所得が少ない妻を養う夫の税金が優遇される「税金の扶養」を解説!<配偶者控除で税負担がいくら減るか>カンタンに分かる方法をご紹介
2024年10月から、パートなどの短時間労働者に対する社会保険の適用範囲が拡大され、従業員数51人以上の企業も対象となります。パートやアルバイトで働く人にとって避けては通れないのが「扶養」ですが、ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんは「扶養の制度について『複雑すぎてわからない』と感じている人が多いのでは」と指摘しています。そこで今回は、塚越さんの著書『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』から一部引用、再編集してお届けします。
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自分の「所得48万円」が扶養のボーダーラインに
税金の扶養とは、所得の少ない妻を養う夫に対して、税金(所得税・住民税)が優遇される制度です。
養う側(夫)がその恩恵を受け、養われる側(妻)は影響を受けません。
「所得の少ない妻」とするのは、扶養に入る条件に「年間の合計所得金額が48万円(給与収入のみだと103万円)以下であること」とされているからです。
そのほかに法律上の妻(内縁・事実婚は不可)で、日常生活のお金を共有(生計が同一)し、夫の事業から専従者給与を受け取っていない。
または、白色申告者(※個人事業主が所得税の確定申告をする際に、青色申告以外で申告する人のこと)の事業専従者でないことも条件です。
まず、妻が自分自身の年間の「所得」を知って扶養に入れるか否かを判断しましょう。
「収入」と「所得」はまったく別もの
といっても難しいことではなく、収入が給与のみの人は、年末や年明けに職場でもらえる「源泉徴収票」を見れば簡単にわかります。
源泉徴収票には年間の給与収入や所得税、社会保険料の金額などが記載されています。
『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』(著:塚越菜々子/発行:東京ニュース通信社、発売:講談社)
「収入」と「所得」はまったく別ものです。
源泉徴収票にある給与の支払金額(給与収入)から給与所得控除額を差引いた金額が、給与所得です。
<『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』より>
その金額が48万円以下であれば、夫の税金の扶養に入れるということです。
夫は税金の扶養による優遇措置で配偶者控除を受けられ、税金の負担が減ります。
「夫の所得税率」を簡単に割り出す方法
税金の扶養により配偶者控除を受けた夫の税金負担はどのくらい減るのか?
その差額を知るために、夫の所得税の税率を調べてみましょう。
必要な書類は「夫の源泉徴収票」です。
それをもとに所得税を導き出すまでの計算式は次のようになります。
●給与の支払金額−給与所得控除=給与所得
●給与所得−各種所得控除=課税所得
●課税所得×税率=所得税
所得税を割り出すための税率
配偶者控除は所得控除のひとつです。
妻の収入が103万円以下の場合、控除金額は38万円(※夫の給与年収1095万円以下の場合)。
所得税は課税所得に税率を掛けて決まり、課税所得が高いほど所得税率は高くなります。
配偶者控除を受けられれば、その分だけ所得税の計算の基となる課税所得を減らせて、夫の所得税負担を軽減できます。
なお、課税所得から所得税を割り出すための税率は、源泉徴収票には書かれていません。
夫の課税所得がわかったら、所得税の速算表(下記)から該当する税率を選んで所得税を計算します。
例えば、課税所得金額が500万円の場合なら、「500万円×20%−42万7500円(控除額)=57万2500円」が所得税ということになります。
※本稿は、『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』(発行:東京ニュース通信社、発売:講談社)の一部を再編集したものです。