子育てが落ち着いた妻が、「月収8万円」のパート勤務から「月収20万円」の正社員に切り替えて働きたいそうです。扶養や配偶者控除にはどう影響しますか?
妻がパートから正社員になると扶養はどうなる?
パートから正社員になると、条件にもよりますが、基本的には社会保険上の扶養から外れます。
厚生労働省によると、適用事業所に勤める正社員は、原則として社会保険に加入するとされているためです。適用事業所とは、法律で社会保険への加入が義務付けられている事業所や、条件を満たしており、社会保険に加入できる事業所を指します。
適用事業所になれるのは、法人事業所かつ従業員が働いているところか、常に5人以上の従業員が働いている個人事業所です。多くの会社はこの条件に該当するため、正社員になると扶養を外れて勤務先の社会保険に加入する可能性が高いでしょう。
配偶者控除はどうなる?
一定金額以上の所得があると、配偶者控除も対象外となります。令和8年分以降の配偶者控除は、次の条件を満たしている配偶者が対象です。
・民法上の配偶者である
・納税をする本人と生計を同じくしている
・合計所得が年間62万円以下、給与のみの場合は給与収入(年収)で136万円以下
年収136万円の場合、ボーナスを考慮せず、毎月同額を受け取っていると仮定すれば、月収換算で約11万3333円です。月収20万円の正社員になる場合は、条件を満たしていないため、配偶者控除から外れます。
さらに、今回のケースでは、配偶者特別控除も対象外となる可能性があります。配偶者特別控除とは、配偶者控除の基準を満たしていないときに、条件を満たしていれば適用される控除です。配偶者特別控除の収入面の条件は、配偶者の合計所得が年間62万円超~133万円以下(年収136万円超~207万円以下)です。
ほかの収入がなく給与収入のみの場合、合計所得は「給与収入-給与所得控除」で求められます。
ボーナスを考慮しなかった場合でも、月収20万円の年収は240万円が目安です。年収240万円の合計給与所得金額は年間160万円になり、配偶者特別控除の基準を満たさないため、控除は適用されません。
これらの控除が受けられなくなると、扶養をしている夫の課税所得が増える可能性がある点に注意が必要でしょう。
夫の手取りはどれくらい変わる?
今回は、次の条件で夫の手取りがいくら変わるかを比較しましょう。
・夫婦ともに40代の東京都在住
・夫の年収は600万円
・夫は全国健康保険協会に加入
・妻は以前までパートで年間100万円を得ていた
・ボーナスは考慮しない
・給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除のみを適用する
・年収を12ヶ月で割った金額を標準報酬月額とする
・社会保険料、控除額などの基準は令和8年度のものを使用する
・住民税は総務省が示している基準である10%(所得割)+5000円(均等割と森林環境税)とする
妻のパート年収は100万円のため、配偶者控除の対象になります。妻がパートのときと正社員になったときの夫の税金や手取りの差は表1の通りです。
表1
※筆者作成
表1から分かるように、配偶者控除の有無で夫の手取りは年間7万1000円減少します。ただし、条件によっては差額が変動することもあるため、あくまでも参考としてみてください。
また、夫の手取りは減少しますが、妻が正社員になり月収が8万円から20万円に増える場合、世帯全体での手取りは増えるでしょう。
妻が正社員になると扶養を外れて配偶者控除を受けられなくなる可能性がある
妻が正社員になると、社会保険上の扶養から外れて妻自身で社会保険への加入が必要です。さらに、妻の収入によっては夫の配偶者に関する控除が適用されない可能性があります。控除が減るため、夫の手取りは減少するでしょう。
しかし、妻が正社員になり月収が8万円から20万円に増えると、世帯全体の手取りは増加する可能性があります。妻から正社員になる旨の相談を受けたときは、夫の手取りだけでなく、世帯全体の手取りがどう変わるかも確認するようにしましょう。
出典
厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
日本年金機構 事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき
国税庁 令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1191 配偶者控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1195 配偶者特別控除
総務省 地方税制度 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

