大谷翔平が渇望したヒリヒリの正体は? 異例の打点王争いから垣間見える“真髄”
エンゼルス時代から求めていた9月のヒリヒリ「今を意識する余裕がない」
【MLB】マーリンズ 11ー9 ドジャース(日本時間18日・マイアミ)
かつて失望に満ちていた9月の大谷翔平はもういない。17日(日本時間18日)の敵地・マーリンズ戦は11失点の投壊が致命傷となって敗れたが、大谷から発せられる言葉は“ヒリヒリ”を感じさせるものだった。
「楽な試合は少ないですし、チーム状況的に五分五分で今月も来ている感じなので。今を意識する余裕がないというか、今日の試合を勝って首位を維持して早く優勝が決まるように、というのが一番ですね」
開幕から地区首位を走るドジャースだが、9月は7勝8敗と波に乗れず。2位のパドレスは9月9勝5敗と巻き返している。ドジャースがどのように10月を迎えるのか、そして大谷は「50-50」を達成できるのか――。世間から多くの注目が集まるが、当の本人は前者に必死のパッチだ。
「『50-50』のプレッシャー? それはあまりないです。いい打席を1打席でも多く重ねたいと思います。早くたどり着けばそれだけ貢献していることだと思う。チーム状況的にきついと思うので、1打席でも貢献できるように頑張りたいなと思います」
チームの勝利に直結するのは打点だ。17日(同18日)の敵地・ブレーブス戦は無安打だったが、併殺崩れと内野ゴロで渋い2打点。豪快なアーチだけが打点を挙げる術ではない。この日、1点差の6回2死一、三塁では空振り三振。「(48号は)反撃につながる一本だったのでそこは良かったですけど、一、三塁の場面で得点したかったなと思います」。本塁打以上に悔やんでいた印象だ。
そもそも打点王は中軸打者のタイトルで、1番打者が打点王争いをするのは異例中の異例。WBC米国代表の1番でもあるベッツもレッドソックス時代の2016年に自己最多116打点、昨季も107打点を挙げているが、キャリアを通じて打点王のタイトル争いの経験はない。
かつて栗山英樹監督は「課題が大きければ大きいほど、翔平は能力を発揮する」と言ってきた。「余裕がない」という9月に繰り広げる異例の打点王争い。チームの勝利へ、豪快に、時に泥臭く打点を挙げる姿からは、大谷の真髄が見える気がする。(小谷真弥 / Masaya Kotani)