岸岳城は、以前は鬼子嶽城と呼ばれており、鬼が棲むとされるいわくつきの場所だったそうです。平安時代に、酒呑童子や茨木童子など妖怪を退治しまくっていた渡辺綱(わたなべのつな)の息子が、鬼子嶽城の鬼を退治したそうです。そして、その綱の息子の血縁が後の波多家だそうです。

 鬼を退治した一族の末裔が、今度は幽鬼となってしまうというのは因果を感じて面白いかなと思います。ちなみに、城跡にあるおまん塚には皿屋敷のお話にそっくりな伝説も伝わっています。

 私は城マニアでもあって、日本百名城や続日本百名城を巡っているので、山城にも慣れているのですけど……。日没後に登り始めて、戻ったのが深夜という、かなり過酷な場所でした。真っ暗ななか、一歩踏み外したら大怪我か死ぬかという場所ばかりなので、一瞬も油断できませんでした。鬼子嶽末孫之碑付近で重量感のある足音がこちらへ走ってくる足音が、数秒聞こえました。大きめなイノシシだったかもしれませんが……。

◆場所が場所だけに幽霊と間違われることも

――心霊スポットに行って、心霊体験をする以外のハプニングはありましたか?

Coco:自分が、他の人から幽霊だと思われたことはありますね。愛知県と静岡県の県境にまたがる旧本坂(きゅうほんざか)トンネルに、2人で行ったときのことです。そこは、トンネルの天井に逆さまにぶら下がる女の霊が出るなど、噂が尽きないところです。時間は、明け方近い午前4時すぎでした。他の人とすれ違ったくらいで、特に何も起こらず帰ったのですが、その人に幽霊と間違えられたようです。

 というのも後日、Google検索でこのトンネルを調べたときに、夜明け前に2人の女の霊を見た。1人は髪が長かったという内容が書かれていたのです。私たちが行った日時を照らし合わせると、どうもその可能性が高いのですね。

 似た例が、京都の厨子奥トンネルに行ったときのことです。住宅街の中ですが、墓地がそばにあって、京都の幽霊トンネルのなかでも有名なところです。そこで、TikTokの配信をしていました。おそらく、いたずらでつけた白いペンキの手形が壁にあって、その様子を実況していました。すると、背後で「ぎゃっ」という声が聞こえ、振り返ったのです。そうしたら、そこで男の人が尻餅ついて座っているのです。

 その人は「すいません」と言って、ぱっと立ち上がって去って行かれたのですけど、自分の服装が白いロングコートで長い髪なので、後ろ姿を見て、幽霊だと勘違いされたのだと思います。こういう話をすると、心霊スポットでの恐怖体験は、どれも見間違いだろうと思われるかもしれませんね。でも、古い資料などあたって下調べして、実際に現地へ行くと、ただの噂がそうでないことも結構あったりします。

◆心霊スポットが密集する京都最恐の場所

――ご自身のホームフィールドである京都でイチオシの心霊スポット教えてください。

Coco:私が推すのは、首塚大明神という名の小さな神社です。首塚大明神は、有名な酒呑童子の別名でもあります。そこは、平安時代に暴れた鬼の総大将・酒呑童子の首が眠っているという場所です。源頼光らが、酒呑童子をだまして酒で眠らせ、首をはねたのですが、それを持ち帰る途中で、お地蔵様が、「こんな禍々しいものは京に入れてはいけません。ここに置いていきなさい」って言ったのです。それと同時に、首が重くなって動かせなくなったのですね。

 仕方なくその地に埋めて、酒呑童子を祀ろうということになりました。酒呑童子の首もまだ生きていて、「もう悪いことはしません」と言うので、とりあえず一件落着したという伝説が残る場所です。やがてここは、首から上の病をいやすご利益があると、信仰されるようになりました。