「開華 純米吟醸 生原酒 立春朝搾り」です。立春朝搾りは基本的に同じようなデザインのラベル(もちろん蔵元の名前のところは各蔵元の名前になります)となっています。

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余寒なお去りがたきおりから、皆様お元気でお過ごしでしょうか。

なんて柄にも無く季節の挨拶から入ってしまいましたが、2月4日に立春を迎えましたので、今はこんなに寒くても暦の上では春だったりします。なんでこの時期に春なのかというと、お昼の長さと夜の長さを基準に季節を区分する方法では、立春から立夏の前日までが春になるからだそうです。そして、立春以降の寒さを残寒とか余寒と言うのですね。

そんなことを言っておりますが、立春のことが今回の主題ではありません。立春に販売される、スペシャルな日本酒こそが本題なのです。そのお酒を「立春朝搾り」と言います。

この立春朝搾りは、文字通り立春の日の朝に搾ったお酒をその日のうちに買えるようにしたものです。そう、まさに絞りたてのお酒を買うチャンスなのですね。朝にできたばかりのお酒をその日のうちに飲めるので、それはもう新鮮そのもの。本来だったらそこまでのできたてのお酒は、蔵元さんのところに直接いかないとなかなか飲めないのですが、立春朝搾りなら飲めちゃうというわけなのです。

でも、どうやってその日のうちに買えるようにしているのでしょうか。理屈はとても簡単です。蔵元さんの近郊の酒屋さんが早朝から蔵へお手伝いに行って、瓶詰めや出荷作業を一緒にするのです。そして、酒屋さんは注文分のお酒をそのまま直接蔵から運び出すので、その日のうちに購入することができるというわけなのですね。

そういう仕組みになっているので、立春朝搾りは基本的に地域限定酒となっています。例えば、東京に住んでいながら京都の蔵元さんの立春朝搾りが飲みたいなーと思っても、東京では購入することができないのです。

今年の立春朝搾りは北は北海道から南は九州まで、全部で38の蔵で作られました。ラインナップはこちらで確認をすることができます。

解禁日が毎年決まっていることと、新酒を楽しむということとがあいまって、立春朝搾りは日本酒の中のボジョレー・ヌーボーとも呼ばれていたりします。年々注目を集めていまして、売り上げも上がっているようです。でも実際にはとても大変で、ある意味大吟醸よりも神経を使う、杜氏さん泣かせのお酒だったりもするのです。本来ならお酒のできをチェックしながら、一番いいタイミングで搾ればいいところを、搾り上がりの日が決まっているので、できあがりが早すぎたり遅すぎたりしないように完璧に管理をしなければならないのです。

そんなお祭り要素と細心の注意を払って隅々まで管理と調整をされたお酒が美味しく無いわけがありません。というわけで、東京で買える立春朝搾りを実際に買ってみました。「開華 純米吟醸 生原酒 立春朝搾り」という栃木のお酒です。

ラベルの写真を見てください。「平成二十四年壬辰二月四日」と書かれています。今年の干支は壬辰(みずのえたつ)なのですね。実は旧暦では立春から干支が始まります。そういった意味でも新しい春を迎えるのにふさわしいお酒になるよう、出荷作業の合間に神社の神主さんによるお祓いが行われていたりします。無病息災、家内安全、商売繁盛を祈願された、おめでたいお酒でもあるのです。

もちろん飲んでみましたとも。アルコール度数は17度以上18度未満と、原酒なので高めですが、甘やかで華やかな香りでとても飲みやすいです。新酒ならではの酸味と、綺麗な甘味のバランスがとてもいいですね。これは確かに福を呼びそう!

残念ながら、基本的には予約限定のお酒なので今から手に入れるのは少し難易度が高かったりします。何せ、酒屋さんは予約分だけを蔵元さんから持ち帰るわけですから。でも中にはキャンセルが出たり、すこし多めに入荷しているところもあるので、探せば買えたりもします。もし買えなかった方は、来年に是非!

というわけで、2月3日の節分に豆を撒いたり恵方巻きを食べるのもいいのですが、翌日の立春には立春朝搾りを楽しむのはいかがでしょうか?
(杉村 啓)