町中華を超えた宮廷料理レベルのチャーラーを近鉄大和八木駅で発見!日本最安レベルの半チャーハンにも衝撃
チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第39回目の今回は、奈良県。大和八木駅で見つけた「宮廷」を謳う中華料理店で“チャーラー”を食べてきました。
はじめての近鉄大和八木駅
仕事で奈良県へ。近鉄名古屋駅から特急「ひのとり」で約1時間40分。下車したのは、近鉄大阪線・橿原線の大和八木駅。普段は車で移動していることもあって、電車に乗ると旅情を掻き立てられる。とくに大和八木駅は仕事とはいえ初めて来たのでワクワクしている。
仕事は午後から。その前に昼食を済ませておかねばならず、駅界隈をブラブラと歩いて店を見つけることにした。
駅高架下の近鉄八木駅名店街をぶらり
まず、向かったのは駅の南側。おっ、高架下に「近鉄八木駅名店街」なる商店街を見つけた。そこにあったのはドーナツ店や洋食店、海鮮料理店、ラーメン店。ラーメンにソソられたが、12時前だというのに店の前に行列ができていたため断念。
駅の北側へ移動すると、そこにも「近鉄八木駅名店街」があった。バスターミナルがある南側がメインのようなイメージを抱いたが、北側の方が店の数も多い。
柿の葉ずしの店とうどん店、カフェ、たこ焼き店、喫茶店、焼肉店など14店舗。その中で私の心を鷲掴みにしたのが、『宮廷飯店』なる中華料理店。
何といっても、宮廷ですよ。宮廷。中国の宮廷料理といえば、数日間かけて100種類を超える料理を楽しむという盛大にもほどがある宴会料理、満漢全席である。それが大和八木駅の高架下で味わえるとは思えないが、宮廷という響きから巷の町中華とは一線を画しているような気がする。
これが店の外観。赤ちょうちんや幟、壁にペタペタと貼られた手書きのメニューが店名とはミスマッチのような気もするが、そんなのはどうでもよい。宮廷料理として出すことができるレベルに達しているか……いや、そこまでハードルを上げる必要もないが、おいしいチャーラーを食べさせてもらえれば私ゃ満足だ。チャーラーは宮廷料理ではないと思うけど。
これがメニュー。右上の「とんかつラーメン」に目を奪われた。実に名古屋っぽいメニューが奈良にもあったのだ。まぁ、名古屋にこのメニューがあったとしたら、ソースではなく味噌になるだろうけど。
「宮廷」の名に相応しい上品な味わい
「とんかつラーメン」を注文しなかったのは、他の麺料理にはミニ焼き飯が付くのに、これだけライス付きだったから。きっと、焼き飯との相性は良くないのだろう。
それと、町中華に必ずある醤油ラーメンがメニューにないことにも気が付いた。いちばんシンプルな麺は「焼き豚ラーメン」(810円)。これにわずか60円を追加するだけでミニ焼き飯付きになる。おそらく、日本一安い半チャーハンだろう。
これが「焼き豚ラーメン」。低温調理のチャーシューが予想外だった。具材はほかにモヤシとネギ。うん、いたってシンプル。
まずはスープをひと口。これは醤油味ではなく、塩味。それだけに鶏の旨みがしっかりと抽出されているのが伝わってくる。町中華の青湯スープとはまったく違う。ホテルのような上品な味わいなのだ。これが店名に宮廷を冠している理由かもしれない。
また、麺にもこだわっているようで、メニューに「特製玉子麺」と書かれていた。「細いのにしっかりとした歯応えが特徴!スープにもしっかり馴染みます」とも。
歯応えといっても、博多ラーメンのようなポキポキ感ではなく、麺の中心部分はもっちりとしている。それがとても心地よい。この麺もまた町中華とはまったく違う。
こちらが「ミニ焼き飯」。おそらく、大量に仕込んでジャーで保温したものを注文ごとに出していると思う。それだけにパラパラ系なのかしっとり系なのかがよくわからないような仕上がりになっている。
しかし、その旨さに驚いた。塩、コショウだけでは出せないような複雑な味わいが後を引く。とくにラーメンのスープを飲んで、その味とコクの余韻を口の中に残した状態で食すと悶絶するほど旨い。量はご飯茶碗に一杯分くらいだが、三杯分くらいは食べられる。
まったく土地勘のない大和八木駅でこんなにおいしいチャーラーに出会うとは思わなかった。これだからチャーラーの食べ歩きはやめられないのだ。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。