9月27日発売予定のホンダ「N-BOXJOY」のディテール(写真:三木宏章)

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9月26日発表、9月27日発売を予定している、ホンダの新型軽自動車「N-BOX JOY」。撮影車両は、ホンダアクセスの用品を装着した「アクティブパッケージ」(写真:三木宏章)

8月22日にホームページで先行情報が公開されていた本田技研工業(以下、ホンダ)の新型「N-BOXジョイ(N-BOX JOY)」。その内外装デザインなどに関する詳細情報が9月19日に公式ホームページほかで公開された。

「日本一売れているクルマ」として知られ、今やホンダ車を代表する軽スーパーハイトワゴンが「N-BOX(エヌボックス)」。その新グレードとして2024年9月27日に発売予定のN-BOXジョイは、3代目N-BOXをベースに、近年人気のアウトドアをイメージさせる装備などを加味したモデルだ。

外装には、アースカラー系のボディ色や専用のフロントグリルなどを採用。インテリアでは、汚れが目立ちにくいチェック柄のシートを装備したほか、後席シートのアレンジ機能などもアップデート。野外のレジャーなどで、よりリラックスできる空間を演出していることがポイントだ。

ここでは、そんな新型N-BOXジョイに関し、現在わかる範囲の情報をもとに、主な特徴などを紹介。また、長年、新車販売台数で王座に鎮座するN-BOXに、なぜ今、新グレードを投入しテコ入れを図っているのか、その理由や背景などにも迫ってみたい。

【写真】アウトドアを身近な存在にしてくれる、ホンダの新型軽自動車「N-BOX JOY」の内外装をチェック!(94枚)

ホンダの人気軽自動車N-BOXとは

2011年に初代モデルが登場したN-BOXは、軽トールワゴンの「N-WGN(エヌワゴン)」、走りも魅力の「N-ONE(エヌワン)」、軽商用車の「N-VAN(エヌバン)」といったホンダ「N」シリーズのフラッグシップともいえるモデルだ。

N-BOXが属するのは、全高1700mmを超え、広い室内などを持つことで、近年、ファミリー層を中心に支持されている軽スーパーハイトワゴンというジャンル。ダイハツ「タント」やスズキ「スペーシア」など、各メーカーがさまざまな競合機種を投入する激戦区だ。

なかでもN-BOXは、軽四輪車の暦年(1〜12月)新車販売台数で、2015〜2023年の9年連続第1位を獲得(全軽自協調べ)。また、登録車も含めた四輪総合の暦年(1〜12月)新車販売台数では、2017〜2020年の4年連続1位となったほか、2022〜2023年も2年連続続1位(いずれも自販連調べ)に輝く。さらに2024年上半期(1〜6月)も販売台数10万680台を記録し、第1位をキープするといった好調さをみせている。

現行モデルについて


左から順に、スタンダード仕様のN-BOX、新たに追加予定のN-BOXジョイ、カスタム仕様のN-BOXカスタムとなる(写真:三木宏章)

なお、現行の3代目N-BOXは、2023年10月に登場。先代の2代目と同じく、スタンダード仕様に加え、カスタマイズ仕様になるN-BOXカスタム(以下、カスタム)を設定する。スタンダード仕様には、パネルに複数の丸穴を開けたようなスタイルのフロントグリルなどで、シンプルながら親しみやすいスタイルを採用。カスタムは、より大型で迫力のあるフロントグリルなどにより、インパクト感と上質さを両立させたことが特徴だ。

また、パワートレインには、NA(自然吸気)エンジン車とターボエンジン車を設定し、全タイプで2WD(FF)と4WDを選ぶことが可能だ。ほかにも、スタンダード仕様には、主に女性ユーザーを意識した配色のグレード「ファッションスタイル」も用意。カスタムでは、アウターハンドルなどにダーククロームメッキ加飾を施し、ボディ色をモノトーン(単色)と2トーンから選べる「コーディネートスタイル」も設定。これらにより、多様なユーザーに対応する豊富なバリエーションを揃えている。

N-BOXジョイのコンセプト


N-BOXジョイの外観。ボディカラーは、新色となるボタニカルグリーン・パールとブラックルーフの2トーン(写真:三木宏章)

そんなN-BOXをベースに、アウトドアのテイストを加味した新グレードが、今回追加されるN-BOXジョイだ。主なターゲット層は、20代の若い世代や子育てが終わった50〜60代のシニア層など。なかでも、公園や河川敷などを散歩しながら、好みの場所で折りたたみ椅子を置いてくつろぐチェアリング、日帰りのデイキャンプなど、近年人気の手軽なアウトドアレジャーを好むユーザーなどが、ゆったりと、気軽なひとときを満喫できるクルマとして開発したという。

