部屋の隅に、泥だらけのウサギの着ぐるみが…「突然動いたら」と想像してゾッ。話題の展示で恐怖体験
 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。

 20年間生活した東京をあとにして、故郷北海道で自然や犬との気ままなシンプルライフを楽しむアンヌさん。本連載では、40代の今だから感じる日々のあれこれを綴ります。
 第93回となる今回は、札幌で開催中のある展覧会と「恐怖心」について綴ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。

◆札幌で開催中の「恐怖心展」へ

 夏になると心霊番組が増えますね。

 子どもの頃は「怖い怖い」と言いながら家族で見ていたし、大人になった今でも、つい怪談や都市伝説の特集を見つけると見入ってしまう私。怖いもの見たさという言葉があるけれど、恐怖という感情は嫌なのに、なぜか多くの人の心を掴んで離さないわけで。

 そんな「怖い」という感情をテーマにした展覧会が現在札幌にて開催中。

 その名も「恐怖心展」。テーマになっているのは、「人が何を怖いと感じるか」というもの。私たちの日常に潜む、ありとあらゆる「恐怖」が展示されているのです。

 会場に入る前から演出が始まっていたのも心憎い。会場前にある大きな看板。その前には赤いカラーコーンが置かれているだけなのに、なぜか妙に不穏な空気が漂っているような……。転倒防止などの目的で置かれているのはもちろん、それも練られた演出なんだとか。

 人は「ここには近づいてはいけないのかもしれない」と思った瞬間に、その場所へ勝手に意味を与えてしまうわけで。何も起きていないのに、もう怖い……。

◆集合体、先端、電話…さまざまな「恐怖」にまつわる展示

 展示の内容も、その空間づくりも、独特で良い! 集合体恐怖症、先端恐怖症、電話恐怖症、風船恐怖症……。

 中には「そんなものまで?」と思うような恐怖にまつわる写真、実物、エピソード……ありとあらゆる方法でその「恐怖」を再現していくのです。

 たとえば、蜘蛛そのものではなく、「蜘蛛がいることを想像させる展示」があったり。

 壁掛け時計の裏側から、細い脚だけが何本か見えている、でも蜘蛛本体は見えないというもの。それでも「ぎゃっ蜘蛛じゃない?」と思った瞬間、背中がゾワッ!! 正体がわからないことが、かえって恐怖を増幅させるのです。

 展示は視覚だけでは終わりません。

 静まり返った会場で、突然、事務所などでおなじみのプッシュホン式の固定電話のベルが鳴りひびくのです。その音だけで首がすくみますが……。

「電話恐怖症」の人は少なくないでしょう。新社会人の頃、電話応対で怒られた経験がある人もいるだろうし、突然静寂をやぶる音そのものが苦手という人もいるのでは。たった一つの音が、誰かにとっては恐怖になる。

 それを五感で体験させる展示方法が、本当に巧みなのです。

◆「着ぐるみ」への恐怖とは?

 個人的に忘れられないのは、着ぐるみ恐怖症の展示。薄暗い、なんだかちょっと床が汚れているような部屋の隅に、泥だらけのウサギの着ぐるみが脱ぎ捨てられている……ただ、それだけ。

 動かない。音もしない。なのに……怖い。

「もし中に誰か入っていたら?」
「突然立ち上がったら?」

 そんなことは起こるはずがないのに、勝手に想像してしまう不可思議さ。恐怖は、目の前にあるものではなく、自分の頭の中で完成していく感情なのですよね。

◆私が怖いのは……

 人によって、怖いものってまったく異なります。私の友人はなかなかの潔癖で、常に消毒ジェルを持ち歩いています。愛犬の足も時間をかけてかなり丁寧に拭くほど。どうやら「菌」に対する漠然とした恐怖があるよう。