「ChatGPTに聞いたら、パワハラと出たから告発」若者の間で広がる《新型ハラスメント》の実態を探る

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職場からハラスメントを撲滅するのは必須ですが、次々と生まれる「新型ハラスメント」に追いつけない。そもそも、ほんとうにハラスメントなのか? 知らず知らずのうちに加害者になってしまう前に、新型ハラスメントをチェックして、一度、自分の言動を振り返ってみてほしい。

前編記事『《悲報》ついに“ほぼ全ての行為”が「ハラスメント」になりました...「新型ハラスメント」の《数》と《内容》がヤバすぎる』より続く。

働き方改革の最中でも「ハラスメント」

働き方改革が普及し始めた'18年に生まれたのが「ジタハラ」だ。業務量は減らさずに定時退社(労働時間の短縮)を強要する行為を指し、ユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた。またコロナ禍にはリモートワークが定着した結果、「リモハラ」という言葉も流行した。

もともとは上司が在宅ワークしている部下に頻繁にリモート会議を要求したり、仕事をサボっていないか監視する行為を指していたが、リモートワークが当たり前になったいま、新型の「リモハラ」も生まれている。年間数百件のハラスメント防止研修を行うダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社の山藤祐子氏が解説する。

「たとえばオンラインミーティングを行っているときに、上司が部下に『カメラをオンにしてほしい』と指示すると、『きちんとした化粧もしていないし、服装も部屋着だ。こちらがそんな状態なのにカメラをオンにせよというのは、リモハラだ』と言われたという事例や、コロナ禍が落ち着いたので、在宅勤務から徐々に出社に移行するよう部下に伝えたら、『出社を強要するなんてハラスメントだ』と言われた事例もあります。これも一種の『リモハラ』として捉えられています」

万人の万人による闘争?

他方で、セクハラも細分化が進んでいる。性的な言動にだけ気をつければいいというわけでもない。無意識にしてしまいがちな「ミルハラ」にも気をつけなければならない。これは、相手の身体を無遠慮にジロジロと見て、不快な思いをさせることを指す。

極端な例になると、呼吸(ブリージング)してほしくないのに呼吸されるという「ブリハラ」、存在(イグジスト)してほしくないのに存在しているという「イグハラ」といったものまで……。

「○○さん、イグハラですよ」なんて言われた日には、消えてしまうしか解決方法がないわけだが、ここまで極端なハラスメントを認めてしまうと、「万人の万人によるハラスメント」状態になることが懸念されるのではないか。

実際、「ミルハラ」に対しては「見られるような服装をしていること」を問題視する「ミセハラ」という防御的ハラスメントワードも出現しているそうだが、前出の村嵜氏によると、企業からはこんな相談が寄せられているという。

「『なんでもかんでもハラスメントとされて困っている』という企業からの相談が増えているのも事実です。基本的に企業の側は、法的に防止措置が定められているため、従業員がハラスメントを訴えてきたときにはなんらかの対応をしなければなりません。そのため、自分にとって不利益な言動や行動のすべてを『ハラスメント』と都合よく解釈して、すぐに人事部や総務部に訴えに出る人も増えている。『告発合戦』になっている会社もあり、多くの企業がどこまでをハラスメント認定すべきかに悩んでいます」

法よりも大事な個人の感情?

山藤氏も、ある企業からこんな悩みを相談されたと明かす。

「『自分が上司からされたことについて、パワハラかどうかをChatGPTに聞いたら、パワハラと出ました。上司を罰してください』と訴える人がいたようです。会社が関係者にヒアリングを実施し、弁護士にも確認したところ、法的にパワハラには当たらないとの見解でした。それを本人に伝えたものの、『ChatGPTが言うのだから間違いない』と納得してもらえなかったとか。この事例は極端だとしても、法的な判断よりも自分が受けた感情の面での被害を重視してほしい、という声が増えているようです。

職場環境を良くするためにハラスメントの撲滅は必須ですが、過剰なハラスメントの訴えが横行すれば、逆に人間関係がぎくしゃくして、職場環境が悪くなることにも、留意が必要でしょう」

ハラスメントだらけの世界も地獄だが、あらゆるハラスメントに気を遣わねばならない社会もまた地獄かもしれない。

「週刊現代」2024年11月9日号より

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