9月30日から放送がスタートする第111作となる連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合 毎週月〜土曜8:00〜ほか ※土曜は1週間の振り返り)。本作で平成元年生まれの主人公・米田結を演じるのが女優の橋本環奈だ。これまで数々の映画やドラマに出演している橋本だが、連続テレビ小説の出演は初。しかも“ギャル魂”を掲げる女性という、ある意味で破天荒な印象を受けるキャラクターをどのように捉えているのだろうか――放送スタート直前の心境を聞いた。

橋本環奈

○震災を経験した少女を演じるうえで大切にしたこと

橋本が演じる結は、幼少期を神戸で過ごし、現在は福岡県・糸島で「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きている女の子。しかし、幼なじみや伝説のギャルである姉・歩(仲里依紗)に憧れる博多のギャル軍団、野球青年などの仲間と過ごすうちにギャルの世界に足を踏み入れ、“ギャル魂”を胸に「人生は思い切り楽しんでいいんだ」と夢を持って突き進む物語だ。

まず橋本は震災に関するシーンの演じ方について、「チーフの監督さんやスタッフの皆さんとたくさんお話をしました。当時の資料等を見させていただいたり、現地で取材された方にお話を伺ったり……」と自らが経験していない分、入念な準備を行ったという。

しかし一方で、演じる結は、阪神・淡路大震災のとき6歳という設定であることに触れ「小学校に入る前ぐらいの子が、どこまで震災のことを覚えているのか……というのがとても難しい」と語ると「だからと言って軽んじてはいけないことだし、すごく丁寧に演じなければいけない」という意識で臨んでいるという。

幼少期に被災し、その後福岡県糸島に移り住んできた結は、両親や祖父のもと「何事もない平和な日々こそ一番」と過ごしてきた。そんななか、ギャルの道へと突き進んでいくことになる。橋本自身も、劇中でギャル魂を胸に「人生を思いきり楽しんでいいんだ」と方向転換していく。



○「私ももしかしたらギャルだったのかもしれないですね」

橋本は「私の周りにはあまりいなかった」とギャルとの接点があまりなかった青春時代だったことを明かすと「演じてみて感じたのが、ギャルって心意気なんだなということ」と本質をつく。もちろん、髪型や化粧、ファッションなど外見的なギャルの特徴も演じる上では大切な要素だが、なによりも橋本はギャルのメンタルを大切にしたという。

「好きなことを貫く。周りの目を気にしない。いまの世の中って周りのことを気にしない……と言っても、SNSなどがあって、どうしても気にしてしまいがちなんですよね。でもだからこそ、ギャル魂ではないのですが、周りに何を言われても思うことを貫き通すメンタルが素敵だなと思ったんです。仲間を大事にするし、その思いがずっと変わらない。演じていて、本当に素敵だなと日々感じています」。

橋本自身も「私も友達はとても大事ですし、一番の味方でいたいと思っているので、ギャル魂にはすごくシンパシーを感じています」と語ると、「高校時代、お仕事をすでにしていたので、なかなか学校に行けないとき、周りの友達がすごく優しくしてくれたんです。とても恵まれていたので、私も周りに対して思いを返したいと思っていました。その意味では私ももしかしたらギャルだったのかもしれないですね」と笑う。

序盤の舞台は福岡県・糸島。橋本にとっては馴染みの場所だ。橋本は「高校卒業までずっと住んでいた大好きな町が福岡。学生時代に遊んでいた場所がロケ地になっているので、すごく懐かしい」とホームでの撮影は安心感があるというと「ずっと博多弁でのお芝居なので、本当にやりやすい(笑)。語尾やイントネーションもまったく気にせずに話せるので、リラックスして臨めています」と、よりリアルな芝居を追求できているという。





○姉役・仲里依紗は「里依紗さん自身がギャルみたい」

序盤の結は、自分のやりたいことに気づかず、とにかく周囲とうまくやり波風を起こさないことを信条としている。橋本は「結ちゃんは家族思いが過ぎて、家族のために我慢することが多いのですが、私は割と好きなことをやらせてもらっていたので、あまり環境面で共通点はないんです」と語るが「大切な人を傷つけたくないという思いなどはすごく共感できます」と感情移入するシーンも多い。

そんな結だが、8つ上の姉、伝説のギャルと呼ばれていた歩の影響で、徐々に日常にさざ波が起こる。歩を演じるのは仲里依紗。「最初の関係性として結と歩は対立構造があったので、話しかけていいのかためらう部分があったのですが、仲が良くなってからは、とにかくずっと他愛もない会話で盛り上がっています。とにかく里依紗さん自身がギャルみたいで、とても楽しい方なので、すごく素敵だなと思いますし、尊敬しています」。

仲だけではなく、母親役の麻生久美子、父親役の北村有起哉、祖母役の宮崎美子、祖父役の松平健など家族とのコミュニケーションも最高のようで「本当にずっとしゃべっていますし、カットがかかっても食卓のシーンは、ずっとみんな食べ続けています」と息もぴったりだという。

バトンタッチ会見では、『虎に翼』で主演を務めた伊藤沙莉から「心と体の健康を大切に」と声を掛けられていた橋本。「とにかく自分で自分の機嫌を取って、精神的に追い詰められないようにしていきたいです」と長い撮影を乗り切るために心掛けていることを語っていた。





■橋本環奈

1999年2月3日生まれ、福岡県出身。2016年に映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』で初主演を務め、第40回日本アカデミー賞「新人俳優賞」を受賞。主な出演作に映画『キングダム』シリーズ、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』、『今日から俺は!! 劇場版』、『カラダ探し』などがある。

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