つまり、N-BOXジョイは、アウトドア系といっても、スズキ「ジムニー」のような高い4輪駆動性能を持つ本格派ではない。だが、各部に、自然をゆったりと楽しむための工夫や装備を盛り込むことで、近年増加するアウトドア嗜好のユーザー向けバージョンに仕上げている。

なお、現在、パワートレインなどの詳細は未発表だが、基本的にはスタンダード仕様やカスタムと同じNA(自然吸気)エンジン車とターボエンジン車を設定。また、駆動方式には、2WD(FF)/4WDの両方が用意されるのも同様となりそうだ。

N-BOXジョイのスタイリング


N-BOXジョイのフロントフェイス。フロントグリル/フロントバンパー/フロントロアグリルは専用品となり、ヘッドライトも仕様変更されている(写真:三木宏章)

キャンプ道具などを詰め込んだキャリーボックスをイメージしたというN-BOXジョイの外観。大きな特徴は、まず、アウトドア用ギアの道具感を演出したというフロントフェイスだ。専用デザインのフロントグリルは、角を丸くしたスリット入りとし、ファンクショナルなイメージを加味。また、立体的な構造のLEDヘッドライトは、スタンダード仕様用をベースに、リングデザイン部分に蒸着加工を施したアルミパーツを追加する。

さらにフロントバンパーも専用で、ブラックの樹脂製ロアカバー部とボディカラー部をセットにしたコンビネーションバンパーを採用。ロアカバーの中央下部には、本格的な4WD車などにも採用されるスキッドガーニッシュ風のデザインも投入し、アクティブなイメージも演出する。


N-BOXジョイのサイドシルエット。サイドは、アウタードアハンドルやドアミラーハウジングがブラックになり、フロントドアサッシュにも変更が加えられている(写真:三木宏章)

また、ボディサイドのドアロアーガーニッシュやリアバンパーなども専用デザインを採用。加えて、前後14インチホイールも専用とし、NAエンジン車はハーフキャップ仕様、ターボ車にはメッキリングも追加した仕様を設定する。

なお、ボディカラーは、2トーンカラー5色とモノトーン2色の全7タイプを設定。とくにルーフ部がすべてブラックとなる2トーン仕様では、主にアースカラー系のボディ色を採用。N-BOXシリーズ初採用となるデザートベージュ・パールやボタニカルグリーン・パールなどは、アウトドア風味をより強調する色調で、このモデルのイメージを顕著に表したカラーだといえる。


N-BOXジョイのインテリア(写真:三木宏章)

一方の内装では、特設サイトなどにも先行公開されたチェック柄のシートが大きな特徴だ。ホンダの開発者いわく「レジャーシートをイメージした」というのが新型のシート。一般的にチェック柄というと、ポップなイメージも強いが、エイジレスやジェンダーレスの雰囲気も出すために、落ち着いた色調を採用。一方で、ぱっと見では判別しにくいが、横糸に青やオレンジを使ったカラーミックス糸も採用。ちょっとした隠し味的な配色も用いることで、さりげない遊び心も演出している。

ラゲージスペースまでチェック柄で統一


ラゲージスペースにもシートなどと同様のチェック柄が採用されている(写真:三木宏章)

しかも、このチェック柄生地は、前後シートの背もたれや座面だけでなく、セカンドシートをダイブダウンしたときにも現れる。ダイブダウンとは、N-BOXの大きな特徴のひとつで、セカンドシートの背もたれを座面と一緒にフロアに収納できる機能のこと。これにより、軽自動車とは思えないフラットで広々とした荷室空間を作り出せるのだ。

新型N-BOXジョイにも、この機能を有するが、スタンダード仕様やカスタムでは、セカンドシートの背もたれ裏やフロアへ続くスライド式ボードの生地はブラック。対するN-BOXジョイでは、これらの部分にもチェック柄の生地を採用する。


N-BOXジョイのデザインを担当した松村さんと藤原さん。シートを倒すと、大人でもゆったりとくつろげる空間になる(写真:三木宏章)

これは、ダイブダウンをした際に、テールゲートを開けて大自然などをゆったりと眺められるソファなどとして荷室を使うための演出だ。ブラックの生地よりも、チェック柄のほうが親しみやすいし、リビング的な雰囲気が出る。ちなみにダイブダウン時の荷室は、テールゲート開口部から前席シート背もたれまでの長さが161cm。大人の場合、完全に横になるにはやや窮屈だが、前席シート裏に背中をつけ、足を伸ばして座るには十分なサイズを確保している。

