さらにX線結晶構造解析により、ZF7は直鎖状ユビキチンの2つのユビキチン分子を同時に認識し、直鎖状ユビキチンに特異的に結合することも判明したのである(画像2)。

免疫細胞でNF-κB経路が活性化されると、ブレーキタンパク質であるA20が生成。

そしてA20が、IKKやLUBACを含むTNF受容体複合体に集積してNF-κB経路が抑制される。

そこで、直鎖状ユビキチンと結合できないZF7を持つA20変異体を作製し解析したところ、A20はZF7を介して直鎖状ユビキチンと結合することでTNF受容体複合体に集積し、NF-κBの活性化を抑制することが明らかとなった(画像3)。

画像3は、A20による直鎖状ユビキチン結合を介したNF-κB抑制機構とB細胞リンパ腫との関連を表した模式図だ。

正常な細胞では、NF-κB活性化の後A20が発現し、A20はZF7を介して直鎖状ユビキチンに結合することで、適切なタイミングでNF-κB経路を抑制する。

一方、ZF7に異常があるとA20は直鎖状ユビキチンに結合できず、NF-κB経路にブレーキが掛からない。

このため、持続的なNF-κB活性亢進状態になり、発がんに至ると考えられるという。

A20の遺伝子多型は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬、糖尿病など多くの病態と関連している。

さらに、ZF7の欠損やアミノ酸変異は、B細胞リンパ腫(ホジキン・非ホジキンリンパ腫)を惹起してしまう。

そこで、非ホジキンリンパ腫を引き起こすZF7のアミノ酸変異を持つA20変異体を解析したところ、これらの変異体では直鎖状ユビキチンとの結合が弱くなり、免疫細胞への刺激によって引き起こされる、A20のTNF受容体複合体への集積も低下していることが判明した。

以上の結果から、ZF7の欠損や変異により直鎖状ユビキチンへの結合力が弱くなると、A20のTNF受容体複合体への集積が不全となり、NF-κBが活性化された状態が持続することで病態発症につながることが示唆されたのである(画像3)。

B細胞リンパ腫は血液のがん、悪性リンパ腫の1種で、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されるが、日本では非ホジキンリンパ腫が多い。

治療には4つの薬剤を併用する化学療法(CHOP療法)や分子標的薬リツキシマブ(ヒト化抗CD20抗体)が用いられているが、今なお治療困難なケースが多く見られる。

今回の研究から、非ホジキンリンパ腫の発症にはA20のZF7の直鎖状ユビキチンへの結合が関与するという新たな知見が得られ、その発症メカニズムの一端が解明された形だ。

直鎖状ユビキチンはNF-κB経路の活性化の足場として重要だが、ブレーキタンパク質であるA20が集積する足場としても極めて重要であることが、今回初めて明らかになった。

従って、直鎖状ユビキチンを標的とする薬剤はNF-κB経路を特異的かつ有効に抑制すると期待され、抗がん剤や自己免疫疾患治療薬の創薬シーズとして有用と考えられると、研究グループはコメントしている。