青木さやか「スーパー銭湯の露天風呂、一糸纏わぬ姿で景色を眺める。隠すところはない。百獣の王の気分だ! 年をとるって悪くない!」
お笑いの仕事だけでなく、女優・エッセイストとしても忙しい毎日を送る青木さん。今回は「スーパー銭湯好きとして」を綴ります。
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今も昔もスーパー銭湯が好き
20代から変わらずハマり続けているものといえば、スーパー銭湯。
愛知県尾張旭市出身のわたしだが、どうやら愛知あたりはスーパー銭湯が多めの地域だったようで、恵まれていたのだな、と思う。それは東京に来てから気づいた。
愛知県の車所有は、一家に一台、いや1人一台持つことも多く、どこに行くにも車を使う。 だから毎日のように、20分離れた駅からさらに離れた「竜泉寺の湯」というスーパー銭湯に通った。
友達を迎えにいって向かうのだが、時には男友達のこともあったから、スーパー銭湯の中では別々で、話は行き帰りの車内で。それも楽しかった。
読売ランド「花景の湯」の庭
本連載から生まれた青木さんの著書『母』
サウナにいた恐ろしいおばさん
低温サウナは広かった。30畳ほどあったのではなかろうか。巨大なテレビが置いてあり、昼はだいたいゴルフ番組が流れていて、恰幅のよいおばさん達が、股にタオルを挟み、足をまあまあ大きく広げて(出産時の妊婦くらい)テレビを睨みつけていた。もはや乳房を隠すなんてことは一生なさそうな堂々たる生き物にみえたその人たちのことが、まだ若かったわたしには、恐ろしくうつり、上も下も小さめのフェイスタオルで懸命に隠しながら、部室に緊張しながら出入りする1年生のようにそそくさとドアを開けて急ぎ出た。
外には塩サウナもあった。フロントで購入したマイ塩を、いつも車の座席に置いていた100円ショップのプラスチックバックに入れて持ちこむ。塩サウナにも、堂々と睨むおばさんはいた。塩を掴んではカラダに擦り込み、「あああああ」と低い声で息をしながら熱風に耐えていた。
若いわたしは、やはり肩身が狭く感じながら、塩をカラダに塗り込んだ。
塩サウナから出てシャワーを浴びて、プラスチックの寝転べる椅子に横になると、眼下には名古屋市街の夜景がキラキラと輝いていた。暑い体を冷ましながら風を感じて夜景をみる時間は、なによりの癒やしだった。秋には、鈴虫の声が聞こえた。最高だ。
そして、わたしの記憶が確かならば、30年前、入泉料は300円代だったはずだ。安い。
入浴後のたのしみ
最近は中学3年生の娘と一緒に
東京に来てから、スーパー銭湯にいく回数は圧倒的に減ったが、ここ最近、ブームが再燃した。中学3年生の娘もスーパー銭湯好きで、一緒に行く機会が増えたのだ。しかも、最近のスーパー銭湯はすごい。休憩場は充実していて、ベッドでテレビは観られるわ、漫画や雑誌も見放題というところもあり、娘と行っても、ごはん以外は別行動。お風呂が好きなわたしより早く風呂をあがり、ヨギボーコーナー的なところで寝る娘。
寝ながらテレビが観られる
わたしはじゅうぶんにお風呂を楽しみたい。低い温度の高濃度炭酸泉にじっくりつかるのも好きだし、電気風呂を腰にあてたい。最近気にいっている読売ランドの「花景の湯」の露天風呂は温度が低めで、目の前にはうっそうとしげる森、右を向くと読売ランドのジェットコースター。森の奥には川、その向こうは都心。都庁も、スカイツリーもみえる。夜はまたそれらが夜景となってキラキラとする。
わたしは、堂々と露天風呂から立ち上がり、一糸纏わぬ姿で景色を眺める。
そういえば、今のわたしには恐ろしいおばさんは見つからない。若い子たちの目には、わたしが、そのようにうつっているのかもしれない。そう思うと可笑しくなってきた。恐ろしく思われようが、身体つきをどう見られようが、特に何も感じない。隠すところは、ないのだ。露天風呂で都会をみおろしながら、「あああああ」とドスのきいた音を出しながら、わたしは思った。
百獣の王の気分だ!
年をとるって悪くない!