カード式とモバイル、それぞれどんな良さが

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2024年9月1日から、記名式の「Suica」「PASMO」の発売が再開されるようになった。これまでは、半導体不足により発売を停止しており、定期券などで購入する場合に限ってカードを発行していた。

この間、首都圏の鉄道各社はスマートフォンに搭載されたアプリのSuicaやPASMOを使用するように呼びかけてきた。

定期券利用者に対しても、カード式からモバイル端末に搭載されたSuicaやPASMOへの移行を促していた。とくにJR東日本は、「JRE POINT」をカード式SuicaよりもモバイルSuicaで貯まりやすくし、モバイルへの移行を鉄道利用者に訴えていた。

しかし、カード式のSuica・PASMOには根強い需要があり、なかなか移行しない人もいる。

カード式とモバイル、それぞれのメリット・デメリットを、とくにSuicaについて考えてみたい。とくに、定期券について。

モバイルは50円で1ポイント、カードは200円...

JR東日本は、モバイルSuicaを強く推している。Suicaの入金残高で乗車する際には、モバイルSuicaは運賃50円ごとに1ポイントつくものが、カード式Suicaでは200円ごとに1ポイントだ。またモバイルSuica定期券を買う場合には、購入金額50円ごとに1ポイントつく。

定期券区間利用でも、区間外利用でも、モバイルSuicaがお得であることはよくわかる。

これにビューカードの使用を合わせると、ポイントがざくざく貯まることになる。

またモバイルSuicaで定期券を買う場合は、駅の窓口に並んだり、券売機を使用したりしなくていい。スマートフォンを操作して定期券を購入する。もちろん、決済はクレジットカードだ。そうなるとメリットしかないのではないか? カード式Suicaがいまなお残る、さらにはその定期券を持っていることの意味はどこにあるのか。

カード式と相性がいい人がいる

SuicaやPASMOをいまだにカード式のもので使用している人は多い。定期券の利用者でも、そうでない人でもカード式の利用者は、自動改札でよく見かける。

多くの人がスマートフォンを持っている現状でも、だ。定期券をカード式にしている人もいれば、使い勝手のいい電子マネーとしてこれらのカードを使用している人もいる。

駅にはいまなお自動券売機があり、交通系ICカードを使用する人のために現金からチャージできるようになっている。

この記事はインターネット上のニュースサイトに掲載されているので、お読みの方はオンラインで何かすることに苦痛を感じる人は少ないと考えられる。モバイルSuicaにクレジットカードからチャージする人もいれば、Amazonなどで買い物をする人もいる。

しかし、みんながみんな、そういったライフスタイルというわけではない。

普段から現金を使用して生活している人は、カード式のSuicaのほうが相性はいいのだ。カード式なら、券売機で現金からチャージできる。モバイルSuicaに現金からチャージできる入金機もないわけではないのだが、置いていない駅もある。

現金を使用してチャージし、定期券区間の使用が中心で、それ以外の区間には普段あまり乗らない。ポイントやお得かどうかも気にしない。ウェブでの「JRE POINT」の登録も面倒である。そういった人たちに、カード式のSuicaは支持されている。その人たちが、カード式のSuicaで定期券を作っている。

電子マネーとしての需要

記名式Suica・PASMOが発売されていない間も、定期券に使用するカード式のものは供給されていた。しかし、記名式の定期券ではないSuica・PASMOは待ち望まれていた。現金で、駅でチャージできる気軽な電子マネーとしての需要があるのではないか。それと定期券が一体となっているから便利、という感覚でカード式のものを使用している人も多い。

ポイントがモバイルのメリットならば、気軽さがカード式のメリットである。(小林拓矢)

筆者プロフィール

こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。