化しており、あるイベントでは専属の警備員を2名つけるなどの対応を余儀なくされていた。眞鍋さんは調書でこう語っている。

「平成23年夏頃から被告のブログコメントの内容が『殺しにいくぞ』などというものになり、怖さを感じるようになった。マネージャーと被害届を出すか相談をしていましたが、まだ危険な状態というわけでもなかったため、差し迫ったときに改めて被害届を出そう、ということにしていました。その後、被告の行動を静観していましたが、昨年10月頃から激しくなり、私の父親のツイッターに対しても『殺してやる』などとツイートするようになりました。同月には事務所にも電話がかかってきて『眞鍋に謝罪させろ』と要求しており、その中でのこの書き込みであったため警察に通報しました」

 所属事務所に電話をかけた際には、電話応対した事務員に対して「私は、いつでも謝罪しろ、お前をぶっ殺す、と言ってるわけです。私も犯罪しかねないよ」などと述べていたという。

 そんな川本被告が眞鍋さんのブログと眞鍋さん本人に強い関心を持つようになったのは、調書によれば「ブログを見るようになった2009年頃」だといい「眞鍋さんを女性として見ている自分に気付き、これって好きなのかな、と思うようになった。4年間、ブログのコメントが公開されないことに傷ついている。どうしても謝罪させたいと思っていた。これぐらいのことで警察が捕まえにくることは無い」とも述べている。

「コメントへの反応があったと感じたられたこともありました。飼っている犬の話題のことで……。自分が職を失っていたこともあって、ファンという意味で……希望みたいなものになっていって、自分の中では大切なものだった」

 そんな強い思いを持っていたため、ブログのコメントが非公開状態となっていたことに対する不満や憤りも大きくなっていたようだ。

弁護人「コメントを読んでいるのに反映してくれていないと感じたんですか?」

川本被告「はい」

弁護人「それが被害者の意志だと?」

川本被告「そう思いました」

 被告人質問で川本被告は証言台の前に立ったまま答え続ける。

「信頼していたんですけれども、精神的に傷つけられて、裏切られた。罵倒することによって、自分の辛さ、そういうものを断ち切ろうと思った。なぜ、非掲載にしたのか知りたいと……」

 逮捕直後、川本被告のツイッターでの眞鍋さん宛てのつぶやきが注目されたこともあった。「必ず死ぬぞ?眞鍋かをり。」など高圧的な書き込みを繰り返している。

検察官「何回くらいそういうコメントをしたんですか?」

川本被告「アカウントを変えてるので全部あわせると、数千回です」

検察官「あなた平成25年から26年の1年間で、ツイッターに2400件以上、そうした書き込みをしていますね。逮捕前の一ヶ月は900回。それくらい、頻繁にやっていたんですか?」

川本被告「……」

「(眞鍋さんのことが)好きで、書き込みをしていた。非掲載が続いたことへの疑問が解けない思いが強くなって……アクションを起こしてほしくて」

 ブログへのコメント書き込みを行っていくなかで、川本被告は眞鍋さんとの距離が近くなっていたと感じていたようだ。

「あなたのコメントを非公開にしたことについて、なぜ被害者があなたに謝罪する必要があるんですか?」

 誰もが思っていることをたずねた女性検察官に対し、川本被告はこう答えている。

「ひとつは、非掲載にされたことで、疎外感……ほぼ毎日、傷つけられた、嫌がらせされたと感じていて……」

「謝罪させたいという気持ちはもうありません。逮捕されるか、謝罪をもらうか、2つに1つだと考えていたので」と、逮捕によって気持ちの整理がついたことも明かし、今後は眞鍋さんのブログを閲覧せず、一切関わらない気持ちであることを誓った。

 また、川本被告が逮捕当時住んでいたアパートは、祖母の施設入所のために現在は退去しており、社会復帰後に戻る場所は無い。他には叔父しか身寄りがないという。そのため、検察側も弁護側も「仮に執行猶予判決となった場合、保護観察を」と訴えていた。

 川本被告には懲役1年が求刑されており、判決は今月末に言い渡される。

著者プロフィール

ライター

高橋ユキ

福岡県生まれ。2005年、女性4人の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。著作『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)などを発表。近著に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)