[9.28 J2第33節 清水 1-1 横浜FC 国立]

 首位で迎えた2位との“国立頂上決戦”。清水エスパルスは横浜FCと1-1で引き分け、J2優勝とJ1自動昇格に一歩近づいた。5バックの守備的布陣で停滞感が漂った前半から一転、後半は先に失点したこともあって破壊力あふれる攻勢を展開し、人数をかけたサイドアタックで同点ゴールも記録。直近の連勝こそ3でストップしたものの、これで8試合負けなし(6勝2分)となった格好だ。

 もっとも前半の戦いぶりには懸念も残った。チームはこの日、普段の4-2-3-1ではなく、守備時は横浜FCの3-4-2-1に合わせた5-4-1のブロックを敷く布陣を選択。ただ、5バックで守備面に安定感が出たは良いものの、押し返すシーンはMF乾貴士の単独突破に頼るばかりで、チームとして攻撃の迫力を出すことはできなかった。

 試合後、GK権田修一は「個人的にはパフォーマンスが非常に悪かったなというのが個人的な感覚。チームとしてまずは失点のところも含めて、勝つためには抑えるしかなかったので個人的には満足していない」と自身の役目にフォーカスしつつ、チームのレベルアップの必要性を強調。基本布陣に4バックを採用しつつ、相手に合わせた5バックで戦うジレンマを明らかにした。

「僕らはもともと相手が前に5枚並んでも、DFラインは4枚でスライドして受けて、前に攻撃的な選手を残しながら、後ろではスライドして頑張って、取ったボールを前につないで早く攻めたり、帰陣されたらボールを保持しながら戦っていくスタイル。これは去年からの課題だけど、3バックにした時に前の人数が1枚、1.5枚くらい減ってしまう。そこはうちがもう一段上げないといけない課題だと思う。今回は3日間しか準備期間がなかったので、その中でこういう戦いをするという意味で、もしかしたらもっと成熟させればできるかもしれないけど、現時点で僕の中では、自分たちの戦いがこの並びではできないなとは感じた」

 もっとも権田は「今日できなくても、これからそれは変えていければいいだけ」とも話し、指揮官の決断にはリスペクトを示す。目指すのはシステムを変えて戦うという現実的な選択をした上でも、自分たちの持ち味を出していくというプレー水準だ。

「僕の理想は横浜FC相手で、少しクオリティーが上がっても今まで通りに後ろが4枚で5枚を受けて、今までの通りのサッカーをすることだけど、それは監督とコーチが話して決めること。このやり方をした時に僕らは与えられたやり方の中で、どう攻守に機能させていくかをやっていかないといけない。そこは選手の真価が問われる部分で、まだまだもう一つ二つレベルアップしていかないといけないんじゃないかと思う」

 その目線はJ1自動昇格が近づいている中、来季以降のJ1定着を目指しているからこそ出てくるものでもある。

「J1に上がるまでだったら今のままでいいかもしれないけど、FC町田ゼルビアは優勝争いをしているけど、僕らが来年そこでやるということまで考えたら、もっともっとやらないといけないと思う」

 そのためにはプレーの水準を高く維持するだけでなく、相手に左右されすぎないプレースタイルを持つことも不可欠。J1トップレベルのクラブ相手にであれば現実的なゲームプランを持つことはもちろん必要だが、J2上位クラブを相手にしても同様の選択を強いられる場合、J1に上がった後はどの試合も守備的な戦いを選択せざるを得なくなるからだ。

「今日は引き分けでも順位自体は入れ替わらない状況だけど、普段やっていたプレーを出せていたかというとそうじゃない。個人的にはそこが気になる部分。少しロングボールが増えたし、うちは乾くん中心に小さいパスワークで『自分たちは攻撃のチーム』というのを前面に出してやるチームだけど、そこは今日できていなかった」

 この一戦をそう振り返った権田は「一昨年、新潟が上がった時はJ2でしっかり作って、J1でも同じスタイルでやり通して、いまそれでJ1に定着しつつある」とアルビレックス新潟の事例を振り返りつつ、「僕らも目指すならそこを目指さないと」と断言。「その新潟ですら優勝争いがなかなかできないというのがJ1。あの年は新潟がぶっちぎっていたけど、僕らにはその強さはない。あと5試合しかないけど、そこでもう一段、二段上げないとJ1に行ってそこで苦しむことになってしまう」とJ2残り5試合でのさらなるレベルアップを求めた。

 その目線の先には「エスパルスの将来」もある。

「エスパルスというチームに関しては来年からやればいいじゃなく、ここから5試合でどれだけ突き詰めていけるか。今後クラブが上がってまた下で争うのではなく、上で常に居続けられるようになるかが、育成クラブと言っている中で、それを見ているユース、ジュニアユース、ジュニアの子たちが『このエスパルス格好いいな』ということでいつまでもエスパルスを愛し続けていくかにつながると思う。いまは僕らがトップの選手をやっているので、まずはそういう姿勢を見せ続けないといけないなとつくづく思っています」

 J2リーグ戦は残り5試合となり、今節未消化の3位・長崎との勝ち点差が12に広がったため、次節からはついに自動昇格へのカウントダウンがスタート。勝負がかかる試合だからこそ、どのようなスタイルで試合に臨むかが試される時期となる。

 奇しくも次節の相手は昨季終盤戦、昇格に王手をかけたタイミングで勝ち点を落とし、J2逆転残留につながった水戸とのアウェーゲーム。権田は「今日の時点では勝負強くなったとは言えない。答え合わせはここから」と油断を排し、因縁の地に向かっていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)