日本代表のガーナ戦は3─1で日本が勝利した。くすぶっていた香川真司のゴールや本田圭佑の2戦連続ゴールが一面に踊り、ファンもメディアも逆転勝利を喜んでいるが、冷静に振り返ると、やはり強化試合としては対戦相手のレベルに不足があったように思う。
 
 コンフェデ杯、ウルグアイ戦と続く中で、日本代表は課題が噴出した。問題を抱えているチームが、W杯本大会を見据えた上で、その問題をいかにあぶり出し、改善していくのか、という点においては、グアテマラ戦もガーナ戦も、何が足りないかが分からないまま終わってしまった印象だね。
 
 快勝に水を差すなと言われそうだが、コンフェデ杯に行く前の社会に戻してはいけないのだ。選手やチームだけでなく、ファン、メディア、僕も含めた我々が、あの大会で何を感じ、これからどうしていかなければならないのか、という点は忘れてはいけない。けれど案の定、新聞、テレビはコンフェデ杯やウルグアイ戦のことなどどこ吹く風。とにかく売り上げを作ること、スターを作ることに腐心し、錯覚を起こさせようとしているね。その姿勢はサッカーを本質から遠ざけようとしているように思える。
 
 
ガーナ戦から一夜明けて、ブラジル対ポルトガル戦の解説を担当した。昨夜の試合とは違う競技なのではないかと思うほど、激しく、スピーディな試合だったよ。W杯で上を目指すというのは、このレベルに立って話さなければならない。日本が地理的なハンディを抱えているのは間違いないけど、主力がごっそり抜け、後半になると足が止まったガーナ相手のあの試合で良い気持ちになっているようではダメだね。
 
 もう一つ、前回、東京五輪がやってくることは非常に嬉しいことだと書いた。けれど、その後の報道や浮かれた気分にはちょっと気になるところがある。招致は決まったけど、本当に大変なのはこれからだ。「完全にコントロールされている」と世界に大見得を切ってしまった汚染水の問題もしかり、本当に大変なのはこれからだ。世界に対する山ほどの公約をきちんと果たせるか。
 
 出てくる話題は、やれ東京のここが新しくなる、国立競技場が改装される、道路がどうなる、とかそんなことばかりで、本当に大切なものを忘れてしまっているんじゃないかと思うね。僕は日光アイスバックスでアイスホッケーに関わってきているが、長野オリンピックが終わって、アイスホッケーは非常に寂しい状態にある。残ったのは箱モノだけだ。スポーツなのか、ビジネスなのか。これはサッカーにも通じてくる話だよ。浮かれるのはいい加減にして、今後7年でどうなるべきかを考えなければならない。