しかも、チェック柄の生地は、撥水加工も施しているため、水やコーヒーなどをこぼしても簡単に掃除できる。また、セカンドシートの背もたれ裏には薄いプレートも挿入。この部分には、通常、シートのフレームがあり、腰掛けるとお尻や背中などに凹凸感を覚える。プレートはそれを防ぎ、座り心地を向上するための工夫だ。


ラゲージスペース後端には、フロアアンダーボックスを備える(写真:三木宏章)

さらに、フロア後端部の高さを80mmアップすることで荷室をさらにフラットにし、足をより自然に伸ばせる荷室の角度も設定。加えて、フロア後端部には容量18Lのフロアアンダーボックスも新設しており、折りたたみ式のテーブルやチェアなど、ちょっとしたアウトドア用品を収納するのに便利だ。ほかにも荷室後方の右側には、室内灯も用意。セカンドシートをダイブダウンし、人が横になった際などの利便性も向上させている。

なお、内装の素材は、NAエンジン車にファブリックシートを採用。一方のターボ車は、プライスムース(合成皮革)とファブリックのコンビシート、表皮巻きドア・ライニングアームレストなどを装備する。また、本革巻きステアリングやパドルシフトも採用することで、より高級感などをアップしている。

ホンダアクセスの純正アクセサリー


ホンダアクセス純正アクセサリーを装着したN-BOXジョイ(写真:三木宏章)

N-BOXジョイでは、グループ企業のホンダアクセスがリリースする純正アクセサリーも興味深い。とくに1970年代の軽規格ライトバン「ライフステップバン」をイメージしたというフロントグリルは、いわゆる「H」マークを「HONDA」マークに変更。材質にも、ツヤ消しの樹脂パーツを用いることで、レトロさとワイルドな雰囲気を演出。また、フロントバンパー左右にはLEDフォグライトも採用することで、よりアクティブなテイストを加味している。

ほかにも、ボディのサイド部やテールゲート部に入れるオレンジのデカールや、フューエルリッドガーニッシュなどを用意。また、テールゲートタープやユーティリティネット、カーゴライナーなど、アウトドアで便利な小物や収納用グッズも揃えている。


ホンダアクセス純正アクセサリー装着車のリアビュー(写真:三木宏章)

なお、純正アクセサリーのフロントグリルとLEDフォグライトなどをセットにした「アクティブフェイスパッケージ」という仕様は、ディーラーオプションとして販売予定。より個性を演出したいユーザーに最適な仕様となっている。

以上がN-BOXジョイの概要だ。ホンダによれば、このグレードを投入する背景には、初代の発売から10年以上が経ち、N-BOXの保有台数が256万台(2024年6月現在、ホンダ調べ)を超えたことも要因のひとつだという。とくに既存のN-BOXユーザーには、初代から2代目への乗り換え組みも多いが、さらに最新の3代目へ乗り換えるのは、抵抗を持つ人もいるという。「さすがに3台続けて同じクルマなのはどうか」と思うようだ。そこで、増加し続けるN-BOXユーザーへの新しい選択肢として提案するのが、従来の雰囲気を一味変えたN-BOXジョイというワケだ。

また、他メーカーの競合モデルにも、アウトドアのイメージを演出した仕様があり、一定の成功を収めていることもあるだろう。例えば、三菱自動車の「デリカミニ」や、新型がまもなく登場する予定のスズキ「スペーシアギア」、ダイハツの「タントファンクロス」などだ。これらは、いずれもベース車に軽スーパーハイトワゴンの人気モデルを持ち、アウトドア風スタイルを採り入れた派生モデルたちだ。

価格などの正式発表は9月26日予定


本格的なアウトドアというよりも、チェアリングなどの日常のちょっとした外遊びを狙ったN-BOXジョイ(写真:三木宏章)

N-BOXジョイは、価格などもまだ発表されていないが(2024年9月26日に正式発表の予定)、プライス面も含め、ライバル車たちと比べ、どのような差別化などを図るのかも興味深いところだ。なお、現行N-BOXの価格(税込み)は、164万8900円〜236万2800円。N-BOXジョイも、このあたりの価格帯に設定されることが予想できる。


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いずれにしろ、N-BOXジョイの登場により、競合ひしめく軽スーパーハイトワゴン市場のシェア争いが、さらに激化することは間違いないだろう。そんななかで、N-BOXジョイが、王者N-BOXの助っ人として、どのような存在感を示すのかに注視したい。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)